ヘグムのファルテ(弓)は、ヴァイオリン族の弓とは異なり、
まったく張ってありません。緩んだ状態ですから、そのまま
弾こうとしても音は出ません。ですから、演奏に際して自分
の指で、弓を張らなければならないのです。
 そのために、ファルテ(弓)の手元には、革製の把っ手が
付いています。そこに、右手の中指、薬指、小指の三本で
握り込むことによって、弓に張りを作るのです。
 そして、残りの親指と人差し指で、把っ手の部分をつまん
で押し上げるようにすると、弓の構えができるのです。外側
の弦を弾くときは向うに、内側の弦を弾くときは手前に押し
つけなければなりません。

 左手もヴァイオリンとは全然違いました。イプチュク(棹)
を親指と他の四本の指で挟むのは同じなのですが、指板
がないことからもわかるように、二本の弦を、指の関節を
利用して握り込むようにするのです。
 ヘグムの弦は、しっかりと撚(よ)った糸でできているので、
とても張力が強く、二本の弦を左手の指の関節で握り込む
には、とても力を籠めなければなりません。
 当然のことですが、それを繰り返していると、指の関節が
腫れてきます。もちろん、痛みを伴うものです。この講習で、
三日目にはヘグムの講習から離れて、もう一つの民族楽器
であるタンソ(縦笛)の講習となっているのは、傷んだ指に、
休養を与えるためとのことでした。

 講習二日目を終えて、私の指も、もうダウン寸前だったの
です。