「何か気に入らないことがあれば」、ストレス解消の標的
として家族が選ばれてしまうことは、家族のいいところでも
あり、悪いところでもあります。
 そこに甘えがあることは前回も書きましたが、この甘えが、
場合によっては悲劇をもたらすこともあります。相手に甘え
ようとすると、えてして、甘える自分のことばかり考え、相手
のことを忘れてしまうのが人間です。

 甘えることによって、人間関係が破綻(はたん)してしまう
こともあります。自分に夢中になることによって、相手との
関係性を見失ってしまうのです。
 あまりにも哀しいことですから、書くのも憚(はばか)られ
るのですが、殺人などでも家族間のトラブルが原因となる
ことが、意外に多いと言われています。
 これは、家族には甘えやすいので、相手のことを考えず
に、ついつい、全身で寄りかかってしまうことから生じるの
ではないでしょうか?

 そこで私が思ったのは、家族という社会の中では、人間
の視野は広がらないのではないかということです。家族は
狭い社会です。よく見える相手のはずですが、近すぎて、
ピンとが合わなくなってしまうことが、しばしばあります。
 狭い社会だからこそ、家族同士で濃密な人間関係を築く
ことができるのですが、甘えが過剰になってはいけないの
ではないかと思います。視野を広げねばなりません。
 もちろん、甘い関係なら悪くはないと思います。恋愛には
甘味料が必要です。けれども、甘える関係は長続きしない
ような気がします。虫歯にならないような手当と、心配(ここ
ろくば)りが、甘い家族の注意点だと思うのです。
                    (バレンタインデーに寄せて)