「まじめが肝心」 | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

「まじめが肝心」

"見栄張り"といえば、世間体を気にする日本人(私もかなりの見栄張り?)もそうだけど、社会階級を重んじ、名誉や体裁ばかりを気がするイギリス人はそれ以上。

風刺コメディ『THE IMPORTANT OF BEING EARNEST』(まじめが肝心)は、まさに19世紀の階級制度の重んじる英国が描いている。


物語の舞台は1890年の英国。身分が高い家庭で育った都会っ子のアルジャーノンは、実在しない病弱な友人バンベリーを見舞いに行くと言う名目で社会的な義務から逃げ出して田舎を訪れていた。そして、彼の友人で田舎暮らしのジャックは、まじめな紳士であるが、退屈な暮らしを紛らわす為に架空の弟アーネスト(「まじめ』というう意味)と名乗り、ロンドンの社交界で遊び回っていた(注:アルジャーノンはアーネストの本名がジャックだとは知らない)。ある日、アーネストことジャックは、アルジャーノンに従姉妹グェンドレンを紹介され、彼女に一目惚れ。グェンドレンも彼に好意を抱くのだが、彼女が何より興味を持ったのは”アーネストという彼の偽名(当時、アーネストという名前は女性の憧れ)。そんな二人の関係は順調にすすみ、2人は結婚を考えるようになるのだが、アーネストが偽名であることに加え、彼女の母親、ブラックナウ夫人に反対に遭うなど大きな壁が立ちふさがる。そんな折り、アルジャーノンはジャックが親代わりをする美人女セシリーに出会い、一目惚れ。彼までも彼女にアーネストと名乗りってしまう。そうこうしている間に、ジャックのウソの上塗りが原因で4人が鉢合わせしてしまい・・・。



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脚本を手掛けたのは、「ドリアン・グレイの肖像」や詩劇「サロメ」など、数々の傑作を世に遺したイギリスの文豪オスカー・ワイルド(1854年~1900年)。天才的な詩人であるワイルドはゲイであることを咎められ監獄生活を強いられたことも有名だよね。本作は彼の喜劇作品中で最も高い評価をうけている人気作で、ブロードウェイで再演されるのはこれで8回目。このバージョンは、カナダのオンタリオ州で行われたシェークスピア・フェスティバルで初演され好評を博し、ブロードウェイ入りと相成ったわけ。

本作で演出を手掛け、ブラックナウ夫人で主演も務めているのが、トニー賞俳優、ブライアン・ベットフォード(「女房学校」71年)。さすがロンドンの王立演劇学校でシェクスピアを徹底的に勉強した人ね。間の取り方が絶妙!性別を越えた役創り(オスカー・ワイルドの世界で男が女を演じるのは、映画監督のジョン・ウォターズ(「ヘアスプレー」)と同様に当たり前)も舌を巻く巧さ。それは体重を一週間で12キロ落としたとか、前歯を全部抜いたとか、そんな肉体改造するような単純な次元じゃなくて、実在の人物じゃないけど、ブラックナウ夫人の霊が下界に下りて来てベットフォードに乗り移ったような。それほどのリアルさだから、何気ない顔つきだけでさえ、観客を爆笑に誘っちゃうの!

出番は多くはないけど、どこにでもいそうな性格の悪いババアを演じる彼の存在感は、他のキャストを圧倒。彼の独壇場なんだ。いやぁ~、この芝居観て久々、博多のローカルタレント、お米ばあちゃんのバッテン荒川ば思い出したろうもん。