カウンターには誰か若手の芸能人のおっかけで知り合ったと思われる若い女性二人と店の女将さんがガンガン関西弁でしゃべっていたが焦ってこちらから話かけてはだめだと思い。 自然な流れで話かけられるのを待った。
気が付くとミックス焼きを食べ終えようとしていたが完全にカウンター席で僕だけ浮いている。 酒を飲んでれば間も持つのだろが、舞台に備えて禁酒中である。
店に馴染めず静かに水とお好み焼きを食べる男がそろそろ腰を上げようとしたとき、カウンターの中から天使の声が聞こた。『お客さん、どこからきはりましたん？』僕は震える声を押さえて答えた。『ふ、福岡。あっ博多です。』 すると横から『博多、もつ鍋が、ごっつう上手いとこですやろ』 『ええ、まあ』『ラーメンはトンコツや』『でもトンコツラーメンの発祥は本当は久留米なんですよ』
そこからは会話は弾みに弾んだ。
そのうちに女将さんが『失礼やけどお客さん芸能関係の方とちゃいますか？』と聞かれたので『ええ、博多で劇団をやってます。ラジオのパーソナリティーなどの仕事もしてます』と答えると『そやろ、なんかそんな感じがしとりましたんや！』とテンションをあげ、店は僕を中心に一体感で包まれた。
これに気をよくした僕は翌日からも店の人や通りすがりの人とドンドンふれあいを始めるのだ。
そのあと道頓堀にいったい何軒あるんだ！と突っ込みたくなる『金龍』でラーメンを食べ、僕は道頓堀ナイトに心を温かくしてビジネスホテルで爆睡した。
この時の僕は翌日に予期せぬ大きなふれあいが待ったいる事など知るよしもなかった。