■注記 ちょこちょこと加筆していますが、加筆の履歴は最高部の******外に記載。
シーンの確認
(0)外部
冒頭
飛び降り死体の痕跡と思われる人型。
人々が集まってくる。
平手は物陰からそれを見つめているが、背を向けて立ち去る。その時平手は赤い彼岸花をかかえている。
(1)内部-1
0:21
その飛び降りたと思われる建物の内部に平手入っていく。
赤い彼岸花を胸に抱えている。
そこは外部と異なった異空間。
お互いにいがみ合い、対立し、人間をすりつぶすような光景が続く。平手は、赤い花を抱えながら、その光景を見つめ、通り過ぎていく。
ここでは誰かと誰かが抱擁するシーンはみられない。
0:38
佐藤詩織、警察に捕まっている。佐藤は激しい感情を顕にしている。左側にはそれを見ながらヒソヒソ話をするような人たちの姿がみえる。
1:02
小池がスマホを見て薄く笑う。この段階で佐藤詩織、石森虹花、小林由依はすでに現れている。
1:08
平手が最初に足を止めるのは老人の死とその家族。
その老人をなくした女性(菅井友香)にゆっくり近づくが、押し戻される。強い拒絶。
★(このシーン以降、この世界の中に蔓延していた激しい対立やいがみ合いは、ずいぶんと少なくなっている。ほとんどない。平手が人々に向かって動き始めたとき、世界は少し変化したとも思える)
1:14
拒絶された先で警察に捕らえられていた女性がいる。
平井が菅井に突き飛ばされた先に佐藤がいる。いったん佐藤に抱きとめられる。しかしそのまま突き放される。このとき平手は佐藤の方を見ながらゆっくり離れていく。右腕が佐藤の方に力なく差し出されている。
1:18
ゆっくり佐藤から話されていった平手は、小林に駆け寄る。
いじめられている高校生(小林由依)。そのいじめられ、肩をがっくり落としているところに走りよる。
(菅井に手を差し伸べた時は、まだおずおずした感じだったが、この時は強い意志持って平井は助けに入る)
うなだれる小林を抱きかかえ立たせるが、小林はそれを受け入れず、花を取り上げる。
(このとき、背後を白い旗をはためかせた集団が駆け去っていく。)
しかし、平井はその小林を抱きしめる。
小林はそっと平手の背後に手を回す。そして小林から再び花を受け取り、平井は水商売の女性のもとにかけよる。(渡邉理佐)
1:30
水商売風のいでたちの渡邉理佐に絡んでいた2人の男性を平手がはねのける。
そして渡邉理佐を抱きしめようとするが、抱きしめる前に押し返され、拒絶される。
(追記・加筆 2019/02/11 もう一度よく見てみたが、理佐は単純に拒絶したのではなく、力いっぱい男たちを押しのけた平手に少し怯えているようにも見える。そうなのかもしれない。ありえることだ。)
1:36
そして石森虹花と出会い、抱き合う。
石森は、唯一、強く平手を抱きしめる。背中に回した右手が平手の上着を力を込めて掴む。強い感情。
この離れ際、平手は石森を見ている。石森は腕を解くが、解けた腕は平手を求めているように見える。
1:42
そしてバスでリストカットをしている小池美波のところに現れる。小池は自分の手首を見つめ、バスタブに身を沈めている。
その小池を平手が抱きしめる。
小池は平手の方を見ることはないが、抱きしめたその腕を取り、それにしがみつく。
1:46
土生、隣は誰?
石森、守谷、渡邉理佐。無表情、いや暗い表情で生気なく、固まって歩いていく。
1:54
階段。
長濱ねるが何かの紙を見ながら力なく階段を降りてくる。
左側には一列並んで階段の上に向かって人々がたっている。動きはない。
落ち葉が舞う。男性が転がり落ちてくる。
2:00
階段踊り場の手前に鈴本美愉。どこを見ているのだろう?顔は光の方に向いているが、角度としては窓に向けられているわけでもない。鈴本の左の肩越しに、赤ちゃんの人形が2体。階段の手すりの隙間から顔を出している。
その2段くらい上に長沢菜々香が宙を見るような目をして佇んでいる。
2:05
平手が踊り場にやってくる。
踊り場には人形の赤ちゃんを抱いた女性がいる。顔は赤ちゃんの方に向けられている。
2:08
階段の途中にいる女性(腕組みをしている。少しやさぐれた感じ)に嘲笑気味に声をかけられる。罵られているかもしれない。
しかし平手は誰にも対応せず、何も見ていないかのように淡々と階段を上がっていく。
そして最初の回廊に進んでいく。
(2)回廊-1
この階段を上がりきったところに渡辺梨加が、どうやら死んでしまったペット(?)の鳥を掌に載せて、それを見つめている。
2:16
中華料理屋の前で大人たちが言い争いをしている。(実はこの中華料理屋さん、実在するらしい!びっくり)
ここに尾関梨香と織田奈那がいる。
織田奈那は目を伏せ、顔を背けている。
尾関は、こちらを見ているようにみえる。よく見るとその視線はこちらに向けられているのでもないのだが、一瞬そう見える。
2:21
左手に上村莉菜がぬいぐるみを抱いて立っている。上村も一瞬、こちらを見ている?と思ってしまう。(よく見るとそうでもない)
顔が少し汚れている。大きな黒いコートのようなものにすっぽり覆われている。私には強い怯えを感じさせる。
2:23
誕生日を祝う家族。父、母、そして息子。
この女性が屋上で登場する?ただし服が違う。
この男の子(と思うが)が、祭壇があるような階段で平手に花を手渡す。あの男の子だと思う。
2:25
家族の後ろにうつむいて立っていた緑色のワンピースの女性が何か思いつめたような雰囲気を漂わせながらあるきだす。
その女性の前には子供の写真が写真立てに入れられて並べられている。5枚。
後ろに男性と女性がたっているが、写真の子どもの親と言うには若すぎる。また写真も少し古びて見える。むしろ写真に写っている子どもが青年になった姿があの二人なのだろうか?
★このシーンでは他と照明の色がことなる。特に家族のシーンはとてもあたたかな光に溢れているが、そのことが、その前後の文脈との激しいコントラストを生み出している。その前後のシーンにリアリティを感じるのなら、この家族のシーンはリアリティのない、「この世ならぬもの」のようにも思える。私にはそう見ていて、強い喪失感じを感じる。それは失われてしまった世界、あるいはたどり着くことのできない世界。
あるいはまた、2つの世界が空間的に併存することは、この世界が、バラバラの、相互に関連することのできないいくつもの破片に砕け散っていることも突き出してくる。
この家族のシーンがなければ、あるいは「この世界」でも我慢できたのかもしれない。しかしあの家族場面を見てしまうと、あるいは思い出してしまうと、いま存在している世界がより深く、強く絶望的に見えてしまう。
私は、あの家族に感じる強い喪失感に、どうしても死の匂いを感じてしまう。
2:30平手が写真に目をやりながらその前を通る。
2:34
平手が4人の大人たちに罵られる。最後に顔が見えるスーツにネクタイの男性は、屋上で平手を突き飛ばした男性かもしれない。
2:37
その罵りをくぐり抜けたところ平手は頭を抱え、小刻みに体をゆすり、「ぜんぶぼくのせいだ」という。
ここで照明が落とされ、回廊が見えなくなる。場面が変わる。
(3)内部-2 別の
2:41
「ぜんぶぼくのせいだ」と言った平手は、ずっと抱えていた赤い花を放り出し、次の部屋の中に駆け込んでいく。
この部屋の中では、前の部屋のように具体的な人間のいがみ合いや抱擁はほとんどみられない。
踊って入るが、抱擁にはならない。
2:43 入ってすぐに渡邉理佐に突き放される。
その背後にいるのは尾関と上村か。
2:46 佐藤に向かっていくが、押し出されるように、突き出されるように遠ざけられる。
向こう側を織田奈那が走っていく。手前に鈴本。
2:49 小林由依の腕を取り、抱擁するが強く突き放される。手前で齋藤冬優花。バンとのけぞったとき、髪がバッと巻き上げられるが、その瞬間が結構美しい。
2:52
小林に突き放されたところに小池がいる。
このとき、どうも小池から一瞬、平手の腕をとっているのだが、それを平手が振り払っているように見える。
2:53
小池を振り払った平手が石森の前を駆け抜けようとしたとき、石森が平手の腕を掴み、引き戻す。そして強く押し戻すように胸のあたりを押す。
そこに小池が駆け寄る。
小池は平手を地面に押したおす。それほどの力の入れ方ではなさそうだけど。
2:57
それをみて石森が、もともと平手が走っていこうとしていた方向に走り去っていく。
平手は右手を前に突き出し、何かを求めるように、同じ方向に走り出す。平手の右手が求めているものは、みんなが進んでいこうとする世界なのか、あるいは走り去る石森なのか。
2:58
その平手に後ろから小池と渡邉理佐がしがみつき、止める。
さらにそこに佐藤も加わり、平手を引き戻す。そこに小林由依も加わっているように見えるがはっきりしない。
しかしこのシーンは、平手への敵意、悪感情は感じさせない。
3:03
みんな平手をそこに置き去りにして、同じ方向に全員が走り去っていく。
3:06
小林由依が転倒。
3:08
平手が追いつき、助け起こすのだが、小林はめもくれず、なんの反応も示さず、そのまま走り去ってしまう。
3:16
平手もみんなの後を追うのだが、このとき、呆然とした様子から、天を仰ぎ、両腕を抱え込み、苦痛にふらついている感じだ。
★この世界で、赤い花をもたない平手は一度も誰とも抱擁できない。つねに突き放される存在としてある。
特徴的なこと。
平手が花を持っていない。
平手だけが突き放される存在とされている。
個々の人々が、以前のシーンにあったような具体的な状況に置かれていない。
具体的な状況において存在した攻撃性はなくなっている。
平手がいるあいだ、この世界の人々は、すべてではないが、ほとんどが一人で踊っている。孤独な平穏などではない。のたうち回るような踊りだ。しかし具体的な人間同士のいがみ合い、憎しみ合い、誰かを激しく攻撃することもない。
けれども同時に、誰かと誰かが抱擁することもない。この世界で、ただ平手だけがはっきりと突き放され続ける。
そして人々は一斉にある方向に走り出す。平手も同じ方向に走り出そうとするが、石森が、小池が、佐藤が、渡辺がそれを強く、半ば暴力的に引き止め、押し止める。そして平手が一人、はじき出され、取り残される。
ここで「白い羊のふりをする者」と「黒い羊」との二分割が始まっているというべきかもしれない。みんなが「白い羊」めざして一斉に走り出した。そういうことだろうか。
では石森、小池、佐藤、渡辺、小林(?)は、なぜ平手を止めたのか?とどまらせたのか?
彼女たち自身が、平手を拒絶したのだろうか? そうなのだろうか?
あるいは、彼女らには、「白い羊のふりをする者たち」の世界で平手が、ただ一人弾き出され、集団から排除される光景が見えていたのだろうか?
→最終シーンへ。
(4)回廊-2 階段 祭壇、ロウソク 空間の空気が転換する
そして、
3:20 間奏部分の教会風の音楽がなりはじめ、両側にロウソクが立ち並ぶ階段が現れる。向こう側からは光が再込んでいる。それはこの薄暗かった内部の世界から外部の世界につながる階段なのだろうか。
しかしこのロウソクは?
踊り場に祭壇のようなものもみえる。手すりなどに掛けられている布は白。
3:28
赤い花をもって子どもが立っている。それを平手に手渡す。
あの誕生日を祝われていた子どもだと思う。壁際にはロウソクがたちならぶ。小さいテーブルの上にも。
子どもは光の中に立っている。最初、その顔が光の中ににじみ、見えない。
平手が着ているのとほぼ同じ服を着ている。
平手はその子供の前にひざまずき、差し出された花を受け取り、胸にしっかりと抱きかかえる。
踊り場の先の階段が背景に見えているが、ロウソクは途中までしかないようだ。
(5)祭壇のあるような空間から屋上の世界へ
3:40
ここで音楽がとまる。
平手の足音と息遣いだけが聴こえる。
最初、少しよろけるような感じで立ち上がったが、その足取りは徐々に確かになり、階段の最後の数段は駆け上がっていく。
3:52
そして屋上に出る最後のところで、すべての音が消える。そのなかで平手が強い感情を込めながら何事かをいっている。音声はない。
いや、声にならない声というものもこの世の中にはある。だからそれは聞こえてこないことに意味があるかもしれないんだ。
そして屋上。
空は暗く、いたるところにロウソクが灯されている。建物の中にいたすべての人々がここにいるのだろうか。
3:55
左手に赤い花の花束を持ち、平手は小林由依の前に立つ。
音楽が始まり、平手が両手を広げ踊り始める。いったん突き放すような動きから、二人は1回展し、小林が平手の左手を取り、平手を回転させる。そして小林が左腕を平手の背後に回し、抱擁。小林がはじめて平手を抱きしめる。(image 400小林-平手01)
★ここから強い抱擁のシーンが連続する。
4:01
小林との抱擁が解け、(ここでは突き放してはいない)回転する平手を、後ろから渡邉理佐が抱きとめる。(image 401理佐-平手01)
回転しながら理佐は平手を抱えあげるように抱きしめている。その腕には力強さを感じる。平手も理佐を抱きしめる。(image 401理佐-平手02)
(追記・加筆 2019/02/11 このシーン。1:30、2:43で平手を突き放した渡邉理佐が、ここでは平手の後ろから、つまりは渡邉理佐から平手を抱きとめ、強く抱きしめる。
一連の流れを考えると、私にとって、とても力強い、訴求力の強いシーンだ。
正直に言って、この流れをたどったとき、熱いものが込み上げる物があった。そうだったんだ、と。見えてなかったな、と。見えないところに、様々な物語が、溢れるような願いやいろんなものが詰め込まれているんだなと。)
4:04
抱きかかえられた平手が回転しながら着地すると目の前に石森虹花がいる。石森の表情は悲しげに見える。(image 404石森-平手01)
このとき、左後方に佐藤と小池、右後方に、たぶん、齋藤冬優花。そして二人越しのグリーンのワンピースの女性が、あの子どもたちの写真立てのところにいた女性だろう。
その時の平手の表情もまた悲しげだ。(image 404石森ー平手02)
ここでは平手が石森を回転させ、二人は正面から強く抱きしめ合う。(image 404石森ー平手03)
4:11
そして佐藤詩織。(image 411佐藤ー平手01)
佐藤も平手もお互いに両腕を大きく広げ、強く抱きあう。佐藤は泣きそうな顔をしている。私には喜びより、そこに深い悲しみが現れているようにみえる。(image 411佐藤-平手02、03)
後ろで齋藤冬優花がおどる。
4:13
小池美波。
ここは抱き合わないが、二人は手をとりあって踊る。途中で一瞬見える小池の表情は、少し寂しげだが同時に穏やかに微笑んでいるように見える。(413小池-平手01)
この佐藤と小池の表情は、このMVののなかでもっとも印象的なものだと思う。
4:18
小池から離れ、平手は一瞬、男性に少しリフトされたあと、女性の前に。この女性に対して、平手は、その手をいったんははっきりと振り払うが、抱擁する。
この女性は誰なんだろう?よくわからない。
★大人たちの暴力の発動 世界の変貌→「白い羊のふりをする者たち」と「黒い羊」との世界の二分割の完成へ
このあと、重要なシーンが出てくる。
4:21
ここから男性2人、女性1人の「大人たち」が現れる。
最初に二人の男性。
始め、この二人の男性が喧嘩していたのかと思ったけど、よくみるとそうではないらしい。右側の男性は、平手が赤い花をいったん手放す前に、罵声を浴びせていた男性(その時はメガネをかけていた)のようにも見える。どうなんだろうか。
この二人の男性はふたりとも顔を、目を隠している。「顔を持たない大人」として現れる。
平手はその二人の間を突破する。(421大人-平手01、02)
そのようすを少し離れたところの女性がみている。
そして平手は叫びながら、男性の一人に花束を突き出している。
このときの歌詞は「髪の毛を染めろという大人は、何が気に入らない? 反逆の象徴になるとでも思っているのか?」というもの。
その表情は悲しみや怒りよりも「訴え」なのかもしれない。
4:24
しかし大人たちは平手をコンクリートの床に突き倒す。
このとき、平手は赤い花を手放してしまう。
その平手を大人の一人が引きずるように立たせ、突き飛ばす。強く暴力的だ。
顔は怒りで紅潮しているようにすら見える。
背後では人々が抱き合っている。
平手が大人たちに突き飛ばされたその時からみんなが抱き合うようになるわけだ。
★この男性たちは、歌詞との連動を考えれば、ある種の<力>なのだろう。権威や権力といってもいい。顔を見せない、匿名の、あるいは象徴的な、だ。その<力>が平手を打ち付ける瞬間から世界が変貌し始めている。このMVのなかでももっとも暴力的なシーンだ。その力のあるものによる平手への暴力が羊たちの世界を2分割の引き金になっている。
4:26
平手が落とした赤い花を女性が拾い上げ、そして突き飛ばされた平手を受け止める。
このとき、後ろでは人々が抱擁しあっている。
女性は心配そうに平手の方に手をかける。平手はそれに応えて抱きしめる(ここは平手から抱きしめている)。しかし女性の方がその平手を突き放す。(426女性-平手01 02,03,04)
4:30
女性に突き放されたあと、平手は男性のもとに向かう。少し年上のように見える。スーツ姿の大人たちよりは若いが。
平手から両手を広げて抱擁しようとするが、男性は平手を最初から突き放す。(430男性-平手01、02)
そして男性が平手を突き放したことをきっかけ(最後の引き金になる)に、全体が左側に一挙に走り始める。それは誰かと手を取り合いながら。(431世界-平手01)
世界の決定的な変貌が完了した瞬間だ。
★この後ろの人々はあちらこちらで手を取り合っている。許しと和解の世界が繰り広げられている。少なくともいったんはそう見える。(けれども本当は多分、そうではない。→中間総括)
そしてその世界は一方方向に走り去り、平手が一人反対側に走り去る。この瞬間に世界は二分割される。
平手が「黒い羊」としてはじき出され、白かったり黒かったり、いろいろだった羊たちが一斉に「真っ白な羊のふり」をし始めた瞬間だ。
そして歌詞に即して考えるならば、このあとのシーンは「黒い羊」としてはじき出された平手が、自ら「黒い羊」であることを引き受け、覚悟するようになる過程になる。
****************
中間総括
まだ細部について書き込むことになるし、とりあえずのラフスケッチというところだ。
また必要な画像を添付することになると思うが、ここまででも相当の長文になっている。どうしようか?
でもとりあえず、私自身はこの作業で「黒い羊」MVの見え方がかなりかわってきた。
石森虹花、小池美波、小林由依、佐藤詩織、渡邉理佐にはそれぞれの物語がある。MVの中ではっきりした変化がある。さらに、彼女たちと、平手との関係、距離感もかわっていく。
その各々の物語からこのMVを見ることもできる。
私はずっと小池美波の視点から見ていたかもしれない。そこからは、はじき出された平手を見つめながら、その胸の中には渦巻く感情があるように思う。小池はいったんは「真っ白な羊」であることを選んだ。彼女にはそれ以外に生きていく道がなかったかもしれない。しかし…
眼の前で平手が打ちのめされ、苦痛に転げ回り、ただ一人、社会からはじき出され、のたうち回る。そのことがわからないはずがない。その平手の苦痛、呻き、世界からはじき出されることの痛みは小池には強く共振するものであるはずだ。
一体何を思う。あの最後のしーん、平手を見つめている側に立っているとき。左側に全員が走り去る時は一人ひとり誰かと手を取り合っていたけど、最後にはばらばらになっている。お互いに見つめ合っているものも、抱き合っているものもいない。ただ平手を見つめている。その共通性だけで「真っ白の羊たち」は一つの共通項をもっているに過ぎない。お互いに通い合うものはない。
あのシーン、ふりをしているだけだと強く自覚している何人かの「真っ白な羊」がいる。その「羊たち」は、あの中で、見えない表情の下で涙を流しているのかもしれない。平手の姿に、自分の姿に。
そんなことをリアリティをもって感じるくらいに、MVの小池はすごみがあった。
今回の作業の中で一番ハッとしたのは渡邉理佐が屋上で、自分から平手を強く抱擁していることに気がついたこと、大人たちから平手が暴力を受け始めた瞬間に、世界全体が変貌し始めていること。(このあたりのことはtwitterに書いたものがあるけれども、もう少し整理してアップする、と思う)
まぁとりあえず、中間総括ですかね。
************************
加筆履歴
■2019/02/11
・渡邉理佐に関連して 1:30、2:43、4:01のimage×9 と若干のコメント
・2:25 家族団らんのシーンへのコメント
■2019/02/12
・屋上での「3人の大人たち」によって暴力的に突き倒されるシーン、その後の女性の。image
・(3)内部-2 別の この項の最後の部分。