朝4時5分!!・・・・・・当然、外は真っ暗。


朝4時5分!!・・・・・この時間まで飲んでいたことはあるが、起   きたことは巡演の仕事以外ほとんどない。


朝4時5分!!・・・・・昨日飲んだ屋久島の焼酎「三岳」がまだ残っている。



そんな、朝4時5分、その女性は宿の玄関にやってきた

Tさんと名のるその女性は、今日の縄文杉遠人登山のガイドさんだ。年齢不詳のその女性は、ボンゴを運転してやってきた。車の後ろには20代の女性が二人、どこか遠い国へ売り飛ばされているような、怯えたた様子で乗っていた。

僕は精一杯の笑顔を見せて友好的な態度をみせたつもりだが、40代の明らかに二日酔いの中年男のソレは、彼女らを余計に不安にさせたようだった。

 その後、もう一人若い女性が乗ってきた。彼女はとても友好的で全体の空気が和んできた。


 まづ、『あさひ屋』『日の出屋』というわかりやすい名前の二つの弁当屋によって朝食、昼食の弁当を受けとった。泊まった宿によって弁当やが違うようだ。

ボンゴはまづ、屋久島自然館に行きそこでシャトルバスの発車を待つ間に、外のちょっとしたベンチみたいなところで朝食を食べるように促された。当然まだ暗い。僕はガイド本に書いてあったとおりヘッドライトを持っていたので、頭にそれをセッテイングし、みんなの弁当を照らしてあげた。

・・・・・・・・・・・・ みんな喜んだ。


その後、シャトルバスは荒川三叉路行き、そこで又乗り換え荒川登山口に向かう。

その間、Tさんはやたらに観光協会に悪態をつく。(笑)


登山口で軽く準備体操をしてさあ、いよいよ出発だ!!

トロッコ軌道を歩き、ウィルソン株~大王杉~夫婦杉~そして縄文杉へとむかう。


歩く、歩く、歩く。


当然のように雨が降る、カッパを着る。


歩く、歩く、歩く。


すれちがう、上り優先。お互い笑顔で挨拶。


歩く、歩く、歩く。


シカが普通に横にいる。心が和む。


歩く、歩く、歩く。


深い緑、綺麗な苔、幻想的な靄。


歩く、歩く、歩く、


大きな切り株で洞窟のように中に入れるウイルソン株で昼食。

中には祠があり、水が沸いている。

僕はここの景色が大好きになった。


大王杉や夫婦杉をはじめさまざまな屋久杉と出会う。

倒木更新、切り株更新、一つの屋久杉はある意味大地である。千年を超える時間はそこに多くの別の木々が着生し、一本の屋久杉が一つの森になっている。


雨があがると苔に残ったしずくが赤、青、緑色に輝き苔のダイヤモンドを見せてくれる。


木肌が冷たいヒメシャラは雨水が伝って落ちてくるがその水はなんともいえないおいしさだ。


不思議なのは、あの時間、疲労はピークだったはずなのに、なんだか夢の中での出来事のようで身体の疲れを思い出すことが出来ない。



縄文杉。

あまりにも有名になりすぎた縄文杉。

多くの人をひきつける縄文杉。

僕は単なる観光客の一人だけど、君に会うためにやってきたんだ。

樹齢は2700年とも7200年ともいわれるけど、僕の想像を超える時間、そこにそうしていたんだね。

せめて僕ができることは写真はとらずに帰るね。

もし、また会いたくなったらこの山道をあるいてくるよ。

君の生きてきた時間にくらべたら、本当に本当に一瞬のことだから。

僕の一生だって一瞬だろうから。

だけど・・・・だから・・・・・僕は自分の一瞬を精一杯に生きるよ。

この瞬間のみが生きてる証しだから。







結局、朝4時5分に宿を出て戻ったのは六時半だった。

その頃は、一緒にいた皆は別れを惜しみ、お互いのこれからにエールを送りたい仲間になっていた。・・・・・・・・・・・・・それが無力だということを十分にわかっていても。