2019年映画ベスト10 | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

2019年映画ベスト10

いつもだと年末年始は私の故郷の大阪とママさんの実家のある広島で過ごすため、マイカーを走らせているのですが、今年は帰省しないため東京でゆっくりしております。家族だけで迎えるお正月も本当に久しぶりです。さて、一年を振り返って総括する映画ファン恒例行事の〝今年のベスト10〟を私も。

 

タイトル横の数字は鑑賞直後の〝トシのオススメ度〟です。ご覧のとおり、鑑賞後に反芻するなかで、必ずしも「5:必見」ばかりが上位に来ているわけではありませんことをお断りさせていただきます。最終的には自分の好み、〝合うか、合わないか〟で決めていまのでご了承ください。

 

<日本映画>


1. 新聞記者 5

2. 洗骨 5

3. 最初の晩餐 5

4. 長いお別れ 5

5. 町田くんの世界 4

6. 凪待ち 4

7. 蜜蜂と遠雷 4

8. 愛がなんだ 4

9. よこがお 4

10. あの日のオルガン 4

 

以下、自分のレビューを踏まえての短評です。

 

1位は「新聞記者」。これまで日本映画が避け続けてきた政治問題に正面から切り込み、新聞というメディアあるいは新聞記者の存在価値をも問いかけながら、社会に放たれた今年一番の意欲作。令和という時代の日本映画に風穴を開ける曙光となれるか。藤井道人監督、シム・ウンギョンさん、松坂桃李さん、最高!

 

2位は「洗骨」。沖縄諸島に残る洗骨の儀式を通じて、バラバラだった家族が再びひとつになる様を描きます。死してなお、人を集め、人を変える、人間のもつ力。死んでいくもの、新しく産まれてくる命、流れていく時間。壮大なテーマにチャレンジしています。ガレッジセールのゴリさんこと照屋年之監督、最高!

 

3位は「最初の晩餐」。数々の手料理に蘇る家族の思い出に舌鼓を打ちました。家族みんなで食事ができることの幸せを改めて感じさせます。一人ひとりは弱い存在だけれども家族だから支えあって生きていける。通夜の夜、台風一過、そして晴れ渡る空。染谷将太さん、戸田恵梨香さん、そして斉藤由貴さん、最高!

 

4位は「長いお別れ」。認知症患者さんの介護実態を厳しく問うのが目的ではなく、夫婦愛や家族愛を描いたホームドラマ。優しさを感じ、とても温かい気持ちになりました。超高齢化社会に突入した今、認知症問題をどう乗り切るか、その答えの一つがここにあります。中野量太監督、山崎努さん、松原智恵子さん、最高!

 

5位は「町田くんの世界」。現実と想像の狭間で揺れる純朴な青年を描いた青春映画。主人公のかっこ悪い生きざまを肯定する作り手の温かな視線が素晴らしいです。自分の価値観を揺さぶられても、安易に妥協せず七転八倒して答えを探す町田くんを応援したいです。石井裕也監督、細田佳央太さん、関水渚さん、最高!

 

6位は「凪待ち」。理屈では説明のつかない人間のどうしようもない弱さと強さを描いた見応えのある作品。奈落の底から這いあがろうとする郁夫に、未だ大震災からの復興半ばの石巻の姿がダブります。エンドロールは震災で亡くなった多くの方への鎮魂歌のようで深い余韻を残します。白石和彌監督、香取慎吾さん、最高!

 

7位は「蜜蜂と遠雷」。ピアノ映画の稀に見る秀作であり青春映画。ピアノ演奏を通じて描かれる4人の天才にしか分からない世界を垣間見ることができました。小説では実現できない奏でられる音楽そのものが持つ力と映像の美しさに酔いました。石川慶監督、松岡茉優さん、またまた松坂桃李さん、斉藤由貴さん、最高!

 

8位は「愛がなんだ」。人が人を想う時の心のすれ違い、一方通行の愛を、5人の人物を相互乗り入れ的に描いていく群像劇。みんなコミュニケーションに難はあるけれども、だからこそ愛おしいところがあって、〝みんなに幸せになって欲しいっス〟と思いました。今泉力哉監督、岸井ゆきのさん、成田凌さん、最高!

 

9位は「よこがお」。中年女性の狂ってしまった人生の悲哀を描いた先の読めない不条理劇を堪能。他人に見せている顔と見せていない顔。誰にでも存在する〝もう一つの顔〟がいつ表に出てくるか。ラストのドアミラーに映る市子の表情にサスペンスが溢れ出ます。深田晃司監督、筒井真理子さん、市川実日子さん、最高!

 

10位は「あの日のオルガン」。第二次大戦末期の疎開先の保育園児を守る保母さんたちの活躍を描きます。親から離されても健気にがんばる子供たちの笑顔が忘れられません。メリハリの効いた脚本と手堅い演出、老若男女にお薦めできる素直に心を揺さぶられる作品。平松恵美子監督、戸田恵梨香さん、大原櫻子さん、最高!


✳︎「火口のふたり」「岬の兄妹」も強烈で、記憶から離れません。今年を代表する作品だと思う反面、衝撃的すぎて、中身が私には合わず。散々迷ったすえに入れませんでした。それから、「キングダム」「アルキメデスの大戦」「見えない目撃者」は日本のエンタテインメント系作品として上出来で、大変面白かったです!


 

<外国映画>


1. ROAM/ローマ 5

2. COLD WAR/あの歌、2つの心 5

3. バーニング劇場版 5

4. アイリッシュマン 5

5. 女王陛下のお気に入り 5

6. 家族を想うとき 5

7. ブラック・クランズマン 4

8. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 5

9. ファースト・マン 5

10. アマンダと僕 4

 

1位は「ROMA/ローマ」。何でもない家政婦や家族の日常生活描写がとにかく素晴らしい。その日常の裏で徐々に明らかになっていく1970年当時のメキシコ情勢と、忍び寄る非日常の不安。一家族のドラマを通してメキシコ社会全体を描き、やがては普遍的な〝愛の力〟へと突き抜けていく凄い作品。キュアロン監督、最高!

 

2位は「COLD WAR/あの歌、2つの心」。個性的な映像で物語に引き込まれ、心に染みる民族音楽で完全に本作の虜になりました。舞踏団の変化に冷戦の歴史をテンポよく重ねて行く見事な構成。時代の波に揺れ動く大人の男女の恋の道行きという「(成瀬の)浮雲」的な世界に酔いしれました。パベウ・パブリコフスキ監督、最高!

 

3位は「バーニング 劇場版」。韓国の社会状況を描きながら、生きる意味を求めて彷徨する3人の異なる立場にある若者の姿を見事に活写。答えがあるようでなく、中身がないようであるという、掴みどころの無さが魅力。マジックアワーのなかで揺蕩うように踊るヘミの姿が忘れられません。イ・チャンドン監督、最高!

 

4位は「アイリッシュマン」。マーティン・スコセッシ監督の「Once Upon a Time in America」ともいえる大河ドラマ。アメリカ社会の裏歴史、仕事と家族の相いれない関係、年老いていくことの孤独など、諸行無常、生者必滅を感じさせる見応えある3時間半でした。セコセッシ監督、デ・ニーロ、パチーノ、ほんと最高!

 

5位は「女王陛下のお気に入り」。女王と二人の女官の争い、漫画っぽいキャラ立ちが最高に面白かったです。広角レンズが作り出す摩訶不思議な王宮の歪んだ世界に蠢く怪物たちが抱える心の闇、あな恐ろしや。オリビア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズの演技が見もの。ヨルゴス・ランティモス監督、最高!

 

6位は「家族を想うとき」。経済原理だけで動く世のなかの仕組みの歪さを、衒いなくストレートに描き社会に問いかけた問題作。誰もが安心して仕事ができる社会であって欲しいと心から願わずにはおられません。今の日本にも通じる問題で、年齢を問わず多くの方に鑑賞いただきたいです。ケン・ローチ監督、最高!

 

7位は「ブラック・クランズマン」。黒人は肌の色や訛りを隠し、白人はユダヤ人であることを隠す。誰もがいつでも差別の対象に成り得る恐怖。40年前の物語ですが現在に通じるインパクトのある作品。ラストの燃える十字架に背筋が凍ります。スパイク・リー監督、ジョン・デビッド・ワシントン、アダム・ドライバー、最高!

 

8位は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」。タランティーノのハリウッドへの、シャロン・テートへの想いが痛いほど伝わってきて泣けました。一本の作品のなかで様々なジャンル映画の面白さも満喫。映画とは夢と虚構の世界であり、それこそがハリウッド映画。タラちゃん、デカプ、ブラピ、もう最高!

 

9位は「ファースト・マン」。宇宙飛行士ニール・アームストロングのインナースペースをともに旅する極めて個人的な作品でした。宇宙飛行士の妻たちの姿も印象的。どんなに科学が進歩しても子供の命ひとつ救うことができない現実。ニールが観た静寂の世界に涙。デミアン・チャゼル監督、ライアン・ゴズリング、最高!

 

10位は「アマンダと僕」。子供を扱った映画ではありますが、実はフランスにおけるテロ問題の傷痕を描いた社会的な作品でもあります。ラストのウィンブルドンの場面では、アマンダの心に自分の心が同期してしまい涙が止まりませんでした。イゾール・ミュルトリエ(アマンダ)、ヴァンサン・ラコスト(僕)、最高!


✳︎「存在のない子供たち」「僕たちは希望という名の列車に乗った」も力強いテーマかつ、決して難解でない良い映画でしたが、残念ながら入りきらず。その他、「アベンジャーズ /エンドゲーム」や「スパイダーマン: スパイダーバース」も、さすがのハリウッド映画で、映像だけでなくドラマもとても面白かったです!

 

 

以上、アレレの映画ベスト10でした。

 

いよいよ2020年に向けてのカウントダウンですね。みなさま、良いお年をお迎えください。そして、来年もよろしくお願い申し上げます。

 

この項、終わり。