巻藁とは米俵のように藁を束ねたものです。居合や空手

にも、巻藁というものがあるようです。使う目的は似ている

ようですが、少し形や中味が違うようです。

 今、私の頭にあるのは弓道で使う巻藁です。弓道をした

ことのある人でなければ、巻藁がどのようなものなのか、

少しわかりにくいと思います。


[ご参考] 巻藁を解説した Wikipedia です。写真もあります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%BB%E8%97%81_(%E5%BC%93%E9%81%93)


 さて、私が巻藁を思い出したのは、自分の中学生時代の

ことを振り返っていたからです。この時代は、まさに、自分

探しの旅を始めたばかりで、私が文学に目覚めたときでも

ありました。

 心は純真というより、まだ新品のキャンバスそのものです。

想いは一途で、妥協を許さない時代でもあります。そのよう

な想いで、私は単純に、修行ということに憧れたのです。

 何でもよかったのですが、たまたま友達が弓道部にいた

で、練習場に連れて行ってもらいました。そこは、とても

弓道場というには程遠く、空き地に三人立ちの的場と巻藁

が一つ置いてあるだけでした。


 それでも、私は初めて、射法八節という基本動作を学び、

巻藁の前に立ったのです。つまり巻藁とは、的前に立って

矢を放つことの許されない初心者が、正しい射法を身に着

けるための練習台なのです。

 もっとも、基本を大切にする弓道では、上級者になっても

この巻藁を、調整用として使う人が少なくありません。的に

当たるか当たらないかの結果が出ない地道な練習です。

 むしろ、結果を気にする必要がないので、きっちりと基本

動作を確認することができるのです。私は、持前の不器用

さから、腕前こそ上達しませんでしたが、修行に身を委ねる

という自己満足の世界に浸ることができました。


 私は、基本を大切にすることこそ日本文化の神髄に思え

てなりません。結果だけを追いかけるような最近の風潮は、

必ずや、駆逐される時期が来ると思うのです。