THE PROMISE 君への誓い | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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THE PROMISE 君への誓い

2016年作品/スペイン・アメリカ/134分
監督 テリー・ジョージ
出演 オスカー・アイザック、クリスチャン・ベール

2月18日(日)、イオンシネマ シアタス調布のスクリーン2で、8時35分の回を鑑賞しました。

オスマン帝国の小さな村に生まれ育ったアルメニア人青年ミカエル。医学を学ぶためにイスタンブールの大学に入学したミカエルはアルメニア人女性アナと出会い、互いに惹かれ合うが、アナにはアメリカ人ジャーナリストの恋人クリスの存在があった。第1次世界大戦とともにアルメニア人への弾圧がさらに強まる中、故郷の村に向かったミカエルはアルメニア人に対する虐殺を目撃する(以上、映画.comより抜粋)、という物語です。

あまり話題になっていない映画のようなのですが、レビューされている方々の評価は結構高いので気になっていた作品なのです。朝早いので迷ったのですが、頑張って電車に乗って劇場まで足を運んで観てきました。これは、非常に分かりやすい映画らしい映画でした。

第一次世界大戦におけるオスマン帝国でのアルメニア人迫害という歴史的な事実をベースにドラマ化したもので、なかなか見応えがありました。主役の二人を演じる男優が何気にすごいですし、拾い物の一本という感じでしょうか。劇場は10人も観客がいませんでしたが、興味があればぜひ。

オスマン帝国にかつて広がっていた〝キリング・フィールド〟

この物語は、第一次世界大戦直前のイスタンブールから始まります。これを観るまでは全く知りませんでしたが、1915年から1916年にかけて、オスマン帝国に住むアルメニア人が強制移住させられて、移動過程で多くのアルメニア人が亡くなる、あるいは殺されるという事件があったのですね。

これが、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺に先立つ、政府主導による計画的で組織的な初めての虐殺と見られているようなのですが、トルコ政府はそれを否定しているとのことです。なお、この虐殺で亡くなられた方は、映画では150万人と説明されていました。

ネット検索によると、オスマン帝国は第一次世界大戦では同盟国側に付いたのに対し、アルメニア人の中には侵攻してきたロシア軍に加担し、ゲリラ活動を行う者も出てきたため、過去からの民族的対立の中でオスマン帝国内でのアルメニア人への敵意が露わになったということのようです。

この映画の主人公は、地方の村に住む若者ミカエル。彼は医師を志してイスタンブールまで勉強に出てくるのですが、折悪く第一次世界大戦が始まり、故郷に戻ることを余儀なくされます。しかし、アルメニア人である彼は軍に捕まり、強制労働を強いられ、生死の間を彷徨うのでした。

▼痩せ細り肋骨の浮き出た労働者たちの姿が痛々しい
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弾圧に引き裂かれた男女という古風なラブストーリー

実はミカエルには故郷の村に結婚したばかりの妻がいるのですね。彼は医師になるために村の有力者の娘と結婚し、その持参金でイスタンブールの大学に通っているのでした。彼は、医師になってすぐに戻ってくると彼女に約束をするのです。

しかし、大学に通うために叔父の豪邸に住ませてもらっている彼は、そこで子供達の家庭教師を務める美しい女性アナと出会い互いに恋に落ちます。彼女にはAP通信の米国人記者のクリスという恋人がいて、ミカエルも距離を置くのですが、戦火の中で二人は遂に結ばれてしまうのですね。

この辺りは、よくあるソープドラマのような展開なのですが、危機的な状況下における男女の恋物語というのは、ついつい見入ってしまうものなのですね。やがて二人は離れ離れになってしまい、そしてアナはミカエルが死亡したと聞かされ、それを信じてしまうのです。

そのような中で、彼女のもと恋人(といってもアナの心は離れていたのですが)であるクリスは、オスマン帝国の残虐非道ぶりを記事にして母国へ送り続けるのです。彼が目にした風景とは、彼は降りかかる危険にどう立ち向かうのか、この辺りのドラマが言葉は悪いですが、面白かったです。

▼米国人記者の目を通して描かれる虐殺場面が恐ろしい
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過酷な旅路の果てに運命は二人を再びめぐり合わせるのだがー

この3人の運命はどうなるのか、クライマックスとなるモーセ山でのアルメニア人とトルコ軍との戦いまで話はいっきに進んでいきます。モーセ山を越えて海に脱出するアルメニア人をフランス軍が救出に向かうのですが、映画では3,600人ものアルメニア人が命を救われたと出ます。

映画でのアルメニア人への迫害や虐待、虐殺は、ことさらに強調されてはおらず、必要最低限の描かれ方をしています。この作品の場合はそれが全体のバランスに合ったいたように思います。それでも、列車内にすし詰めにされたアルメニア人の姿など印象に残る場面がたくさんありました。

この作品、かなり重たい題材を扱っているのですが、話の骨格は基本的にはミカエル、クリスと、アナをめぐる三角関係の恋愛ドラマなのですね。史実に基づきながらも恋愛ドラマとしてのラッピングが施されていて、万人に受け入れられる作りになっています。

そこが突っ込みが足りないと感じるか、面白いと感じるかで評価が分かれる気がします。私自身は、このアルメニア人虐殺事件がナチスドイツのユダヤ人に対する行為に比べ話題になっていない中で、こういう作りにすることで多くの方の鑑賞に結びつき、認知が進むといいなと感じました。

▼アナを演じたシャルロット・ルボンは、どことなくウィノナ・ライダー似
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公開規模が小さいですが、一見の価値ある作品だと思います。「スター・ウォーズ」新シリーズのポー・ダメロンことオスカー・アイザックと、ノーラン版「バットマン」のクリスチャン・ベールが出演しており、これも見どころ。二人が恋するアナのシャルロット・ルボンも良かったです。

誠実そうなミカエルが、故郷の妻を忘れてアナと不倫してしまうところは、どうなのかなあと感じはしましたが、まあ私の僻み根性もありますので、目を瞑ることにしたいと思います。
もしお近くの映画館に流れてきましたら、ご覧いただきたいと思います。

オススメ度: 3
5 必見です
4 お薦めです
3 興味があればぜひ
2 もう一つです
1 私はお薦めしません


この項、終わり。