みなさん、こんにちは。
とし総子です。
 
私、すごく好きな物語のかたちがあります。
 
恋愛、友愛、親子愛、そういった愛の分別を指定せず、
生まれ変わっては出会って灯火のような時間過ごしていく、
という関係が描かれているもの
(恩田陸先生の『ライオンハート』とか)
が、たまらなく好きなんです。
 
その関係がどんなに様々に散らばっていっても、
共通する温度のような、
色味のようなものをもっていて、
お互い、何度も出会っているなんて知らなくてもいいし、
知っていてもいい。
ただ出会い、かけがえのない存在になり、
そして別れが、、、
という。
 
そんな好きなかたちの、雰囲気の物語を読みました。
 
よしながふみ先生の『環と周』です。
 

 

 
 
よしなが先生の漫画は、
昔のBLものから、
単発の男女の関係のお話、
『大奥』や『昨日何食べた?』も大好きです。
 
そんな先生の新作が、これまた私の好きな漫画で単純にめちゃくちゃ嬉しい。
 
お話は、
上で書いた通り、
色んな時代(といっても、この作品はけっこう短い時代の中のお話です。ここがはじまりなのかぁ、というお話はありますが、それが本当にはじまりなのか、もしかしたらこれより前にだって、ふたりは手を取り合ってきたのかもしれない、って考えてしまいました。それくらい、自然に、生きていたら隣にいくよ、という二人の空気がとても好きです)
に生きた“環”と“周”を描いています。
 
一作目は、
娘が学友だと思っていた女の子とキスしている場面をみてしまった母親、
と、それを帰ってきてから聞かされた父親の場面からはじまります。
 
母親は、
どんな関係だって愛は尊いって分かっているけれど、
自分の娘のことになると「はい、そうですか」となれないと言い、
それでも父親へ向かっては
「駄目よ、この後部屋にいったりしちゃ」
なんて言い含めておきます。
 
「わかったよ」と言いながらも、父親は洗濯物を渡すのを口実に娘の部屋へ。
だけど言い出せません。
「実はお父さんも同性を好きだったことがあるんだ、、、」
なんて。
 
このお話では、
そんな家族のことが描かれます。
 
一作目だけでは全然まさかこんな話になっていくなんて、というくらい“環”も“周”も主眼に入りません。
 
もしかしてここからこの家族の悲喜こもごもが、、、なんていう感じの一作目。
 
そこから、
二話目では女学校で同級生として出会ったレストランの娘の“周”と、
華族の娘で、背の高いことをコンプレックスに思っている“環”の、あの当時の女の人生を支え合った親友のお話。
 
三話目は、
病気で仕事を辞め、
仲のいい大家さんのいるアパートで最後の日々を過ごす“環”と、
同じアパートで暮らす男の子の“周”の交流のお話。
 
四話目は、
戦争終わりの兵隊さんで、家に帰ったら妻が出て行ってしまっていた“周”と、
戦時中班長をしていた“環”の、復興に向かう時代の中での邂逅のお話。
 
最終話では、
時代が離れ、
仇討をするために息子と追いかけてきた“周”と、
周と幼馴染である侍の“環”の愛と憎しみのお話。
 
そして__
 

 

 

一冊でいろんな愛の物語が読め、

その上一冊を通してのふたりの魂の結びつきも読むことができる一冊でした。