私が自分の職歴を語るに当たって、注意しなければなら
ないこと、あるいは配慮しなければならないことがあります。
それは企業における守秘義務という部分、そして人の悪口
を書かないということです。
 実は、守秘義務に当たる部分や人の悪口は、話としては
面白いので、ついつい、筆が滑ってしまいそうになるのです
が、それは人間としての仁義に悖(もと)ることになると思い
ます。ですから、面白くないかもしれませんが、私にとって、
職歴として話せる範疇で綴ることにします。

 私がサラリーマンだった30数年という年月は、それから、
もう7年が経つというのに、まだ、私の人生の半分以上を占
めています。
 思えば、予想に反して長い年月でした。「こんなはずでは
なかった」と言いたい気持ちもありますが、私には、そのよ
うな人生しか歩めなかったとの想いもあります。
 多分、学生時代に考えていた、職業文人としての生活は、
私には成り立たなかったのではないかと思うからです。そ
れは、これから述べる職歴における、私ののめり込みよう
と興奮を感じていただければ、きっと、ご理解いただけるだ
ろうと思います。

 もちろん、私の人生の芯が文学にあることに寸分の疑い
もありません。文学とは、人間を観るものであり、人生を味
わうものですから、サラリーマン生活との両立ができるもの
だと、今になって思います。
 それが、私の言い訳や痩せ我慢でないことは、これから
私が書こうとしていることを読んでいただくしかありません。