あれから一年 | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

あれから一年

早いもので、あれから一年。


私は、先週から東日本大震災の特集を組んでいる

NHKスペシャルを連日連夜視聴。

多くの方が最愛の人を亡くされたことに胸を痛めてます。

合掌


以下、私の連載、ブロードウェイ言いたい放題にアップされた観劇レポです。


「HURT VILLAGE」観劇レポ

オフ・ブロードウェイの非営利演劇グループ、シグネチャー劇場のこけら落とし公演の芝居ひとつ「HURT VILLAGE」。

舞台は、テネシー州メンフィスにある低所得者用アパート。頭がよくラップミュージックをこよなく愛す13歳の少女クッキーは、母クランクと祖母ビッグママ3人で暮らしている。クランクは弱冠13歳でクッキーを出産。字も書けなければ文字も読めない彼女は、賢い娘に嫉妬し毛嫌いしている。そんな時、イラク戦争から父バギーが帰還。家族の大黒柱が戻った来たことに家族は歓喜するのだが、戦争で精神的なダメージを受けたバギーは仕事につける状態ではない。そこで祖母は、孫になんの教育を与えられない惨めな生活から抜出そうと貧困地区を脱出しようと考える。そんな中、やっとの思いで理想的な物件を発見。しかし、あることが原因で引越はおじゃんとなる。

クッキーに扮したのは、新星ジョアキーナ・カルカンゴ(「God Spell」)。孤独と哀しみの中に生きる13歳の少女を体当たりで演じているの。演技の間もいいし、リズム溢れるラップの妙技もプロ並。すべてが平均以上なのだけど、影が薄い。NY演劇界の期待のホープのひとりだと思うけど,まだ主役の器じゃないのよ。その一方で主役を喰う堂々たる演技を見せたのは祖母に扮したトーニャ・ピンキンス。松田聖子と同じ寅年50歳よ。本作で彼女は、腰とケツと太もも回りにパットを詰め込み、胸元には作り物の垂れ乳(吉本新喜劇のおばあちゃん役でおなじみの桑原和男風)を装着、太った老婦人を大熱演。リアルなのは見かけだけでなく、明確な人間像を浮かび上がらせる演技でもみせてくれるの。

脚本はカトリ・ホール。誰よ、その”カトリ”って日本人?って声が聞こえてきそうだけど、彼女、若手黒人女性戯曲家のエースよ。キング牧師の暗殺される前夜を描く前作「マウンテントップ」はロンドンでヒット。一昨年イギリス演劇界で最も権威のあるローレンス・オリヴィエ賞を受賞しNYにも進出。けれどブロードウェイ版はロンドンでの評判とは裏腹に、芝居そのものよりサミュエル・L・ジャクソンとアンジェラ・バセットのハリウッド俳優ばかりに注目が集まり、芝居としての評価はイマイチだったのよ。話を「HURT VILLAGE」に戻すわね。ホール女史は、悲惨な黒人家族の姿を赤裸々に描いたの。だけど、あまりに不幸ネタを詰め込み過ぎた物語はちょっとやり過ぎ。二夜連続テレビドラマSP版じゃないんだから。ついでにダメ出し、黒人作家ロレイン・ハンズベリの戯曲で、ブロードウェイで舞台化された「A Raisin in the Sun」と内容がかぶるのも気になるわ・・と私は評価は10点満点で6点。結局、私の脳裏に一番焼き付いたのは、トーニャ・ピンキンスが胸元に装着していた本物そっくりのたれ乳。私の感性も所詮そんなもんよ。尚、公演は延長され3月25日まで、映画化も決定しているそう。


来週の更新も、引き続き、オフの芝居を取り上げます。