さて、第三章ですが、ここでは負けたくないために勝負

を避けることについて考えたいと思います。負けないため

には、勝負に挑まないことが秘訣です。けれども、あまり

これは評判がよくありません。

 それは、他人からの評判を気にするだけでなく、自分の

中にも「逃げている」とか「卑怯者だ」という気持ちが生じ、

その消極的な生き方に嫌気が差すのです。


 実際、勝負を避けて生きようとすると、物事にチャレンジ

する気持ちにもならず、努力をすることも虚しく思えます。

そこには無気力な生き方しかなく、人生そのものの意義

が失われたようになってしまいそうです。

 ただ、勝負をしないことの強さのようなものも感じること

があることも事実です。「何をそんなに肩に力を入れてい

るの?」との問いに、赤面してしまうこともないわけでは

ありません。

 勝負に拘らない生き方について、単純に否定的な態度

ではなく、その中にある真実を眺めて見たいのです。


 最後に、第四章では、負けない世界について考えたい

と思います。負けないということは、勝負を意識はしてい

るけれど、勝ち負けには拘っていない態度によってもたら

されるものです。

 勝ちたいと思ったとたん、勝負への拘りができてしまう

のですが、その想いを捨てた世界です。あるいは、最初

から、そのような想いとは縁のない世界かもしれません。

 無知、悟り、達観、死などが、負けない世界に近いもの

のように思えますが、それだけでは年寄りの覚悟でしか

ないように思えます。

 本当は、若者も含めて、人間に共通した生き方としての

「負けない世界」があるような気がするのです。そのような

世界を探ることが、この小論の目的なのです。