Diner ダイナー | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

Diner ダイナー

2019年作品/日本/117分
監督 蜷川実花
出演 藤原竜也、玉城ティナ、窪田正孝

8月9日(金)、新宿ピカデリーのシアター7で、10時35分の回を鑑賞しました。

日給30万円の怪しいアルバイトに手を出したばかりに闇の組織に身売りされてしまった少女オオバカナコは、ボンベロに買われウェイトレスとして働くことに。ボンベロが「王」として君臨するダイナーには、全身傷だらけの孤高の殺し屋スキンや、子どものような姿をしたサイコキラーのキッド、不気味なスペイン語を操る筋肉自慢の荒くれ者のブロら、ひと癖もふた癖もある殺し屋たちが次々とやって来て(以上、映画.comより抜粋)、という物語です。

ようやく「Diner ダイナー」を観てきました。藤原竜也さんが「俺は~、ここの~、王だ! 砂糖の一粒までが俺に従う!」と絶叫する予告編を見て気になっていたのですが、時間帯がなかなか合いませんでした。平山夢明さんの同名原作小説は未読の上、蜷川実花さんの監督作品鑑賞も初です。さて、どうなのでしょうか⁈

 

ダイナーの美術や奇妙奇天烈なキャラが見どころ

 

殺し屋専門のダイナー(食堂)でシェフを務めるのは、凄腕のもと殺し屋で、ボンベロと呼ばれる男。こちらに料理だけが得意という引きこもりのような少女がある事件をきっかけにして闇の組織から売り飛ばされてきます。ダイナーでウェイトレスとして働くことになるこの少女の名前が〝オオバカナコ〟なのです、笑。

 

鑑賞された方なら誰でも感じられることと思いますが、このダイナーの赤やピンクを基調とした絢爛さがとても見応えあります。食器やグラスに調度品、そして料理そのものまで、その道のプロフェッショナルを集めたスタッフによる細部に亘る美術造形は、外界からシャットアウトされた完全無欠の異空間を創り出しています。

 

普通の役者さんならば、このダイナーの強烈な個性に埋没してしまい存在感を失ってしまいそう。しかし、ここにやってくる奇妙奇天烈な殺し屋たちを演じる俳優陣は、このダイナーをしてその個性を思い切り増幅させており超刺激的です。一人ひとりを見ていると、まるで連載コミックを読んでいるような楽しさがあります。


▼ダイナーに売り飛ばされてきた少女〝大馬鹿な子〟

豪華俳優陣たち!深掘りされたドラマも観てみたい

 

この映画では豪華キャストが惜しげもなく登用されていますが、なんといってもボンベロを演じた藤原竜也さんとカナコ役の玉城ティナさんがよかったです。この二人がしっかり映画の世界観を作り上げていました。藤原竜也さんの口上は思わず笑ってしまいました。そして玉城ティナさんはウェイトレス姿だと人形のよう。

 

本作は大きく二部構成になっていました。前半は、筋肉粒々のスペイン語を操る荒くれもの・ブロ(武田真治)、全身傷だらけのスフレ好きの殺し屋・スキン(窪田正孝)、人殺しのためにホルモン剤で成長を止め子供のような容姿のサイコパス・キッド(本郷奏多)らのカナコを巡ってのいざこざが中心に展開されます。

 

また後半は、このダイナーがある架空の街を仕切っていたボス(故・蜷川幸雄)の後継争いが描かれていきます。、個性的な4人のトップがいまして、東のトップ・マテバ(小栗旬)、西のトップ・マリア(土屋アンナ)、北のトップ・ブレイズ(真矢みき)、南のトップ・コフィ(奥田英二)という面々。濃いですねー。

 

そして忘れてはならないのが菊千代と呼ばれるボンベロが飼っている獰猛なブルドッグ(笑)。この他にも有名どころの俳優陣が惜しげもなく起用されていて、ほとんど見せ場もないままに消えていくキャラも大勢います。時間の制約がなければ、一人ひとりの殺し屋としての背景や感情をもっと掘り下げて欲しかったところ。


▼スキンのスフレに関する母とのエピソードが泣かせます

クライマックスは派手ではあるが物足りないかな

 

そういうドラマの枠組みのなかで、ボンベロとカナコの仲がだんだんと近づいていき、そして最後にはダイナーで繰り広げられる激しい抗争のなかでカナコを守るべくシェフ・ボンベロが凄腕の殺し屋としての強さを見せていくわけですね。この辺りは、かつての日活映画の定番ストーリーのようでもあり、楽しめました。

 

役者の芝居は藤原竜也さんに代表されるように全体的に大仰で舞台風になっています。またストーリー展開はキャラの強さや出入りの多さも含めてコミック風。しかし、映像については映画でしか表現できないことにこだわっていて、そこが大変興味深かったです。引き込まれて、最後まで飽きずに鑑賞することができました。


 そういう見た目にも、物語的にも楽しいことを認めたうえで〝これはどうかな?〟と思う点もありました。東西南北のトップがダイナーに集結してからの展開は少し安直で、もっと工夫が欲しかったです。アクション演出もキレがもう一つ。1億円もする豪奢なお酒も、キーアイテムとして何かあってしかるべきなのですけれど。


▼さすが元タカラジェンヌの真矢みきさん、決まります


最後の終わり方なんかもいいと思うのですね。ただし、セットだとどうしても安っぽくなってしまうのです。ここまでのドラマがダイナーのセットの中だったからこそ、現地まで藤原竜也さんと玉城ティナさんが行って撮影することで大きなカタルシスが生まれたのではないかと思うのですが。予算の問題ですよね、きっと。

 

あー、映画を見終わったら、おいしい豪華ハンバーガーが食べたくなってきました、笑。蜷川実花さんの次作は今秋公開の太宰治を主人公にした物語「人間失格」です。こちらも既に劇場の予告編にかかっていて何回も目にしていますが、太宰を取り巻く3人の女性の話で大変面白そうですよね。大いに期待して観に行きたいと思っています。



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