ストーリーの展開とは、ほとんど関係のない場面に、私
は涙して、この作品を見直しました。登場人物にも親しみ
を覚えたのは、回を重ねたからだけではありません。
 何でもない場面です。整形美女となって、新しい人生を
歩んでいる娘に、その美女が死んでいるとばかり思って
いた母親が、つくづくと娘に対する想いを語る場面です。
母親の想いが、胸に迫ってくる場面でもあります。

 この母親の役割は、メインストーリーとは、直接関係が
ありません。ですから、この場面も物語の進展には影響
のない部分です。
 そういう意味では、お涙頂戴シーンなのかもしれません。
まんまと、私は乗せられているのかも。そういえば、韓流
ドラマでは、お笑い頂戴シーンというのもあって、そういう
キャラが登場人物の中に混じっています。
 物語の進展ではキーマンとは言えないけれど、添え物
的な存在として欠かせないものです。そして私は、お涙
頂戴シーンにこそ、そのドラマの神髄が描かれているの
ではないかと、本末転倒なことを思ったりするのです。

 韓流ドラマには、数々の珍妙な設定があるのも、この
場面(お涙頂戴シーン)を描きたいがためのものだった
のではないかと思える作品が少なくありません。
 メルヘンとは、そのようなものかもしれません。先に、
伝えたいことがあるのです。そのために物語を創ります。
読書では、ストーリーよりも作者の意図を読み取ること
が大切だとも言われます。
 よく考えると、これは文学の基礎的なことにも、通じて
いるように思えます。