あるとき、ゴキブリが悪気なくムカデに尋ねた。そんなにたくさん足があるのに、どうやって歩調を合わせ、流れるように優雅に歩いていけるんだい、と。そう聞かれたムカデは、はたと考え込んでしまった。ーその瞬間から歩けなくなってしまったのである。‥法政大学出版局、P・ワツラウィック著「よいは悪い」より‥

 

 ムカデは疑問を抱くまでは幸せだったのです。この種の疑問というか意識が行動の足を引っ張っているように思います。そして、不登校になり易くなっていくと考えられるのです。言い換えると、学校を意識し過ぎているということです。

 

 多くの親や子供は学校について、特に意識もせず、むしろいい加減な気持ちで、行ってくればいいくらいにしか思っていないのではないでしょうか。私自身も自分の子供が何でもいいから学校へ行って来さえすれば良いと考えていました。それ以上でもなく、それ以下でもありませんでした。当然学校に対して、特に期待することもありませんでした。 

 

 宿題をやろうがやるまいが、どうでも良いのです。忘れ物をしようがしまいが、どうでも良いのです。ただただ元気に登校すればよいのです。

 

 小学校へ入学するにあたって、何をすれば良いかなんて考えたことはありません。入学するのだから、後は学校に行けばよいだけのことでした。多くの家庭は、入学するからと言って特別意識はしないのです。意識した途端に、それが子供に伝わります。中には「1年生なんだから、しっかりしなくては」なんて言う親もいるでしょう。このような環境になるほどムカデに近づいていくと思われます。

 

 新しい所へ行くとなれば、誰でも緊張するものです。そういう時は緊張をほぐす言葉かけが大事なのに、ついつい今まで身に付いている「頑張って」という𠮟咤・激励の言葉になってしまいます。

 

 不登校になる子供は聞く力が強いため「頑張んばらなければ」ということがが強く記憶されていきます。日本の教育は、何でもかんでも「がんばれ!がんばれ!」ですから、プレッシャーがどんどん高まっていきます。

 

 本当は緊張をほぐす対応が大事なのにも関わらず、そのやり方を知らないためできません。そして、逆をやってしまうのです。

 

 「あなたは、小学校へ入学することが許されたのだから、自信を持って学校へ行きなさい」と言えばいいのです。「そんなことでは、1年生になれないよ」なんて絶対に言ってはいけません。

 

 自信が持てるような接し方をしないで、「自信を持て!」といくら言っても自信にはつながりません。

 

 愛情=傾聴+気持ちの理解+理解した事を伝える   

 自己決定の行動+認める⇒自己存在感を得る⇒意欲の向上‥‥これらの地道な接し方で、自信を持った「やる気のある子」が育ちます。