少し余裕のある花巻のひとときを、私は洒落たランチの
お店で過ごすことができたのですが、値段相応だと思えた
ランチの後に、問題は起こりました。
 セットメニューなので当たり前かもしれませんが、食後に
飲み物が付いていたのです。あらかじめ私は、いつものよ
うにアイスコーヒーを注文していました。もう花巻は、寒さ
の冬になっていましたが、私は、食後に温かいコーヒーを
飲むことは少ないのです。

 そのアイスコーヒーに仰天しました。タイミングよく持って
きてくれたのはいいのですが、素朴な、細長いガラスのコ
ップに、やや薄目のコーヒーを八割程度注いで、私の目の
前にストローと一緒にして置くと、それっきりだったのです。
 すぐに気が付くだろうと最初は高を括っていました。でも、
すぐに雰囲気でわかりました。そのままにしておけば、もう
何も持ってこないであろうことは明らかでした。
 そこで、仕方なく私は立ち上がって、厨房の方に行くと、
欲しいものを告げたのです。私は、いつもコーヒーには、
フレッシュかミルクを入れるのが習慣になっています。

 「すみませんが、ミルクはありませんか?」

 その時の怪訝そうな顔を、私は二度と忘れることができ
ません。しかも、そこには非難の表情が汲み取れました。

 「コーヒーはブラックで飲むものです!」

 その顔は、確かに私に向かって、こう語っていました。