私は、日清戦争当時の日本の朝鮮における行動について、

イザベラ・バードが「朝鮮紀行」で書いていることは、すべて、

事実だろうと思っています。

 日本の蛮行についても記録されていますが、そのような話

においても、彼女の記述に偏ったものはありません。政治に

関することも書いていますが、彼女の立場は中立であるよう

に思われます。


 もっとも、家父長制の色合いが強かった、ヴィクトリア朝の

淑女として教育されました。まさに、シャーロック・ホームズ

の社会観の時代です。

 ところが、矛盾の時代とも言われるように、この時代には、

ブロンテ姉妹やナイチンゲールなど、活動の分野は違ってい

ても、立派な業績を上げた女性が少なくありません。それは、

女王を頂く家父長制との矛盾を、引きずっていたのかもしれ

せん。


 イザベラ・バード自身も、心の中に、そのような矛盾を内在

していました。けれども、それは彼女の人格の欠陥ではあり

ません。むしろ、その故に豊かなものの見方が備わっていた

のではないかと思えます。

 ヴィクトリア朝(1837-1901年)は、産業革命による近代化

が、目に見えて進んだ時代でした。そのような近代化一辺倒

から、一歩下がって世界を見ようとした彼女が、モンゴロイド

の研究に興味を抱いたのは幸いでした。


 彼女は、日本の朝鮮への関与が下手だと言っていますが、

それでも、評価すべき点も挙げています。


 「日本は朝鮮人を通して朝鮮の国政を改革するすることに

対し徹頭徹尾誠実であり、じつに多くの改革が制定されたり

検討されたりしていた」と。