首都圏に親類がいるので、これまで何度か家族で東京に行ったことがありました。ただ、一人では行ったことありませんでした。


大学3年の終わりころ、就職活動で企業説明を聞きに初めて一人で上京することにしました。ただ、実は半分は言い訳で、本当はある場所に行くことが一番の目的でした。そこは、新宿2丁目です!


苦い経験を通じて、私はやはり女性と付き合うのは無理と自覚し、街の外れにあったアダルト本売り場で、ニューハーフの本をすでに何冊か買って読んでいました。


私が読んだニューハーフ関係の本によると、新宿2丁目にはゲイ、女装、ニューハーフの飲み屋さんが結構あり、私はとにかく本物の女装さん、ニューハーフさんに直接会って、話をしてみたいなぁと言う思いが募っていました。


私はすでに成人しており、お酒も飲めるようになっていましたので、お金と度胸さえあれば、そう言うお店に入れます。地元にも少しあるようでしたが、人に見られたり、知り合いに出くわすのが怖かったので行ったことありませんでした。


少しでも交通費を節約するために、パックツアー使って都内に入りました。


企業説明会が終わって、いよいよ自分の自由時間ができ、とりあえずそのままスーツで行くことにしました。


行こうと思っていたそのお店は、ニューハーフや女装のママさん、スタッフさんがいるお店でした。なかなか度胸なくドキドキ迷いながら店の前にいると、ちょうど店から帰るお客さんが出てきたところでした。ちらっと中が見えたので、気分がだいぶ落ち着き、いよいよ自分でドアを開けてみました。


スタッフさんらしき人から、”あら、ずいぶん若いわね。ここはこういうお店だけど、興味あるのかしら?”、と聞かれ、私は静かに頷きました。


とりあえず席に案内されて座りました。

システムを説明されましたが、用語を知らないし、緊張しすぎて、何が何だかよく分かりません。とりあえず水割り2時間飲み放題で4000円、ということだけは確認して飲み始めました。


女装だけで身体はいじってなさそうなスタッフさんから、なぜ来たのか、とか、お店どうやって知ったのか、とかいろいろ聞かれ、正直に答えました。そしたら”あなた同業なのねぇ”と言われ、ママさんも来られました。


ママさん、スタッフさんたちにたくさん話かけてもらいながら、少しずつ緊張も解け、自分の話も聞いてもらいました。そして、あっという間に時間がきたのですが、学割、といって少し時間を延長サービスしてもらいました。女装したいなら教えてあげようか、とも言われ、スタッフさん達の名刺をもらいました。平日で比較的すいていたのもありがたかったです。


とにかく、すごく楽しく、自分が素で居られる場所が見つかった気になりました。