「アフリカの女王」とわたし(映画関連書籍)
または、ボギーとバコール、そしてジョン・ヒューストン。はじめてやってきたアフリカでわたしの頭はどうにかなってしまいそうだった。
著者 キャサリン・ヘプバーン
出版 文春文庫
価格 650円(本体631円)
訳 芝山幹郎
ハンフリー・ボガートとローレン・バコールの黄金カップル。豪放で繊細なジョン・ヒューストン。借金に追いまくられるサム・スピーゲル。そして「わたし」キャサリン・ヘプバーン。勇気りんりん、われらはアフリカへ乗りこんだのだが…。「アフリカの女王」撮影の顛末をあきれるほど率直に、そして愛をこめて綴った傑作回想記(裏表紙の説明より)、という内容です。
先日、「アフリカの女王」を鑑賞しましたので、たまたまネットで見つけたこちらを購入して早速読んでみました。原題が〝ザ・メイキング・オブ・アフリカン・クィーン〟で、このほうが分かりやすいですね。多くの作品に関わった名女優が、そのひとつについての体験を思い出し、綴ろうというのですから、よほど強く印象に残っている作品ということなのでしょうね。
それもそのはずで、アフリカロケを本格的に敢行した映画というのは当時はほぼなかったそうなのです。訳者の芝山幹郎さんによる文庫本の後書き(この後書きがまた大変面白いのですが)には、ハリウッド映画としては「アフリカの女王」の前には「トレイダ・ホーン(31)」と「キング・ソロモン(50)」の二本しか無かったそうです。それなりの覚悟が必要だったのかと。
主な人物としては日本語タイトルのとおりで、わたし(ケイティこと、キャサリン・ヘプバーン、当時44歳)と、ボガート(当時、52歳)、その四番目の夫人のベティ(ローレン・バコール、当時27歳)、監督のジョン・ヒューストン(当時、45歳)。ローレン・バコールがひとり若いですね!アフリカに渡り、撮影中、ずっとボガートのお世話をしっかりされていたそう。
ケイティのシャワーやトイレ(大きいほうも)など〝水〟についての苦労話、ハエや蟻の大群に襲われたこと、現地の人たちとの交流。ジョンが撮影よりも、暇さえあればハンティングをしていたこと。ボガートが酒ばかり飲んでいたことやカツラ!をすることに不機嫌だったこと。そして〝アフリカの女王〟が沈んだことなど、映画以上に面白いエピソードがいっぱいです。
また、撮影時の貴重なプライベート写真が充実していて、これを見ているだけでも楽しいです。これを読んでいて、映画の醍醐味ってロケーションによる実写撮影だなー、って改めて思いました。CGになって得たものもありますが、失ったものも大きいように思うのですよね。ここでも書かれているように、プロデューサーは資金繰りとの戦いで大変ではあるんでしょうけどね。
例えば、デビッド・リーンの数々の映画がCGで撮られていたら、ここまで心を打たないのではないでしょうかね。
この項、終わり。