るろうに剣心 最終章 The Beginning | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

るろうに剣心 最終章 The Beginning


2021年作品/日本/137分
監督 大友啓史
出演 佐藤健、有村架純、高橋一生
 
2021年6月19日(土)、TOHOシネマズ府中のスクリーン5で、13時30分の回を鑑賞しました。

剣心に復讐するべく東京を総攻撃した上海マフィアの頭目・縁との壮絶な戦い。その理由は、剣心が「人斬り抜刀斎」と恐れられていた幕末へとさかのぼり、剣心が自らの手で斬殺してしまった妻・雪代巴の存在、そして十字傷の謎へと繋がっていく(以上、映画.comからの引用)という物語です。

ようやく観てまいりました「るろうに剣心」の最終章、その後編〝The Beginning 〟。前編の〝The Final〟が公開された途端、コロナ禍での三回目の緊急事態宣言で東京都を含めた都市圏では映画館が休業してしまうことに。まさに出鼻を挫かれた状態でしたが、興行成績はどんな感じだったのでしょう。〝The Final〟がそういうなかでの〝The Beginning 〟。空いてるかな?と思ったら、(座席半数のなかで)満席でした。

シリーズ締め括りというより番外編

今回は「The Final」のなかで断片的に挟みこまれていた剣心と雪代巴という女性に関するお話にフォーカスして、その全容が描かれていきます。雪代巴はかつての剣心の妻で、彼は彼女を訳あって殺してしまったらしいのですね。その巴の弟の復讐劇が「The Final」の骨格である以上、そこに全く触れないというわけにはいかなかったのでしょうが、わざわざこれをまた一本の作品にする必要があるのかな?と思ったのですよね。

でも鑑賞し終わってみると、これは一本の作品として独立させて作って正解だったなと感じました。まず「The Final」だけじゃなく、これまでのどの「るろうに剣心」ともトーンが違っているんですね。幕末、剣心がまだ〝人斬り抜刀斎〟として徳川幕府から恐れられていた頃の、正統派の時代劇になっていて、これまでのように奇想天外な敵や武器なんかが出てくるヒーローものとは違って、内容がかなりシリアスなんですね。

そして、その人斬り抜刀斎が頬に十字傷を持つようになった理由。そして〝不殺の誓い〟をたて、〝逆刃刀〟という人を切れない刀を身につけるようになったナゾを、驚くほどメチャクチャ丁寧に描いていきます。そこには本シリーズを含めた漫画コミックを原作に持つ映画にはありがちな有り得ない破天荒さや、コミカルさは影を潜めていました。これはシリーズの最後を締め括るというよりは、別枠の番外編という印象でした。

▼愛は剣心を強くするのか、あるいは弱くするのか

燃えよ剣心、激動の幕末動乱期もの

今回のドラマでは、長州藩の桂小五郎や高杉晋作が登場しています。そして、幕末の京都を舞台にして、1868年、京都に火を放ち混乱に乗じて帝を奪取しようと画策する長州および土佐藩の尊皇の志士たちの会合を、新選組隊士が襲撃する〝池田屋騒動〟(「蒲田行進曲」の階段落ちで有名ですかね)が描かれていたりします。ここに長州藩士を救うために剣心が駆けつけるのですが、その途中、彼は沖田総司に出くわすのです。

剣心と天才剣士と言われた沖田総司との一騎打ち。これは、誰もが夢想する戦いですよね。今回の「The Beginning 」はドラマが中心で剣戟アクションはかなり控えめなのですが、ここはエモーションが上がります。この戦いの結果は想像したとおりではありましたが、これを映像で見せられるというのは嬉しいですよね。新選組としては、沖田総司と剣心と因縁の深い関係にある斎藤一が中心でしたが、土方歳三も見たかったですね。

剣心は、平和な時代づくりのためにと桂小五郎から言われ、刺客として使われているのですが、もともとは長州藩の志士のひとりだったのですね。そして相手がいいも悪いもない。刀を持っているやつらは殺すという過激派で、京都を血に染めて市井を震撼させています。この辺りは、土佐藩の武市半平太と岡田以蔵の関係を思い起こさせます。そう言えば、大友啓史監督の大河ドラマ「龍馬伝」で岡田以蔵を演じたのが佐藤健さんでした。

▼目にも見えない速さで沖田総司が剣心に迫ります

愛の力は剣より強し、凛とした恋愛劇

触ると切られるような、そういう剣心の尖った心を癒すのが雪代巴なのですが、剣心が居酒屋で出会った彼女には実は隠された過去があって、というストーリーです。そのあたりは多分ご覧になった方々は察しがついたのではないかと思います。そこは分かったうえで、そのことにもし剣心が気づいたときにこの二人はどうなるのだろうか?ということに関心がいくのですね。この剣心と雪代巴の佇まいが、素晴らしかったです。

二人が食事をしている時の背筋が真っ直ぐに張ったところ。巴が文字を書く時の姿勢や繊細な筆使い。こんな姿が、二人が本来持つ誠実さや実直な生き方を体現しているかのようでした。観ていて実に気持ちがいい、清々しいのです。そして、ほとんど会話らしい会話もなく、表情も大きく変わらない二人ですが、それでも徐々に距離を縮めていくところが分かるのですよね。ここが本作の一番の見どころではないかと思います。

この二人の顛末は分かっていてもぜひ劇場でご確認をいただきたいのですが、最後は愛の力は剣よりも強いのだということを分からせてくれます。そこの場面では目頭が熱くなりました。剣心最大のピンチという場面でしたが、「The Final」で繰り返しインサートされていた巴の死のシーンの裏にあった意味を知ったときは涙が出ました。そして巴がつけていた日記。これが十数年後の「The Final」へと再び繋がっていくのですね。

▼二人の穏やかな生活の日々は永遠には続きません

佐藤健さんと有村架純さん、この二人のドラマが良かったですね。アクション映画としての面白さももちろんありますが、今回はこの二人の人間ドラマが中心でした。二人だけの生活を始めようとするところで、〝形だけでなく〟身も心も本当の夫婦になっていくところ、見事に演じておられたと思います。みなさん、お書きのようにこの映画を観ると、再びシリーズ一作目を観たくなるという。まんまと乗せられてしまいそう。

日本のエンタテインメントとして圧倒的な面白さ。しかし、2時間15分はちょっと長すぎたかもしれません。筋が読めるだけに、途中単調で中弛み。これはシリーズの他の作品と違って、話を絞り込んでもっとコンパクトな小品で行ったほうが良かったんじゃないかな、と感じました。あと、クライマックスなんで仕方ないかもしれませんが、剣心になかなかトドメをささない影の軍団の親分の描き方が残念でしたかねー。

「るろうに剣心」、私のオススメ度は普通ですが、現代の娯楽時代劇として面白かったです。

トシのオススメ度: 3
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4 お薦めです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません

この項、終わり。