6月30日 横浜。


ブラジル 対 ドイツ。


決勝戦。


多くの番狂わせが合った大会だったが、最後に残ったのは、ブラジルとドイツだった。


しかも、優勝4回のブラジルと優勝3回のドイツの対戦は、なんとワールドカップ史上初。
これまでのワールドカップで一度も対戦が無かったことは、七不思議に数えられていた程だった。


この試合が日本で行われるのに、見に行かない訳にはいかない。


本当にあらゆる手段を使って・・・・そして、やっとチケット入手の 「約束」を取り付けた。

その 「約束」 だけで新幹線に乗った。


そして・・・ブラジルのユニフォームとドイツのユニフォームで溢れる新横浜で、そのチケットは自分のものとなった。


カテゴリー“1” W26ブロック 16列 (定価 \84,000)


買値は絶対に云えない。 (恥ずかしくて)
いや、実際のところ、この値段までくると 「価値観」 の問題だけになってしまうので、どう思われるのか想像もつかないから。。


夢は終わらない


マッチ No.64。
夢に見たワールドカップの決勝戦のチケットだった。



新横浜の駅から競技場までの道のりは、本当にたくさんの人で埋められていた。
途中にある “なんでもない普通の” グランドで、国際色豊かなミニサッカー大会が行われていた。 (おそらく勝手に・・)


1次ゲートを入ると、スタジアムの外では、セルジオ越後さんがテレビの収録をしていた。


そして、高島 彩が ドイツ人のサポーターにインタビューをしていた。


夢は終わらない




あのとき、新横浜に、有名人がうじゃうじゃいたに違いない。


スタジアムでは、試合前のイベントが次々と行われ、ピッチには巨大な富士山までが現れた。


夢は終わらない


イベントが終わって、スタジアムに流れたFIFA のアンセム。


あの1ケ月間、何回聴いたことだろう。
あのアンセムをスタジアムで聴くのも、いよいよ最後なんだと思うと感慨深いものがあったなぁ。。


ピッチ横に置かれた黄金に輝くワールドカップを挟んで、ブラジルとドイツの選手が入場。


ゆっくりとベンチへ入るルディ・フェラーの姿がスタンドからはっきりと見えた。
そして、バラックも。。。
韓国との準決勝でドイツを救ったバラックは、累積警告で決勝の舞台を踏めなかった。


夢は終わらない

夢は終わらない


ブラジルとドイツの国歌。


どちらもスタンドで聴くのは、大会2回目。


夢は終わらない


ブラジルは、決勝戦の記念写真をスターティングメンバーだけでなく、ベンチ入り23選手全員をピッチに招き入れて撮影していた。


夢は終わらない


コッリーナ主審が笑顔で試合開始のホイッスルを吹いた。


序盤、ドイツが自陣でゆっくりとボールを回しながら試合をコントロール。
スアジアム全体が緊張感で包まれている感じだった。
「これから何が起こるのだろう・・」 という重苦しい雰囲気。


前半終了間際、ロナウドの決定的なシュートをオリバー・カーンが右足1本でセーブ。
何も起こらないまま前半が静かに終わった。


後半開始早々、ノイビルのフリーキックがポストを直撃するなどドイツが一気に攻めに出るが、ブラジルのゴールにマルコスが立ちはだかる。


そして、67分。
リバウドの思い切りのいいミドルシュートを守護神のオリバー・カーンが弾いてしまうと、そこに詰めていたロナウドが確実に決め、ブラジルが先制。
右手薬指のじん帯を痛めていたオリバー・カーンが、7試合の中で唯一犯した過ち。
これが命取りとなった。


さらに、79分。
リバウドの絶妙のスルーから、ロナウドが一瞬でフリーに。
座っている席からは反対側のゴールだったが、自分の座席とロナウドとオリバー・カーンが一直線上に並んだ瞬間だった。
ロナウドの放ったシュートが僅かに弧を描きながら、オリバー・カーンの指の先を通ってゴール右隅へと “ゆっくりゆっくり” スローモーションのように吸い込まれていった。


ロナウドは、4年前のフランス大会の決勝では精彩を欠いて敗戦の一因となってしまったことは間違いなかったし、さらに、2年半の間、度重なったヒザの故障で南米予選には1度も出場できなかった。


しかし輝きを取り戻した本大会、得点王を決める8点目のゴールで、ブラジルを5度目の世界王者に導いてみせた。。


夢は終わらない


試合終了後、オリバー・カーンは自陣ゴールポストにもたれ込み、動けなくなってしまっていた。


今大会7試合で僅か3失点。
その3失点すべてをスタジアムで、ナマで見ることになったのは不思議なことだった。



大会前、負傷のためチームを離れたエメルソンに替わって、キャプテンマークを巻き続けたカフーの手に黄金のワールドカップが渡された。


夢は終わらない


勝利の咆哮。


そして、その瞬間・・・無数の「折り鶴」が天から舞い降りてきた。


日本中の小学校でも、全員が1羽づつ折って、自分の名前を書いたと聞いていた。


夢は終わらない


スタジアムを舞い降りてくる 「折り鶴」 に包まれて、鹿島のアイルランド人たちと一緒に始まった “長いような、短いような” 不思議な1ケ月間の想い出が頭をよぎった。


競技役員として経験できたかけがえの無い経験、今までのチケット争奪戦の苦労と 「夢」 にまで見たこの決勝戦の場にいれる喜び、感動、感謝、・・・いろんな感情が噴き出してきたことを今でも昨日のことのように想い出すなぁ。。


あまりにも感動的なクライマックスだった。



夢は終わらない


翌日、ブラジルの宿舎となっていた磯子の横浜プリンスホテルに行ってみた。


そこには、多くのファンと関係者が詰めかけていた。


ロビーにはファルカンが訪れており、優勝監督となったルイス・フェリペ・スコラーリと談笑をしていた。
ロナウドは朝帰りならぬ 「昼がえり」 で、タクシーで悠々とホテルへ戻ってきた。


優勝を満喫するブラジルとは逆に、ドイツは朝いちでホテルを出発して帰途についたとのことだった。



すべてが終わったんだなぁ・・・・ と思った。。


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【GAME DATA】
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FINAL
MATCH.64
30/06/2002 20:00
横浜(横浜競技場)
69,029人
ブラジル 2-0 ドイツ

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ブラジル
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GK:1 マルコス
DF:3 ルッシオ , 4 ホッキ・ジュニオール , 5 エジミウソン
MF:2 カフー , 6 ロベルト・カルロス , 8 ジルベルト・シルバ , 11 ロナウジーニョ (85分 19 ジュニーニョ) , 15 クレベルソン , 10 リバウド
FW:9 ロナウド (89分 17 デニウソン)

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ドイツ
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GK:1 カーン
DF:2 リンケ , 5 ラメロウ , 21 メッツェルダー
MF:22 フリングス , 8 ハマン , 16 イエレミース (77分 14 アサモア) , 17 ボーデ (84分 6 ツィーゲ) , 19 シュナイダー
FW:7 ノイビル , 11 クローゼ (74分 20 ビアホフ)

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主審:コリーナ (イタリア)
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得点:ロナウド (67分) , ロナウド (79分)

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