『Chinglish』 | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

『Chinglish』

私の英語圏での暮らしも来年で20年目に突入。私は語学センスがあるヲカマだし、アメリカ人の彼氏はいるし、もちろん英語は完璧だから海外生活に支障ナシ!といいたいところだけど、ペラペラなのはエッチのあとのピロートークくらい。恥ずかしながら、専門的な医学用語などの英語となると“NHKの英語でしゃべらナイト”の司会者レベル!?言葉の壁は外国人の我々にとって、いつまでも頭痛の種なの。

今、また語彙を増やす勉強を始めた・・・努力と集中

そんな言語をテーマにしたドタバタコメディっていろいろあるわよ。記憶に新しいのは映画「ロスト・イン・トランスレーション」(03年)。そして今、ブロードウェイでは、「ロスト・・」の舞台版ともいえるコメディ『Chinglish』(中国語と英語の合成語)が上演されているの。

CM撮影のため訪日した米国人俳優を通し、言語問題だけでなく人間関係の相互理解の難しさをテーマにした映画「ロスト・イン・トランスレーション」。対する『Chinglish』は中国のある都市を舞台にし、英語でやりとりしても誤解や商習慣の違いから七転八倒するアメリカ人ビジネスマンを描いているの。

物語の舞台は現代の中国貴陽市。オハイオ州で会社経営するダニエルは、中国本土に数多くあるデタラメな英語のサイン(広告用看板)に愕然。中国でサインビジネスを展開しようと、中国在住の英国人ビジネスコンサルタント、ピーターに仲介で中国の権力者との面会を依頼する。がしかし、権力者の中国人通訳の英語はデタラメ。加えて、権力者は息子の裏口入学を手助けしたピーターに借りがあるため、アメリカ人とのビジネスを展開するつもりなんてないのに、そのふりをして話を進め・・・

私の観劇当日、ビックリたまげたのは劇場前の光景。ここはチャイナタウンかぁ?と錯覚するほど、中国人の集団がたむろしていたの。もちろん、劇場内の観客もほぼ半数は中国人で、その様子はまるで混雑する日曜日の飲茶レストラン。おまけに開演前のアナウンスも中国語(もちろん英語も)ならば、出演者もキャスト7名のうち5名が中国系アメリカ人。中国人がNYダウンタウンのビルを買い漁っていると噂には聞いていたけど、ブロードウェイにまで押し寄せるチャイニーズ・マネー。ちょっと複雑だわ。


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脚本を手掛けたのは、中国系アメリカ人、デイヴィッド・ヘンリー・ホァング(「Mバタフライ」、「アイーダ」、「ターザン」)。ブロードウェイ演劇界を代表する数少ないアジア人の戯曲家よ。本作ではマンダリンと英語を上手に使い分け、めちゃめちゃな通訳やエッチの間に交わすアメリカ人と中国人女性のチグハグな会話を面白可笑しく描写しているの。でもねぇ、ホァングの大ヒット作「Mバタフライ」をご存知かしら?中国に渡ったフランス人が中国人の女装男に恋をする話なんだけど、構成が今作と酷似。また、キャラクターの描き方も陳腐だから、中国でのサインビジネスを紹介するレクチャーを受けている感じがしたわ。また、マンダリンの台詞を英語のサブタイトルする至れり尽くせりの演出も。物語の背景もこと細かに説明しているし、マンダリンが理解出来ないアメリカ人でも置いてきぼりを食らうことなく最後まで観劇できるのよ。でもそれが最大の欠点。「ロスト・イン・トランスレーション」のように観客に想像する余地を与えてないから物語に広がりがないあるよ。主人公のダニエルだけじゃなく、言葉がわからないという奇異な状況を観客にも体現させる演出が欲しかったあるね。世界第2位の経済大国にのし上がった中国。だけど舞台芸術の世界ではまだまだ発展途上国中ね、謝謝。