オスカーとGOD SPELL | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

オスカーとGOD SPELL

映画ファンのみならず、アカデミー賞授賞式は気になるもの。私もレッドカーペットの模様はチェックしたわよ。毎年、偽善者のインタビュアーと、うぬぼれたセレブの会話が、狐と狸の化かし合いのようで笑えるし。今年は特に米ピープル紙の「最もセクシーな男性」に選ばれたブラッドリー・クーパー(『Three Days of Rain』06年)にウケたぁ。彼さ、ノンケぶって喋っていたけれど、顔つきと喋り方がモロ。組合員疑惑が浮上するもの無理ない話。肝心の授賞式の演出もねぇ・・「スターウォーズ」「E.T」,「タイタニック」など,毎年同じ映画の名場面を見せるだけ。回転寿司じゃないんだから、ったく。

さて、話はハリウッドからブロードウェイへ。最近やけに宗教がらみ、多くねぇ!?「シスター・アクト」、「ブック・オブ・モルモン」のほか、3/1には「ジーザス・クライスト=スーパースター」のプレビューも開始されるし。そうくれば、サークル・イン・ザ・スクエア劇場の上演中のロックミュージカル「GOD SPELL」の再演版にフューチャーしないわけにいかないじゃない。

「GOD SPELL」が初演されたのは1971年。オフで2,000回に渡る大ヒットとなり73年には映画化も。その後は品行方正なストーリーと、フォーク系の優しい曲調が保守的な先生方にウケたのか、高校や教会で何度も上演されてるの。

物語の舞台は現代のNY。新約聖書・マタイ伝福音書をモチーフに、イエス・キリストの最期の7日間を奇抜な発想で描いているのよ。ある日、セントラル・パークに集まった若者たちの前に突然、ジーザスが出現。若者たちはジーザスの弟子に扮し、福音書に登場する寓話の数々を、劇中劇として演じ始める。その劇中劇の具体例をあげると長くなるので割愛するけど、要は、寓話を通してジーザスが人間のあるべき姿を説いて行く、といった趣なのよ。

作詞作曲を手がけたのは、「ウィキッド」のスティーヴィン・シュワルツ。本作では、フォーク、ライトロック、ポップ系のオリジナルを、ファンキーでハードロックっぽく、ラップまでも入れて現代風にアレンジ。それが裏目に出たのか、本来のメロディラインの美しさや、歌詞に込められた強いメッセージなど、本来の魅力が失われていたわね。

ジーザスを演じるのはハンター・パレーシュ(「春のめざめ」06年)。アバクロの店先で客寄せしている上半身裸の白人モテ筋系イケメンよ。見かけは最高、”ビューティフル・シティ”などバラード系を歌わせると結構巧いのだけど、うわっつらだけの演技に共感できなかったわね。

演出を手掛けたのはブロードウェイ・デビューのダニエル・ゴールドステイン(「ALL SHOCK UP」05年)。本作で彼はフレッシュさを強調!?脚本にスティーヴ・ジョブズ、リンジー・ローヘン、FACE BOOKなど時事ネタを追加。それに喜んでいるアホもいたけど、私は幻滅したわ。だいたいジーザスという普遍的なテーマが時代に左右されるべきじゃないの。残念ながら、40年前に大ヒットした秀作も、この再演ではハイスクールの学芸会ごっご止まり。魂のかけらも感じなかった。昨年11月7日の開幕していながら、まったく評判を耳にしなかったのは、こういう出来だったせいね。