こんな素敵なところでプレーできるなんて、と、本当は来たくなかったにもかかわらず、私は奥深い山の斜面に立って周りを見渡すと、歓声を挙げたくなりました。もう四十数年前、まだ私が二十歳台の初々しい青年だった頃の話です。

まだ数えることが出来るくらいしか、ゴルフ場と言われるところに来たことがありませんでした。自分の収入にしては贅沢なことをしたものですが、「仕事だと思え」の一言で、不承不承やって来たのです。そのような態度ですから、その後三十年、ゴルフを止めてしまうまで、まったく上達しなかったのも頷けます。

[ご参考] 私のゴルフについて書いたブログ記事の一部です。

https://ameblo.jp/tosh-tanaka/entry-11377455854.html?frm=theme

 

ゴルフというスポーツそのものは、最後まで、私にとっては苦痛でしかなかったのですが、素晴らしい風景とともにプレーをするという環境は素敵でした。それだけが、高い代償の対価として、私が受け取ることのできたものです。

 

さて、どのホールだったか、何も覚えていませんが、私は長い距離のパットを打つことになりました。それが、まるでプロが打ったのかと思うほど、見事な曲線の軌跡を残してカップの中に吸い込まれたのです。

 

「すごい」、「お見事」、「天才だ」など、称賛の嵐の中で、一人、いつも冷静な仕事ぶりの先輩が一言。

 

「ビギナーズラックだよ。」

 

ビギナーズラック。つまり、「まぐれ当たり」だと言いたかったのでしょう。