( ^ω^)ブーンが戦い、川 ゚ -゚)クーが護るようです 【第10話 後半】 | オルテガの戦況報告

オルテガの戦況報告

日々のことを適当に書いてる不法投棄場

深い闇の階段を抜けた先は、白だった。

川 ゚ -゚)「これは――」

空間全てが一面白色。
床も壁も天井も、そして空気さえも白く感じるほどだ。

( ´_ゝ`)「なんと奇怪な……これが隠し研究所?」

川 ゚ -゚)「解らん」

とりあえず歩を進める。

川 ゚ -゚)「…………」

( ´_ゝ`)「…………」

川 ゚ -゚)「…………」

( ´_ゝ`)「…………」

川 ゚ -゚)「……見えんな」

( ´_ゝ`)「……あぁ」

歩けど歩けど、白、白、白。
上も下も右も左も白一色だ。

  
ふと、背後を見る。
入り口であった階段が黒い点として見えることから、一応は進んでいるようだ。

( ´_ゝ`)「こういう部屋に入れられた人間は、発狂するって話があるな」

川 ゚ -゚)「そうなのか」

( ´_ゝ`)「うむ」

川 ゚ -゚)「…………」

( ´_ゝ`)「…………」

川 ゚ -゚)「…………」

( ´_ゝ`)(しかし――)

隣で歩くクーに、ふと視線を向ける。

( ´_ゝ`)(まるで人形だな)


  
その視界から読み取れる表情は『無』だ。
遠くを見るような目線――
口は固く閉ざされていて――
揺れる漆黒の髪は、サラリと絹のような美しさを見せる反面、深い闇を感じさせる。
兄者は、隣歩く彼女に少しばかりの恐怖を覚えた。

(;´_ゝ`)(これが、クルト博士の作りし人造人間――)

心で反芻するが、未だに信じられない。
人間のクローンは作れたとしても、人工的に一から作るという話は聞いたことも無かった。
しかし、実際に目の前にそれがいる。

川 ゚ -゚)「……どうした?」

気付けば、彼女がこちらを見ていた。
その黒い瞳が兄者の顔を捉えている。

(;´_ゝ`)「あ、いや……何でもない」

慌てて目を逸らす。
その暗く輝く瞳に吸い込まれそうな錯覚。
人間にも見えるし、人外にも見える。


  
( ´_ゝ`)(いかんな……俺らしくない)

昔から続いてきたクールな自分はどこへ行った?

その心に思うは弟者と共に歩んだ、研究と開発の日々。
懐かしい話だ。
お互い協力し、研磨し、伸び合った。
その弟者の知り合いが彼女――クーだ。

正直、弟者の元へ行きたい。

しかしやるべきことがある。
しかし見るべきことがある。
しかし聞くべきことがある。

クルト博士の意思を確かめたい。
彼が、こんな悪魔のような研究をどんな心境で実行したのか。
何を目的とし、何を目標とし、何を得ようとしたのか。
知る必要がある。
否。
知りたい。

兄者はもう一度決心する。

この件が全て終わったら、改めて弟者と会おう。


  
( ´_ゝ`)「む、扉があるぞ」

前方に見えるは、やはり白い扉。
扉と判断出来たのは、ノブが作り出す影のおかげだった。

二人で扉の前に並ぶ。

川 ゚ -゚)「用意はいいな?」

( ´_ゝ`)「覚悟、じゃないのか?」

川 ゚ -゚)「私は勝つ、もしくは生き残るつもりでここに来ている。
     そのために必要なのは、覚悟ではなく生き残るための用意だ」

( ´_ゝ`)「ふむ……確かにそうかもしれないな」

川 ゚ -゚)「行くぞ」

( ´_ゝ`)「うむ」

ノブに手を掛け、開く。
二人は、内部の空間に消え入るように入っていった。


  
そこは、体育館のような広さを持った空間だった。
先ほどとは間逆の、一面黒一色。
しかし明かりはあるようで、視界は開けている。

物は無かった。
ただ中央に巨大な、培養液を満たした巨大なカプセルが鎮座している。
それを中心とし、様々なチューブやコードが放射線状に伸びていた。

それだけの部屋。
その入り口に、クーと兄者が並ぶようにして立つ。

川 ゚ -゚)「…………」

( ´_ゝ`)「設備が少ないな……完全に完成品用の部屋、か」

兄者がカプセルに向かって歩いていく。
遅れること数瞬、クーも刀に手を添えたまま続く。

川 ゚ -゚)「……アレが、そうなのだろうな」

( ´_ゝ`)「うむ」

アレとは無論、中央に鎮座するカプセルだ。
その中身はよくは見えないが、何かが在る。
おそらくは――


  
「――やっと来たか」

川 ゚ -゚)「!?」

比較的若い男の声が響いた。

(;´_ゝ`)「ど、どこだ?」

前方の兄者が下がりながらも左右を見渡しながら、警戒する。
カプセルの背後から人影が歩み出てくる。

(-_-)「……随分と遅かった。
    もしや、上で色々時間掛けていたかね?」

見たことの無い男だった。
中肉中背……いや、少し痩せ型で白衣を着ている。

兄者を見るが、彼は首を振った。
『VIP』関係者ではないようだ。

川 ゚ -゚)「貴様は……誰だ?」

(-_-)「知らぬ、と言うか?」

( ´_ゝ`)「悪いが俺もアンタを知らないな」

兄者が懐から拳銃を取り出しながら、言葉を紡ぐ。
同時にクーも抜刀。


  
(-_-)「おやおや……殺気立っているね」

川 ゚ -゚)「誰なのだ、貴様は」

(-_-)「誰か、だと? 寂しい……寂しいねぇ」

(;´_ゝ`)「さび、しい……?」

(-_-)「あれだけ片方は私に恨みを持ち
    そしてもう片方は私に追随しておきながら、それか」

川 ゚ -゚)「何が言いたい?」

(-_-)「解らぬか?」

( ´_ゝ`)「生憎だが、解らんね」

(-_-)「では名乗ろう」

男は両手を軽く広げる。

(-_-)「私の名は『リトガー』。
    かつて、クルト博士の元にいた助手だよ」

川 ゚ -゚)「リトガー……助手……?」


  
( ´_ゝ`)「それにしては、随分と若いようだが」

(-_-)「まぁね……これは、かつての私の姿なのだから」

川 ゚ -゚)「かつての?」

(-_-)「今現在の私の姿を見せてあげよう」

途端、キィンという甲高い音。
そしてガラスが割れるような音が耳に響く。
光。
視界を一瞬奪われた二人は、しかし前方――リトガーと名乗る男を見た。
そして同時に驚愕する。

(;´_ゝ`)「なっ……!?」

川;゚ -゚)「貴様は……!?」


  
/ ,' 3「久しぶりじゃの、兄者……そして失敗作」

かつて死んだ男――荒巻。
その老体が、彼らの目の前に現われた。

(;´_ゝ`)「な、何故アンタが生きている……!?
      アンタはジョルジュによって殺されたはずじゃ!?」

兄者が驚愕に眼を見開く。

/ ,' 3「何故か? その答えはこれじゃよ」

右手を前方に突き出す。
その手には銀に光る杖が握られていた。

川;゚ -゚)「11th-Wか!?」

/ ,' 3「そう、『ミシュガルド』がこれの名じゃ。
    能力は――」

発光。
銀の光が、またしても老人を包む。

(-_-)「幻術、だ……ジョルジュが殺したのも幻術の私だよ」

光が消えた中からは、若い男が一人。


  
川 ゚ -゚)「その姿が幻術というわけか……」

(;´_ゝ`)「だが、幻術は所詮幻術だぞ?
      死体は確かに存在したし、それの処理は俺がした。
      そして更に言うなら、アンタの老体は変わらぬはず――」

(-_-)「『OVER ZENITH』――」

川 ゚ -゚)「何?」

(-_-)「11th-W・ミシュガルドの限界突破は、幻術の具現化。
     それによって私は永遠の若さを手に入れている」

(;´_ゝ`)「幻術を具現化、だと?
      ……流石は『限界突破』といったところか。
      一応死体は隅々まで確認したが、それは意味の無いことだったか」

対しリトガーは、飽き飽きしたように首を振った。

(-_-)「そんな話はもう良い。
     それよりも聞きたいことがあるだろう?」

それは意外な言葉。

川 ゚ -゚)「口を割ると言うのか」

(-_-)「あぁ、そうだ」

( ´_ゝ`)「随分と気前がいい……何が目的だ?」


  
(-_-)「目的などありはせん……言うなれば、真実を舌に乗せるは極上の味、だ」

川 ゚ -゚)「つまりはただ喋りたいだけか」

リトガーはクーの言葉を無視し、続ける。

(-_-)「何が聞きたい?」

( ´_ゝ`)「とりあえずは……そのカプセルの中身から聞こうか」

兄者が、中央に鎮座しているカプセルを指差す。
その中身は未だに見えぬが、しかし予想はついている。

(-_-)「君達も予想しているとは思うが……『完成品』だよ」

川 ゚ -゚)「貴様が、クルト博士の研究を引き継いだ、と?」

(-_-)「引き継ぎ、そして改変した」

( ´_ゝ`)「改変……?」

(-_-)「クルト博士の作りし『完成品』は、確かに完成とも呼べる性能を持っている。
     しかし、足りないものがあったのだ」

川 ゚ -゚)「攻撃力があり、そして体力もある……それのどこが不満だった、と?」

(-_-)「一つ問うが、生まれたばかりの獣が狩りを可能とすることが出来ると思うかね?」


  
その台詞に、クーは一つの結論を見出した。

川;゚ -゚)「――『経験』か!」

(-_-)「そう、経験だ。
     たとえ最強の牙を持ち、最大の体力を持っていても、戦う方法を知らねば最強は名乗れまい」

( ´_ゝ`)「しかしクルト博士もその事に気付いていたはずでは?」

(-_-)「彼の目的は『最強の生物を作る』ことだ。
     経験など無くとも、ただ強さを理論的に説明出来ればよかった」

川 ゚ -゚)「つまり、貴様はこの完成品を実用化したい、と?」

(-_-)「まぁ、それもあるが……目的はもっと別だ」

( ´_ゝ`)「何だ」

(-_-)「さてね……そこら辺は語る舌を持ち合わせていない」


  
どうやら語る気は無いらしい。
それを察してか、兄者が異なる質問を投げかける。

( ´_ゝ`)「で、その『経験』とやらを積ませる方法は考えているのか?」

(-_-)「おあつらえ向きのモノをクルト博士は作っていたよ」

川 ゚ -゚)「それは?」

先ほどからこちらが質問ばかりだとは思うが、それを恥じている暇と必要は無きに等しい。
リトガーもそれを咎めることもなく、スラスラと語っていく。

(-_-)「14の指輪」

それは、クルト博士が作り上げた攻撃力強化用の装備。
14の属性・能力・形状をもった指輪で、擬似精神がそれを支配している。
ブーンやジョルジュ、ギコなどが持っているそれを――

川 ゚ -゚)「どうする、つもりなんだ?」

(-_-)「擬似精神は、意外と高度でね。
     己を使役する術者と精神的にリンクしている」

それはつまり

(-_-)「あの14の指輪には、14人の戦闘経験値がたっぷりと入っているわけだよ」


  
指輪に選ばれる根拠は
その者が持つ『心』でもあるが、それとは別に『素質』もある。

( ´_ゝ`)「なるほど……14の指輪を持つ者は必然と強くなる。
      それを利用しようというわけか」

川 ゚ -゚)「だが、どうやって経験を得る?」

(-_-)「喰えば良い」

(;´_ゝ`)「喰う、だと……?」

(-_-)「そのための能力と設定は完了している。
     あとは14の指輪がここへ集うのを待つのみ」

しかし

(-_-)「集ったのは君達だ。
     正直、指輪を持たぬ君達はまったく必要ないのだがね」

川 ゚ -゚)「ならば、何故ここまで通した?」

(-_-)「聞きたいことがあるから、というのはどうかね?」

( ´_ゝ`)「今度はそっちの質問タイムか。
      まぁ、教えてもらった礼として答えられることは答えるが」

(-_-)「紳士的意見をありがとう……私の聞きたいことは一つ」


  
(-_-)「失敗作クーよ……君は何故、生きているのかね?」

川;゚ -゚)「!?」

それは、先刻兄者にも問われた言葉だった。
それを求めにここまで来たのだが、リトガーさえ知らぬということは

(;´_ゝ`)「その真実を知るは、クルト博士本人のみということか……」

もはや知りようの無い情報。

(-_-)「どうしても解らぬのだよ……。
     君には詳しい記憶が無いのかもしれないが、クルト博士は君を異常に可愛がった」

川 ゚ -゚)「博士が……?」

(-_-)「ジョルジュも確かに優秀作ゆえによく見ていたようだが
     失敗作の君を、それ以上に面倒を見ていたのだ」

( ´_ゝ`)「解せないな……本当の娘だと感じていたのか?」

(-_-)「いや、彼が自分の作ったものを愛でることは無かった。
     例外は失敗作のクー、君だけなのだよ」

川 ゚ -゚)「…………」


  
クーは己の右手を見る。
この手を、誰かが握っていた記憶は微かにある。
研究所内を歩いていて、感じていた感覚。
閉じられていた記憶が蘇っていくような感覚。
この右手に残る温かい感触が、それがクルト博士なのだろうか。

川 ゚ -゚)「…………」

ある感情が湧いてくる。
懐かしさであり、寂しさであり、悲しみであり――そして嬉しさ。

彼女の心にある危険な意思が宿ろうとしていたが、知らずに兄者とリトガーは話を続ける。

( ´_ゝ`)「つまり、俺達の疑問もアンタの疑問も解けなかったようだな」

(-_-)「君もクーも知らぬということは……そういうことだろうね」

( ´_ゝ`)「で、どうする? 秘密を知った俺達を始末するか?」

拳銃を握りながら、兄者が油断なく問う。

(-_-)「何のためにここへ通したのかよく考えたまえ。
     私は完成品の餌が欲しいだけなのだよ」

だから

(-_-)「帰りたまえ」


  
(;´_ゝ`)「……何?」

(-_-)「そして14の戦士……いや、私を抜いて13か。
     13の戦士に伝えろ。
     君達が倒すべき、超えるべき敵はここにいるぞ、と」

(;´_ゝ`)「何と……とんでもない奴だな、アンタは」

(-_-)「知的探究心が豊富なだけだよ。
     そして結果をすぐ知りたがる、忍耐力の無さも特徴の一つだ」

( ´_ゝ`)「だが……俺達がここでアンタを殺し、そして完成品を壊すことも可能だが」

(-_-)「やってみるかね?
     私の想像する未来では、君達は一瞬にて肉塊になる様が見えるが」

(;´_ゝ`)(『完成品』……。
      経験無し+自己防衛のために暴れるだけでも、そこまでの強さを誇ると言いたいわけか……)

ここにいても仕方なく、そして攻撃すれば死。
ならば――

( ´_ゝ`)「……解った、指輪の持ち主に伝えよう」

(-_-)「助かるよ」


  
( ´_ゝ`)「だが、一つ言っておこう。
      勝つのはアンタじゃなく……おそらくは指輪の戦士達だ」

(-_-)「そうなるといいね……」

リトガーはそう言うと、背を向け歩く。
どうやら、こちらに興味が無くなったようだ。
そんな彼の背中に声が掛かる。

川 ゚ -゚)「リトガー」

(-_-)「……まだ何かあるのかね」

気だるそうに振り向くリトガー。
その彼に、クーは淡々と告げていく。

川 ゚ -゚)「一つ、頼みがあるんだ」

(-_-)「何だ?」

クーは静かな口調で『それ』を告げた。
耳に入れた兄者が、驚きに目を見開きながら

(;´_ゝ`)「ク、クー!? お前何を言ってるのか解ってるのか!?」

川 ゚ -゚)「あぁ、悪いが……私は――」


  
一息。

そして、彼女は『それ』を再度口にした。









川 ゚ -゚)「ここに――残りたい」




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