女の中にいる他人(DVD): 成瀬巳喜男 | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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女の中にいる他人(DVD)

 

1966年作品/日本/102分

監督 成瀬巳喜男

出演 小林桂樹、新珠三千代、三橋達也

 

2022年1月10日(月)の午後、自宅で鑑賞しました。

 

杉本は友人の田代と赤坂で飲んだ帰りに、妻さゆりが死んだことを知らされる。赤坂のアパートで、情事の末に絞殺されたのだった。容疑者も見つからず事件が風化しようとしていたころ、情緒不安定に陥っていた田代が妻の雅子に告白した。自分とさゆりが不倫関係にあったこと、そしてセックスの興奮を高めるために首を絞め、誤ってさゆりを殺してしまったことを(以上、yahoo映画からの引用)、という物語です。

 

成瀬巳喜男監督の晩年の作品になります。めずらしくエドワード・アタイヤの「細い線」という海外ミステリーが原作になっています(脚本は井手俊郎氏)。私は観ていませんが、この映画はその後も何度かテレビドラマ化されていて、最近では2017年にNHKのBSプレミアムで瀬戸朝香さん、尾美としのりさん、石黒賢さんというキャスティングで放映されたんですね。
 

 

《感想です》


  • 成瀬巳喜男監督による心理描写が冴えるサスペンスです
  • 男も女も他人が知らない自分を抱えて生きているんですね
  • これも家族のお話で、少し不思議なハッピーエンドでした

 

「女の中にいる他人」というタイトルなのですが、ドラマはずっと男性の目線で描かれていきます。杉本という真面目で朴訥な中年サラリーマンが、行きつけのバーにいたところ、20年来の親友の田代と出くわし、そこで彼の妻さゆりが何者かによってベッドで絞殺されたことを知らされます。警察の捜査にも関わらず犯人は見つからず時間が過ぎて…、というドラマです。

 

こちら〝犯人は誰か〟という推理ドラマではないのでネタバレではないと思いますが、実は真犯人は杉本なんですね。彼は誤って不倫中のさゆりを殺してしまうのですが、そのことを打ち明けられないまま、ずっと良心の呵責に耐え切れずにいて神経を病んでいくことになります。彼には雅子という妻と一男一女の幼い子供がいるのですが、いったいこの家族はどうなるのか?

 

ということで、ドラマはサスペンスの方向で進んでいきます。この家族の描き方が成瀬監督らしいところで、年老いた母親との同居生活の様子や、二人の子供たちとの家族団らん様子が1966年の雰囲気を見事に切り取っていました。子供たちが休日に箱根へドライブに行くか、遊園地へ行くかで揉めるところや、テレビドラマ(殺人場面)が映るところなど時代を感じさせます。

 

そして、成瀬監督が他作品でも見せる〝稲妻〟や〝停電〟といったハプニングの使い方が巧みでした。陰影が効いた画面が人物の複雑な精神状態を写しだし、サスペンスを高めます。なお、映画は杉本にフォーカスし進んでいくのですが、これがクライマックスで突然雰囲気が変わり〝女の中にいる他人〟の意味が分かる仕掛けになっています。この転調の仕方が見事でした。

 

表玄関から出ていこうとする杉本を裏玄関から送り出してあげよう、というラストの雅子の鬼気迫る独白にドキリとさせられました。何と言いますか、この1960年代において、不倫だけでなく異常セックスに興奮を覚える男女や、精神薄弱状態で追い込まれていく男の姿などを画面に映し出すというチャレンジ精神を感じさせる成瀬巳喜男監督の意欲作でもあるかと思います。

 

これは一応ハッピーエンドでしょうね。

杉本とさゆりが惹かれあった理由、さらには田代とさゆりとの冷めた関係について描ききれてない感はありますが、大変面白かったです。刺激的な内容から今もリメイクされる理由が分かる気がしますねー。

 

 

 

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女の中にいる他人、の詳細はこちら: 映画.com

 

 

この項、終わり。