ミュージカル『リトル・ダンサー』 | トシ・カプチーノ。 オフィシャルブログ Powered by Ameba

ミュージカル『リトル・ダンサー』

バレエ・ダンサーを志す11歳の少年、ビリーの夢を描いた同名映画が有名だから、舞台版を見た人も多いでしょ。映画が舞台化されたのは2005年、ロンドン・ウエストエンドの初演は大ヒット。それに続いてブロードウェイ版が2008年11月13日に開幕したんだよ。

ストーリーは、皆さんもよくご存知だと思うけど一応簡単に。舞台は80年代半ばのイギリスの炭鉱街。政府が決定した炭鉱閉鎖に反発した炭坑夫達はストライキを実施。警察との小競り合いが続く中で労働者階級の炭坑夫を父親持つ主人公ビリー・エリオットはバレエに目覚める。しかし、保守的で学歴もない父親は、ダンスんて女が習うものだと大反対。しかしエリオットはバレエ教師のウィルキン先生の薦めもあり、親の意見に猛反発してロイヤル・バレエ・スクールに入学するため猛練習に励み・・・・

“夢はかならず叶う”なんて安易なサクセス・ストーリーじゃなく、“現実と向き合おう”そして“受け入れよう”というメッセージが込められた脚本に私の心は揺さぶられたわ。印象的だったのはビリーの友人マイケルが妹の服に興味を持っていることに気恥ずかしさを覚えながらもその気持ちをビリーに打ちあけるところ(彼はゲイなのねぇ)。ビリーがマイケルに思うままに自分を表現しようよと二人で『EXPRESSING YOURSELF』を歌うシーンは微笑ましくて泣ける最高のシーンだったの('-'*)

脚本の素晴らしさもさることながら、役者も天下一品。特に子役たちのうまさには脱帽。中での私が最も注目したのはビリーの友人役マイケルを演じたフランク・ドルチェ。ガキのくせに大人顔負けの舞台度胸で堂々たる演技。しかもそのエンターテイナーぶりはフレッド・アステアやジーン・ケリーの再来といっては大袈裟だけど、粋な歌とタップダンスを余すとこなく見せてくれるのよ!ただねぇ、自信があるのはわかるけど、カーテン・コールでの態度はデカイすぎ。それがちょっと鼻についたわね_(*_*;

本作の立役者は、なんといってもロンドンのオリジナル・キャストでもあるハイドン・グウィン。負け組の元ダンサー、ヘビー・スモーカ一でビッチ(性悪女!)な品の無い女、ウィルキンソン先生役を生み出した個性派女優なの。ジョークを連発するコミカルな一面や孤独な一面、それに加えて力強いスピリッツまで感じさせる多面的なこの役を演じきった彼女は天才よ!本作の成功は彼女無しでは有り得なかったのではないかしら。でも、そうじゃなきゃ、ロンドンのオリジナル・キャストの彼女をわざわざブロードウェイまで連れてこないでしょう。

音楽はサー・エルトン・ハーキュリーズ・ジョン様(エルトン・ジョン)。ここ数年、『ライオン・キング』、『アイーダ』とディズニー特有の似たような安っぽいメロディの音楽が続いていたから、全く期待していなかったんだけど悪くないのよ、これが!様々な抗議のメッセージを歌詞に込めたプロテスト・ソング風や英国の物悲しいバラードも胸を打つし、どの楽曲も一度聴いたら忘れられないほどキャッチーな音楽ばかり。私は個人的に全曲大好き(^^)

本作のコンセプトは“人はなぜ踊るのか?”。当然ダンスシーン満載。特にすごいのは、ただ単にダンスを取ってつけたその辺のミュージカルと違い、すべての役柄とダンスが密接に関連しているところ。ただね、私的にはひとつだけ許せないところがあんの。それはカーテン・コールのあと。さっさと帰りゃいいのにドリフの「_ババンババンバンバン_歯みがいたか~また来週」のノリのお祭り騒ぎをしちゃうんだもの(><)物語の余韻を全く楽しめないの。とはいえ、その部分に目をつぶれば5年に一度出るか出ないかの傑作。円高だしさ、NYに来るのであれば絶対に観るべき一作よ!

素晴らしい一日をアップアップアップアップアップアップアップアップアップアップ