『ドライビング・ミス・デイジー』 | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

『ドライビング・ミス・デイジー』

映画ファンにベタだと突っ込まれること覚悟で白状する。実は、私、映画『ドライビング・ミス・デイジー』(89年)が結構好きだ。TVで放送されていると、つい見てしまう。そんなお気に入りがブロードウェイで舞台化。観に行かないわけがないよね、去年の話だけど・・。

人種を超えた友情や人間愛を描いたアルフレッド・ウーリー作の『ドライビング ・ミス・デイジー』。
87年にオフ・ブロードウェイで初演。翌年、ピュリッツァー賞受賞を獲得し、オフでは珍しく4年間に1,200回に及ぶロングラン公演を達成。その二年後のアカデミー賞では、最優秀賞など4部門で賞に輝いた不朽の名作だ。

$トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ  Powered by Ameba


物語の舞台は、人種差別が色濃く残る40年代後半のアメリカ南部の街アトランタ。ミス・デイジーはユダヤ人の元教師で72歳。かくしゃくとしていたが、寄る年波には勝てず、ある日運転する車で事故ってしまう。心配した息子ブーリーは、母を説得。お抱え運転手を雇うことを勧めるが、気丈なデイジーは首を縦に振らない。息子は半ば強引に運転手を母にあてがうのだが、人種偏見を持つ彼女は黒人運転手のホークを毛嫌いし2人の中はいつもギクシャクしている。だが心優しく正直なホークにデイジーは徐々に・・・・。

白人の老女と黒人運転手の25年に渡る心の交流を描く本作。日本では奈良岡蛙あき子と仲代達矢でおなじみ。このブロードウェイ版でデイジーに扮するのは御年74歳で女優業に奮闘中のヴァネッサ・レッドグレイヴ(「夜への長い旅路」03年)。対するホーク役には、映画「スター・ウォーズ」(77年)のダース・ベイダーの声でおなじみ、御年80歳のジェームズ・アール・ジョーンズ。さすが大ベテランのトニー賞俳優の二人。役者として引き出しの多さにはビックリ!老い先短い名優の演技をナマで観られたこともお得感を感じたわ。でもね、二人から作品に対する情熱が感じられなかったのはなぜ?特にヴァネッサ・レッドグレイヴは前作の一人芝居「The Year of Magical Thinking」(07年)に比べて役作りが浅いったらありゃしない。差別や偏見問題の歴史を重視した映画に対し、心温まる人間ドラマに、よりファーカスした演出家デイウ゛ィット・エスビョルンソンの意向か?

私が観劇した日のカーテンコールは、私以外は総立ち。最近のブロードウェイの客は、作品の善し悪しに関係なく、スタンディング・オーベーションしたがる田舎もんが多いから困ったもんよ。さらに今回ムカついたのがNYタイムズ紙の批評。私の意に反し、首席演劇評論家ベン・ブラントリーは二人をべた褒め。ありえんから。日本の演劇評論家じゃあるまいし、天下のタイムズ紙がスターにゴマすってどうすんの。私の言わんとしてることを疑っている人には、実際に御覧頂きたかったのだが・・本作は昨年4月9日に閉幕。残念無念。

さて、7年目に突入した着信ダウンロードサイト、トシ・カプチーノ連載「ブロードウェイ言いたい放題」今週末は、新作ミュージカル「ゴースト」の取り上げ!