『ボニーとクライド』 | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

『ボニーとクライド』

私の大好きなミュージカルのひとつ「ジキルとハイド」。作曲家フランク・ワイルドホーンの唯一のヒット作よね。それ以後「ドラキュラ」(04年)、「ワンダーランド」(11年)と次々と新作発表したけれど、どれもこれもアイコニック状態(鳴かず飛ばず)。そんな彼が今シーズンの第一弾のミュージカルとして新作『BONNIE&CLYDE(ボニー&クライド)』をぶつけて来たわよ。

『ボニーとクライド』(67年)といえば、アメリカに実在した強盗カップル。彼らを題材にした映画「俺たちに明日はない」(67年)は、ショッキングな銃弾戦シーンが満載で、ハリウッドのバイオレンス映画の先駆けとして知られたヒット作なのよ。それな誰もが知っているボニーとクライドを描いたミュージカルが、09年に米サンディエゴで初演され、12月1日に満を持してブロードウェイで開幕したわけさ。

物語の舞台は1930年代の大恐慌時代の米テキサス。ボニーはウェイトレスとして働き退屈な毎日をおくっていた。一方ギャングにあこがれるクライドは、度重なる犯罪で刑務所を出たり入ったり。ある日、世間から注目をあびたいと願っていた二人は、偶然の出会いから恋に落ちる。徐々に二人は徐々に絆を深め、次から次へと銀行強盗や殺人などの凶悪犯罪を繰り返す・・・。

クライドに扮したのはジェロミー・ジョーダン。「ウエストサイド物語」(09年)で舞台デビューした新人よ。それがまた “オトコマエ”。日本人俳優に例えると市原隼人か赤木圭一郎?、アクの強いギャング役を大熱演している姿に目が釘付けよ。かたや、その相手役ボニーを演じたローラ・オスネス。テレビ視聴者の人気投票で「グリース」(07年)のサンディ役に選ばれブロードウェイ・デビューした若手女優よ。本作では凶悪犯罪の片棒を担ぐ女という設定。なのに、野性味溢れる逞しいオトコとのセックスに夢中な金持ちのお嬢にしか見えないの!残念ながら完全なミスキャストね。




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現在、彼はディズニー・ミュージカル「Newsies」に主演中(4月8日現在)


演出・振付を手掛けたのは、ジェフ・カルフーン(「ブルックリン」04年)1930年代の大恐慌時代の雰囲気を醸し出そうとしたのは解るけど、裏社会で刹那的に生きる人間の描写が希薄なのよ。しかも極悪なバイオレンスが見どころの筈なのに、銃撃戦となると、どのシーンも役者の衣装の中に仕込んだ血糊を破裂させて、体から大量の血が吹き出すといったバカの一つ覚えのような演出の繰り返し。全く舞台を掃除する人もいい迷惑よ。

パワフルなバラード調の曲が売りのフランク・ワイルドホーンの音楽もそうよ。ゴスペル、ラグタイム、カントリーなどバラエティに富んだ曲で構成されているのだけど「ジキルとハイド」の名曲、“This is a moment”のような印象に残る曲はナシ。せめてもの救いは12月30日までの限定公演していたことかもね。観劇を見逃した方は同作の日本版をご覧下さいまし。なお、東京、青山劇場での公演は1月8日から。すでに終了。