29才を迎える年に、関連会社への出向と海外転勤を言い渡された私は、2年近くお付き合いしていた大好きなYさんと別れたくなかったのですが、結局会社を辞めることはせず、研修を経て9月に出国することになりました。


海外勤務を伝えられたのは3月でしたので、その後半年くらいはYさんとのお付き合いを続けました。海外転勤を伝えたばかりの頃、別れ話になりそうで私は重苦かったのですが、Yさんはもともとサッパリした明るく面白い性格なので、出国までこれまで通りお付き合いして下さりました。


いよいよ出国前の最終デートの週末がきました。

Yさんは、しばらく会えなくなるし俺も本当はめちゃくちゃ辛いけど、としえちゃんもこれから人生まだまだ長いから、いろいろ経験してほしい、というような事を仰ってました。そして、ぐっと抱きしめてくれました。私は泣いてしまいましたが、ふとYさんを見ると、Yさんが割と激しく涙流して咽いでいました。怒りや悲しみなど負の感情をほとんど見せなかったYさんが泣くなんて。私みたいな週末女装に、遊びじゃなくて、人として真剣に向き合って下さっていたんですね…感謝の念も込み上げました。


Yさんは、今後も連絡取り合って、としえちゃんが困ったことがあったら助けにもいくし、帰国する時までお互いパートナーが見つからなかったら、またお付き合いしよう、と言ってくださりました。お別れするとも、しないとも取れる微妙な表現でしたが、Yさんらしい言い方で、私にはすんなり入ってきました。

その後は幸せな日々を思い出すように激しく愛し合いました。そして翌夕、Yさんが帰る時、これまで本当に素晴らしい時間をありがとう、とにかく身体に気をつけて、と仰り、最後にもう一度強く抱きしめて下さりました。私は涙が止まりませんでしたが、その一方で、やはり私はYさんとお付き合いできて本当に良かったと思いました。

出国は平日で、Yさんは仕事が忙しく見送りに来てくれませんでしたが、スーツ姿は見られたくないので、納得はしていました。

機中では、時々涙が込み上げながらも、少しずつ新たな生活にも思いを馳せました。アメリカのカリフォルニア州南部の町に赴任することになりましたが、その話はまたの機会に書こうと思います。