フリー・ガイ | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

フリー・ガイ


2021年作品/アメリカ/115分

監督 ショーン・レビ

出演 ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー


2021年9月11日(土)、新宿ピカデリーのシアター3で、10時25分の回を鑑賞しました。


ルール無用のオンライン参加型アクションゲーム「フリー・シティ」。銀行の窓口係として強盗に襲われる毎日を繰り返していたガイは、謎の女性モロトフ・ガールとの出会いをきっかけに、退屈な日常に疑問を抱きはじめる。ついに強盗に反撃した彼は、この世界はビデオゲームの中で、自分はそのモブキャラだと気づく。新しい自分に生まれ変わることを決意したガイは、ゲーム内のプログラムや設定を無視して勝手に平和を守り始める(以上、映画.comから引用)、という物語です。


こちらは公開から時間が経っており既に多くの方がレビューをアップされていますが、評判がいいですよね。なので私もあまり多くの情報に触れないようにしつつ、ようやく観てまいりました。こういうタイプの映画は好みにもよると思いますが、私は面白かったです。楽しめました。単にエンタテインメントだけじゃなく、その向こうに色々と考えさせられることもあり、元気をもらえる内容でした。観ておいて良かったです。


毎日、決められた役割を果たすこと


この映画は、仮想現実のなかでアバターを操るゲームのなかの世界と、そのゲームを創り出したプログラマーのリアルな現実の世界の話で構成されているのですが、〝そういう二つの世界がありますよー〟という説明を抜きにしてドラマが始まり進んでいきます。だから、目の前で起きている物騒な世界が何で、主人公と思われる青いシャツにカーキ色のチノパンを履く男が何ものなのかが分からないところから引き込まれますよ。


このガイ(男、という名前の男)は、朝起きたら金魚に餌をやり、青いシャツを着て(他の色のシャツがクローゼットにない)、そしてコーヒーショップでお決まりの入れ立ての火傷しそうな熱いコーヒーを買って、勤務先の銀行へ行きます。そして銀行で強盗に襲われるのですが、何故か驚く様子が全くない。それもそのはず、彼にとっては毎日がこの繰り返しなのです。なぜこの街は、また彼は同じ毎日を繰り返しているのか?


「フリー・ガイ」はディズニー映画で、このあたりの展開は映像が実写でもアニメ映画の手触りを感じさせるものになっています。そこの感覚が面白いです。なせなら、この街は、そしてこの街に出てくる人たちは本当の人間ではなくゲームの中に存在するキャラだからです。しかも実際の人間が操るアバターではなく、予めゲームの世界に存在するモブキャラと言われるキャラ。なのでプログラムされた言動しかできないのです。


▼サングラスをかけるとそこに未知の世界が広がります


平和を守ることでレベルをアップする

しかし、もしもこのモブキャラたちが自分の意思を持って動くようになったら?というのがこの映画の発想のユニークかところかと思います。毎日同じことを繰り返すことに何の疑問も持っていない青いシャツのガイ。彼には、毎朝スーツにネクタイで、満員の通勤電車に乗って会社に行き、デスクワークをするような現実の管理社会で働いている人たちの日常が重なって見えてきたりもして、なかなか切なかったりもします。

そのガイがある日、ひとりの女性モロトフに恋をしたことから彼の世界は一変します。ガイの世界ではサングラスをかけているものと、そうでないものとでは目に見えている世界が異なることが分かります。なぜならサングラスをしている人たちはプレーヤーなんですね。そして、この街で暴力を振るうことで強さのレベルを上げているのです。モロトフはガイにサングラスを渡し、レベルが100を超えたら会うことを約束します。

ここでガイが、弱者を犯罪者たちから守ることでレベルを上げていくようになり、それを繰り返すうちに街のヒーローになっていくというところが面白いです。あまりに残酷で残忍な刺激に満ち溢れた今のゲーム世界への批判のようでもあり、こういう形で暴力がなくなり世界が平和になっていくといいよね、というメッセージとも受け取れます。それを説教臭くなく、面白おかしくやってしまう青いシャツの男が最高に愉快。

▼ガイとモロトフは協力して街の秘密を探ろうとします


自ら変わるための活力を与えてくれる


一方でこの行為が引き金になり、会社の利益のことしか考えていない拝金主義の社長が、仮想現実世界〝フリー・シティ〟を閉じて〝フリー・シティ2〟に移行させようとします。実はこの社長の行動には裏があるのですが、それを阻止しようと〝フリー・シティ〟の開発者キーズと彼の恋人ミリーが活躍します。実はこのミリーのアバターがガイが恋に落ちるモロトフなのですが、ここで現実と仮想現実世界が重なっていきます。


ここからの展開が最高に笑えて、スリリングで、またちょっと感動的なのですが、そこはぜひ映画をご覧になっていただきたいです。仮想現実の世界を生きるガイがどんどん人間らしくなっていくところが良かったです。ガイとモロトフのデートシーンやキスシーンなど、人を恋しくなる瞬間が見事に切り取られていました。また、現実世界でのラブストーリーもきちんと絡んできて、なかなかよく考えられたいいドラマでした。


人が本当に見たいのは、酷い暴力や殺戮シーンじゃなくて、人と人との温かい繋がりであり、コミュニケーション。もっと心をときめかせたり、豊かにしてもらえるものをこそ求めているのでは?、と訴えかけてくる作品でした。そして、人はもっと自由であるべき、自由になろうよ、というメッセージ。グラスシーリングを打ち破ることを観客に促し、〝自ら変わる〟ための活力を与えてくれる元気印の作品でもありました。


▼キーズとミリーは悪徳社長が隠した秘密に迫りますが


ライアン・レイノルズの演じた青いシャツの男ガイのキャラクターが良かったです。あとディズニー映画ではありますが、20世紀フォックスやマーベルを傘下に収めたことによる面白さも味わえます。モロトフとミリーを演じたジョディ・カマーは、これからの作品をみるとリドリー・スコットの新作「最後の決闘裁判」が控えていて注目株でしょうか。もう公開館数が少なくなっているようですが、機会がありましたらぜひご覧ください。


この映画を観ていて、かなり昔に楽しんだ「シムシティ」というシミュレーションゲームを久しぶりに思い出してしまいました。


トシのオススメ度:4

5 必見です!!
4 お薦めです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません


フリー・ガイ、の詳細はこちら:映画.com


この項、終わり。