と運命のダイヤル
2023年作品/アメリカ/154分
監督 ジェームズ・マンゴールド
出演 ハリソン・フォード、マッツ・ミケルセン
2023年7月2日(日)、TOHOシネマズ府中のスクリーン2で、8時40分の回を観賞しました。
考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズの前にヘレナという女性が現れ、インディが若き日に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」の話を持ち掛ける。それは人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝であり、その「運命のダイヤル」を巡ってインディは、因縁の宿敵である元ナチスの科学者フォラーを相手に、全世界を股にかけた争奪戦を繰り広げることとなる(以上、映画.comからの引用)、という物語です。
ラストシーンでは自分のこれまでの人生もフラッシュバックして、最後は涙が出てきて、〝ヒックヒック〟としゃくり上げてしまいました。シリーズをリアルタイムで劇場で観てきた身には、センチメンタルにもなろうというものですが、色んなところでこれまでの名場面をあれこれと思い出して(いい意味)仕方が無かったですね。これは私には大納得のクロージングでした。
インディ・ジョーンズ博士の奇想天外、摩訶不思議な大冒険!
「レイダース/失われた聖櫃〈アーク〉(81)」が公開された1981年の冬、私は父と弟の三人で大阪難波の〝千日前スバル座〟でこれを観賞。レイダースとは〝襲撃者たち〟のことで、要はアークの争奪戦ということ。製作ルーカス、監督スピルバーグに加えて、脚本がローレンス・キャスダンなんですよね。もう大興奮で、その後もサントラや廉価版ビデオを購入しました。
「インディ・ジョーンズと魔宮の伝説(84)」は大阪難波の〝南街劇場〟で観賞。公開前にはスピルバーグ自身が予告に登場し、ファンの期待を煽りました。前作は日本では大ヒットまで行かなかったと記憶。インディの名前が知れ渡りファンが付いたのは本作からだったかと。超絶面白かったです。残酷シーンが多い本作をもってNHKではレーティング問題を報道してました。
「インディ・ジョーンズと最後の聖戦(89)」は広島市の〝東宝宝塚〟で観賞。この時点で三部作の最後の作品ということと、油がのり復活したショーン・コネリーが出演するというので期待が高まりました。もう文句のつけようがない作品で、考古学者インディアナ・ジョーンズ博士の摩訶不思議な大冒険の最後を飾るに相応しいクライマックスからのエンディングの感動。
「インディ・ジョーンズとクリスタルスカルの王国(08)」は大阪岸和田市の〝ユナイテッドシネマ〟で、弟とママさんの三人で観賞。これはファンの期待に応えての同窓会的作品。時代設定を変えSF要素が追加されたことへ否定的な見解が多かったです。私はそこはともかく、新キャラやアクションに精彩を欠き、作品の出来自体がもう一つでこれが最後かと思うとガッカリ。
▼強い女性が登場するのもシリーズの特徴ですよね
昔の大冒険活劇、クリフハンガーの世界を現代に復活
インディアナ・ジョーンズのシリーズを一作一作、感想を書いていくとそれだけでとんでもないボリュームになりそうなので、ざっとまとめておきました。このシリーズは娘たちもDVDで子供の頃に観てますが、〝怖い〟という印象を持っているよう。確かに残酷な場面がつきもので、すぐ人が射殺されたり、特撮とはいえ〝顔面崩壊〟とか当たり前のようにありますものね。
もともとジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグが、子供の頃に観たという冒険活劇の世界を現代に復活させたいということでスタートとしたシリーズですが、当時この二人が一緒に映画を創るということの凄さは、いまの人たちが活字で読んでもピンとこないかもしれません。とにかく二人の名前が並んだチラシやポスターに、若い映画ファンなら熱狂したはず。
〝クリフハンガー〟という言葉もこの映画で覚えました。主人公が崖に宙吊りになった状態で〝運命やいかに?〟と次作に持ち越されるタイプのドラマ。昔は翌週にはその結果が分かったのですが、それを2時間のなかで次々繰り返していくのですね。なので、ちょっとそこはコメディタッチになってしまうのですが、その緊張と緩和が見事にコントロールされたシリーズでした。
なお、このシリーズ、各作品のテイストが少しずつ異なっていて、〝宝探し〟という基本的なコンセプトを踏襲しながらも決してマンネリだという印象を持たせないところの多様なアイデア、展開を見せる脚本が優れていると感じます。二作目を女と子連れ珍道中に、、三作目を父親との和解のドラマにするなど、これはプロデューサーとしてのルーカスのセンスだったのかな?
▼マッツ・ミケルセン、贅沢な配役で存在感あります
シリーズ総決算としてこれ以上ない見事なフィナーレ
さて「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」ですが、その前にもうひとこと、このシリーズの成功の大きな要因のひとつとしてインディを演じたハリソン・フォードに触れておかねば。インディの良さというのは、決して正義感だけの善人でもなければ、根っからの悪(ワル)でもないという複雑な一面を持っているところにあると思います。ニヒリズムというのですか。
それを演じるのにハリソン・フォード、もう少し言うと同じ時期に「スター・ウォーズ」のオンボロ船のならず者の船長ハン・ソロを演じていた彼のキャラがピッタリだったというのは幸運だったと思います。ルーカスとスピルバーグが「帝国の逆襲」をみて、〝インディがいた〟と声を揃えて言ったというエピソードもありますよね。これはフォードの映画でもあるのです。
ハリソン・フォードがインディアナ・ジョーンズを演じることは「運命のダイヤル」をもって最後となり、彼がいなければこのシリーズは成り立たないでしょうから、このあとどんなスピンオフ作品が、何作性懲りも無く創られようとも、実質的にこれが最終作です。なので、〝ハリソン・フォードさん、これまで本当にお疲れさまでした〟という気持ちが湧いてくる作品でした。
ジェームズ・マンゴールド監督は、過去作の名場面を彷彿とさせる見せ場をいくつも展開しながら、監督が交代していることを感じさせないスピルバーグ的な演出で、見事な仕事ぶりをしています。細かく書くと時間が足りずやめますが、さすが「フォードVSフェラーリ(19)」を手がけただけあり、前作に不満を持っていた多くのシリーズのファンも溜飲を下げたのではと思います。
▼光と踊る影の演出もこのシリーズの特徴ですよね
今回、シリーズお馴染みのオープニングの冒険では、第二次世界大戦中のインディとナチスドイツとの秘宝(ロンギヌスの槍)争奪戦が描かれるのですが、これ単に〝またナチスが敵なの?〟というわけじゃなくて、クライマックスとなる展開までみごとに繋がっていくんですよね。映画的、視覚的トリックに驚きました。お話はネタバレできないのでいっさい書きません。
インディ・ジョーンズの〝レイダース・マーチ〟を聴きながら、場内が明るくなるまで席を立てなかったです。音楽は、ジョン・ウィリアムズが担当しているのですが、他のかたのクレジットがないところを見ると楽曲はすべて彼が手がけているのでしょうね。「フェイブルマンズ(22)」で引退したのかと思ってましたが、このシリーズはジョン・ウィリアムズでなければ!
ユーモアがもう少しあれば、2時間半は長すぎるなど、確かにそうなんですが、どうでもよくなるくらい良かったです。時間が合えばもう一度観に行きたいです。
トシのオススメ度: 5
インディ・ジョーンズ/運命のダイヤル、の詳細はこちら: 公式サイト
この項、終わり。