平成〇〇年度

こ ん な 学 校 に

〇〇市立〇〇小学校

1 学校教育目標

◎ すすんで学ぶ子  ◎ 豊かな心をもち助け合う子  ◎心と体をきたえる子

 

人間尊重の精神を基調とし豊かな人間性の育成を目指して学校教育目標の具現化を図るため、下記のように考えて取り組んでいきます。

 

2 オンリーワンの教育

人間尊重の精神とは、それぞれの児童がこの世の中でたった一人しかいないというかけがえのない存在であるという立場に立ち、児童一人一人の個性を尊重していくということです。そのために本校では「オンリーワンの教育」を行っていきます。「十人十色」と言われるように、本校の児童541人に541色の色が出せる教育をしていくということであり、「個性重視の教育」です。

まず、人間は顔が皆違うように元々が個性的であると捉えます。そしてかけがえのない存在であるそれぞれの児童は、もともと個性的であるため、個性をつぶしさえしなければ、やがて個性の花は開いていくと捉えます。本校では、その花を咲かせるための支援をしていきます。

豊かな人間性を育成していくために、小学校教育で特に大事なことは、子ども同士むやみに競わせることではなく、一人一人のペースにできるだけ合わせて、様々なことに取り組んだり、それぞれの子どもが伸び伸びと生活する環境を作ったりしていくことです。

そうした環境の中で個性の芽を潰すことなく、それぞれの個性の花をやがてしっかりと咲かすことのできるような土台を作っていくことが小学校教育の大きな使命であると考えます。

 

3 不易を重視した教育

教育においては「不易」と「流行」と言われますが、大学→高校→中学→小学校と年齢が下がるほど「不易」の占める部分が大きくなります。「不易」とは変わらないものであるため人生の基本になるものであり、誰にも共通して大切なものです。

教育における「不易」というと、どうしても国語や算数等の学習における基礎・基本と捉えてしまいがちになります。しかし、この基礎・基本は「学習における不易」であって、教育における「不易」ではありません。*詳しくは後述します。

まずはこの「不易」さえしっかりと養っておけば、「流行」は子ども自身が取り入れていくことで、それぞれの個性を発揮して「豊かな人間性の育成」につながると捉えます。

「不易」とは、①情緒の安定  ②自主性・自律性の発達  ③社会性の発達の三つと言ってもよいでしょう。これらの三つをしっかりと養うことができれば、子どもは自然に、学習を始めとして、様々なことに自らチャレンジしていくようになります。

逆に言えば、これらの三つを養わなかったらいくら学校の勉強をさせようとしても、ほとんど効果は上がらないと言っても過言ではないでしょう。

 

4  家庭・学校・地域三位一体の教育

 しかし、これらは学校だけで養うことは絶対にできません。家庭や地域の協力が不可欠です。むしろ社会性を除いては、学校では養うことが難しいと言ってもいいかもしれません。学校は、あらかじめ決められた生活の枠組がしっかりとできていて自由に選択したり決定したりする自己決定の場が少なくなっています。したがって、 自己決定の場が多いほど効果的に育成できる自主性の発達を促す場として学校は、十分であるとはいえません。      

自主性を発達させる絶好の機会は枠組の最も少ない土・日曜日や長期休業です。学校5日制がいろいろと言われていますが、子どもにとって一週間は5日ではなく7日なのです。そして、昔から言われているように「よく学ぶこと」も大事であるが「よく遊ぶこと」も大事なのです。子どもにとっての学習とは「よく遊ぶこと」と「よく学ぶこと」を合わせたものだということが近頃は忘れ去られているようです。

人間にとってもともとは日々生活していくことが学習であり、それを生涯学習と称しています。大人であってもそうなのだから子どもであればなおさらのこと日々の生活が大事な学習そのもののはずです。家庭・学校・地域とそれぞれの場所で様々な学習を積み重ねてこそ真の生きる力が養われていくはずです。それぞれの適したところで、それぞれの役割も生まれ、連携も生まれてきます。家庭や地域の方々と手を携えて、541人の児童に、541色の花が自然に開くような学校にしていきたいと考えています。

 

5 情緒の安定を図る

  情緒の安定とは、気持ちの落ち着きや安心感であり、不安感のない状態のことです。具体的には「お母さんが自分の方をしっかりと向いていてくれる」「先生が自分の方をしっかりと向いていてくれる」という実感のことです。これは身体接触(スキン・シップ)か子どもの話を傾聴することでしか得られないものです。

「子どもに話を聞かせたかったら、子どもの話を聞いてやることだ」と昔から言われていますが、子どもの話を傾聴してやると子どもは「お母さんは自分の方を向いてくれている」「先生は自分の方を向いてくれている」という実感が得られます。そのため、安心感が得られ気持ちが落ち着き、人の話にも耳を傾けられるようになります。

大人だって気持ちが不安定なときは、他人の話など上の空になってしまいます。この情緒の安定を十分に図らないで、しつけをすると人格は歪むと言われています。子どもの手記に「言うことを聞いてくれたり、いろいろな物を買ってくれたり、小遣いをたくさんくれる親は便利だとしか思わなかった」というのがあります。親に「愛されている、可愛がられている」と思っている子どもは幸せです。

 

6 自主性・自律性の育成

  自主性の基本は、自己決定の行動にあります。具体的には、「自分のことは、自分で考えて、自分で選択して、自分で決定して、自分で行動していく」ということです。

  母親から優しく抱かれて十分な母乳をもらって育てられた子ども(ここで基本的な情緒の安定は図られる)は、やがて歩けるようになると母親から離れて周りの探検を始めます。これを探索行動と呼び、自己決定の行動の始まりになります。自己決定の行動には、失敗や逸脱がつきものです。ここでは失敗や多少の逸脱は大目に見るという大人の側のゆとりが大事になります。

  特に失敗の克服体験は大変重要です。これが多い子どもほど自分に自信が持ててチャレンジ精神も旺盛になっていきます。しかし、失敗体験の少ない子どもほどチャレンジ精神は薄れ、挫折したり、幼児万能感を持ったりする人間になりやすくなります。

  また、自分で選んだり、自分で決めたりすることを積み重ねることによって、判断力や決断力も育っていきます。当然自分でやったことであるから、決して他人に責任転嫁をするようなこともしなくなり、責任感も育っていきます。

  逸脱行動を放置しておくと自己中心的な人間になっていきます。「何でも自分の思い通りにはならないのだ」ということを幼少期にしっかりと植えつけることが大事です。これを「しつけ」と言っています。しつけによって、自分自身をコントロールしていく力が育ちます。自分自身をコントロールしていく力は、大きく分けて2つあります。

①  やりたいけれど、やってはいけないことを、やらないでいく力(がまんする力)

②  やりたくないけれど、やらなければならないことを、やっていく力(がんばる力)

  ①は、万引きなどの望ましくない行動を自らの意志によって抑止することができるというものであり、②は受験勉強などの望ましい行動を自らの意志によってやっていくことができるというものです。

 これらの力を育てるのに、好ましくない影響を与えるものとして、放任・過保護・過干渉・完全欲などがあります。具体的には、下記のようなことです。

子どもの行動に関心を示さない。

自分の満足のために甘やかしたり、過度に保護したりする。

自分の考えを子どもに押しつける。

理想にしたがって子どもの行動を過度に強制する。

 

反対に好ましい影響を与えるものとしては、下記のようなことがあります。

自分の欲求を我慢する。

ルールの遵守。

遅延可能(順番を守る、交代ができる)。

持続的対処・根気(すぐ諦めないでやり続ける)。

等があり、日常生活の中で、これらをまんべんなく行えるようにしていくことが、自分自身をコントロールしていく力を育てるためには大切であると言われています。

 

7 社会性の発達

  人間関係は、縦の人間関係から横の人間関係へと発達していきます。縦の人間関係の代表が母子関係になります。縦の人間関係の特徴は、大人の側に元々子どもへの配慮のあるものになります。これは傷つけられる言動が少ないということでもあります。

しかし、配慮のある関係ではあっても、親に「合わせる」という体験をしっかりとさせる必要があります。人に合わせるということを適度に身につけていくことが、協調性の第一歩になり、友だちと上手に関係をつくっていくもとになります。協調性は人間関係を保っていくためには不可欠のものです。

これに対して横の人間関係は友達関係であるため、辛辣な言動が多くなります。そのような中で、相手を傷つけたり傷つけられたりする体験の積み重ねを通して、人間関係における「相手に合わせる」ということを身につけていきます。

昔の人が「大けがをしない限り、できるだけいろいろなことをさせることが大事である」と言っていたのは、子ども同士のケンカや遊びの大切さを重視していたことを物語るものなのです。

「小さいときに手を焼かせた子どもは、大きくなるとまともになる」とも言われていました。当然のことではありますが、幼少期に様々な体験学習を積むことによって、様々なことの加減を身につけていくことが、うまく人間関係を保っていけるようになるため、大人になって大きな問題を起こさなくても済むようになります。

自分自身をコントロールできる子どもほど、人間関係を上手に保っていけるためトラブルが少なくなります。このような社会性の育成には、同年代で一緒に過ごす学校ほど向いているところはありません。学校が学問をするところとして非常に大事なところであると認識している人は多いが、学校の役割でひょっとしたらそれ以上に重要なのが社会性の育成に関わるものではないかと考えていいます。

 

8 教育における「不易」

  昔から教育とは、「教え育てるものである」と言われています。教育の原点は正にここにあります。まず「教える」ことと「育てる」ことを明確に区別する必要があります。「教える」と「育てる」では、言葉が違うので当然内容にも違いがあります。

教えるというのは文字通り、知らないことを教えるというのが最もポピュラーで「知らせる」というような意味あいが強くあります。この範疇に入るものに「知る」「分かる」「理解する」等があげられます。これらに共通するのは、言葉を駆使することによって、何とか知らせたり、分からせたり、理解させたりできるということです。したがって言葉が重要な役割を果たしています。学校における主な学習活動は、ほとんどが「教える」範疇に入ります。したがって、「教える」範疇のものには、言葉を駆使することが非常に大事になります。

  これに対して「育てる」ということは、当然「教える」とは違いがあります。その違いは、文章化することによって、より明らかになります。「やる気を教える」とは言いません。「やる気を育てる」「頑張る力を育てる」「我慢する力を育てる」等「~する力」と言う場合は、必ず続く言葉は「育てる」となります。したがって、これらの力は「教える」ものではなくて「育てる」ものということになります。いま盛んに言われている「生きる力」も育てるものということになります。

  「教える」場合は、言葉が有効に作用するが、「育てる」場合は、どのようにするのが有効なのでしょう。「育てる」ことに有効なのは、一言で言うと体験活動です。

  ここで言う「体験活動」とは自然体験活動のことですが、いわゆる山や高原で行う自然体験活動ではありません。生きる力は人間社会で生きていけなければ意味がありません。特に今大きな問題の一つになっている不登校やニートは人間社会の中での問題なのです。人のいないところで、いくら体験活動をしても改善にはつながりません。そもそも人間は自然の一員であるから、その人間が行うことも自然と捉えることができるのです。したがって人間が営んでいる全てが自然であり、毎日体験していること全てが自然体験なのです。そして、人間の子どもにとって大事なのは、この日常における自然体験なのです。大切なのは、そういう中で日常どのような体験をしていくことが、生きる力を育てることにつながるかということなのです。

  「育てる」ことは、極端に言えば言葉は役に立ちません。何よりも大事なのが体験(行動)の積み重ねです。これを抜きにしては、「育てる」ことはできません。

  具体例をあげれば、「毎朝自分で起きているか、起こされているか」「自分で決めているか、周りが決めているか」「自分でしているか、してもらっているか」等、日常の当り前のことを「自分でできることは自分でしていく」という自然体験活動を行っていけば良いのです。基本的には「自分でやる」か「やってもらうか、やらされるか」という体験活動の違いが、育ち方の違いになって力の差になっていきます。

  こうして育てられた力がおおもとのものになって、物事に取り組むためのバネとして働き、その後の人生を決定づけていくと言っても過言ではないでしょう。

  「教える」と「育てる」のもう一つの大きな違いは期間です。前述したように「教える」ことは言葉で可能なので短い時間でも済みます。それに比べて「育てる」ことは、体験活動なので長い時間が必要になります。学校の授業は「教える」範疇なので45分か50分でも可能です。しかし、1時間の授業も、それ自体は体験活動であるという認識は大切です。1時間の授業の積み重ねを長い期間で見れば、立派な体験活動になるため、育てることが可能になるわけです。

*体験活動(1時間の授業であったり、日常の様々な活動であったり)には、それぞれ個々の目標があるが、一貫性のある体験活動を継続して行っていくことが「~する力」を育てることにつながっていく。

   自己決定の積み重ね  →  自己決定力、決断力

   自己決定の行動の積み重ね →    行動力、責任感

   判断の積み重ね  →    判断力  

  思いやられたり、大事にされたりする体験の積み重ね → 生命の尊重、思いやりの心 

  がまんの積み重ね → がまんする力

  がんばる積み重ね → がんばる力

 

9 愛と信頼の教育

  「生徒指導は愛と信頼である」という言葉を聞いたことがありますが、一歩進めて「教育は愛と信頼である」と言いたいと思います。一言で言えば子どもを限りなく愛して限りなく信頼していくことです。

  ものの本には「愛とは与えるものであるため、見返りを期待しないものである」と書かれています。簡単に書いてあるが、これほど難しいものはありません。その本にも同じようなことが記されていたが、日常でそれに最も近いのは、親の子に対する愛であるとも記されていました。子どもに誠心誠意接して、決して見返りを期待しないという境地をわれわれ教師は目指していくことが大事だと思っています。                                                      

  信頼という言葉のほうが愛という言葉よりは使用頻度が多いのではないでしょうか。その割には「信用」と勘違いをして、その意味を正確に捉えていないようなところが見受けられます。銀行は、一度不渡り(ミスを犯す)を出せば2度と貸してくれません。これは信用取引だからです。

しかし、教育が行うのは、子どもが何度ミスを犯そうが見捨てないというものです。信頼とは、ただ見捨てないというだけでなく、この子は必ずミスから立ち直っていくという思いです。言い換えれば、人生は山あり谷ありで、様々なミスを犯していくであろうが、必ずそれを乗り越えていってくれるという確信のことです。

  信用の立場の人は、子どものミスを許せません。(自分の子どもが万引きをしたことで、どうにも子どもを許せないという母親の相談を受けたこともあります)そして、できるだけミスをさせないようにすることに力を注ぎます。そして子どもに任せることはしないでいちいち手出し口出しをします。そして、ひたすらミスがゼロになることを目指していきます。しかし、人間のミスがゼロになることはありません。

しかし、信頼の立場の人は、できればミスをしないのに越したことはないけれど、それ以上に復元力をつけることに力を注ぎます。そして、子どもに任せることができます。さらには、ミスがゼロになることを目指しても、ゼロにならないという現実を受け入れることもできます。

  このような人たちは、本来はミスをゼロにしようとするのではなく、不正をゼロにしようとすることなのだということも分かっています。

  親や教師から愛され信頼されている子どもは、それだけで気持ちが落ち着いて、楽な気分になり授業中の集中力も増します。心の安定はあらゆる面で人間の行動のもとになります。

  校長や保護者が教師を信頼して任せ、教師が児童を信頼して任せられる学校の実現を目指していきたいと考えています。先生に信頼された子どもは安心して伸び伸びと「元気で楽しい学校生活」を送ることができます。                    」

 

10 経営方針

(1) 市の教育行政方針を踏まえ、一人一人の個性を尊重して個性重視の教育を目指していきます。

(2) 校長が職員を信頼し、教師・児童・保護者が信頼し合える人間関係を基盤にした教育を行っていきます。

(3) 豊かな人間性の育成をしていくために、一人一人のペースに合わせた取り組みをしていくと共に伸び伸びと生活する環境作りをしていきます。

(4) 誰にも共通した人生の基本となることをきちんと身につけさせていきます。

(5) 学校・家庭・地域の役割を明確にして、それぞれが遂行に努め、知育・徳育・体育の調和のとれた人間性の育成を図っていきます。

(6) 「よく遊び、よく学べ」の心を生かして全人形成に努めていきます。

命が一番大事であるということの徹底を図り、人倫に触れることには、毅然とした態度で臨んでいきます。

(7) 人事考課制度の活用を図り、学校経営への全職員の参画体制の確立に努めます。

(8) 教師の生活指導力と学習指導力の向上に努めます。

 

11 努力点

(1) それぞれの児童がかけがえのない存在であることを踏まえ、良さや可能性の発見や 発現に努めていきます。

(2) 信頼と信用との区別をつけて、自他を信頼していける人間形成に努めます。

(3)  児童理解に努め、それぞれの児童の特徴を捉えることに努めていきます。個に応じた指導の徹底に努めていきます。・学習の基礎・基本の徹底を図る。反復練習の徹底。

(4) 基礎・基本を的確に捉えて、教育における基礎・基本と学習における基礎・基本の区

別をきちんとしていくようにします。

(5) 学校・家庭・地域の役割を的確に捉えて、依存と連携の区別をつけることに努めていきます。

(6) 子どもにとって学習とは何かをしっかりと捉えて、「よく遊び、よく学べ」の意味の理解を確実にしていくように努めます。

・ 命に関わることほど重要であるという認識と基準の徹底を図る。

・ 優先順位や軽重を的確に捉えて仕事の整理に努める。パレートの法則の理解。

(7) PDCAのマネジメントサイクルの活用を図っていきます。

(8) コミュニケーションの持つ意味の理解を図っていきます。