天井桟敷の人々(4K修復版) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

天井桟敷の人々(4K修復版)

 
1945年作品/フランス/190分
監督 マルセル・カルネ
出演 アルレッティ、ジャン=ルイ・バロー
 
2021年1月2日(土)、下高井戸シネマで12時の回を鑑賞しました。
 

第一部: 犯罪大通り/101分

1840年代、劇場が立ち並ぶパリの犯罪大通り。パントマイム師のバチストは、女芸人ガランスを偶然助け、彼女に恋心を抱く。ガランスは俳優ルメートルや犯罪詩人ラスネールにも思いを寄せられていたが、誰のものにもならない。そこへ、同じくガランスにひかれる富豪のモントレー伯爵が現れる(以上、映画.comからの抜粋)、という物語です。
 
 

第二部: 白い男/89分

数年後、座長の娘ナタリーとの間に一児をもうけたバチストは、フュナンビュル座の看板俳優として舞台に立っていた。そんなバチストを毎夜お忍びで見に来る女性がいたが、彼女こそ伯爵と一緒になったガランスだった。ガランスが訪れていることを聞いたバチストは、ある時、居ても立っても居られずに舞台を抜け出すが(以上、映画.comからの抜粋)、という物語です。

 

本年の初鑑賞は地元の下高井戸シネマにてこちら「天井桟敷の人々」。私が学生の頃から名作の誉が高く、キネマ旬報の〝1980年日本公開外国映画史上ベストワン〟になった作品。〝いつかは鑑賞〟をとずっと考えていたのです。本作は1945年作品(日本公開1952年)で、今から40年前に選出に携わられた映画評論家や映画関係者の方々が若かりし頃にご覧になられたことになるのですね。今、同じ投票をしたらどんな結果に?

《感想です》

というわけで映画評論家の皆様がベストに推されるくらいなのできっと格調高い硬い作品なのかと身構えておりましたら、こちら基本的に分かりやすいラブストーリーでした。ナイーヴで純粋な心を持つパントマイム師のバチストが美しい女芸人ガランスと出会い恋に落ちるのですが、彼はいま一歩のところで勇気を持って告白できず、彼女は紆余曲折のうえ、意に沿わない形で金と権力を持った伯爵のものとなるのです。

ここまでが第一部で、第二部では座長の娘ナタリーと結婚して一人息子をもうけたバチストと、伯爵モントレーのもとで生活にはなに不自由はないが愛の無い生活をおくるガランスとの再度の出会いを描きます。モントレー伯爵と結婚したガランスにいまだに思いを寄せるバチストですが、他にもキザな役者のルメートル、代筆業の裏で犯罪を繰り返すラスネールが彼女に魅了されていて、こういう輩が絡んでの人間模様がみどころに。

途中途中で挟まれるバチストによる見事なパントマイムによる演劇の内容が、この映画の内容と重なる入れ子構造になっていて、彼の心境を代弁しているかのようです。これが通俗的になりがちなメロドラマに芸術的な香りを与えています。また恋愛や人生に関する哲学的な素晴らしいセリフが全編に溢れていて、そのセリフを発する人物への演出はリアリズムを追求する映画から離れて、作品は全体的にも演劇的な印象を与えます。

一方で〝犯罪大通り〟と呼ばれるパリの演劇場が集まる大通りを埋め尽くす群衆を撮影したモブシーンは、セリフのない映画ならではの表現として圧巻としかいいようがありません。このなかで描かれるバチストとガランスが繰り広げるクライマックスに息を呑みました。このあと二人はどうなったのでしょうか?ビターで深い余韻を残す名シーンでした。本作はマルセル・カルネ監督がドイツ占領下のフランスで3年以上かけて完成させたらしいです。 

結果として、舞台から遠い場所にある天井桟敷から観劇をする一般大衆にも大変分かりやすいラブストーリーでありながら、見事な構成と名セリフ、そしてキャストの演技、目を見張る撮影をもって人間の喜怒哀楽を描いた芸術的な作品にもなっているように思いました。日本では1952年の公開になりますが、第二次世界大戦が終わり経済復興を遂げようとするなかでこういう作品が人々の心をとらえ支持された気持ちが分かる気がします。
 
さすがに多くの識者から選ばれる名作だと思います。いわゆる古典ではありますが、〝人間を描いている〟ので時代を超えて色褪せない魅力があります。私は映画館で鑑賞しましたが、今ならAmazon Primeに入会していますと無料で鑑賞できるようです!
 

トシのオススメ度: 4

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1 私はオススメしません