私は、あるアマチュアオーケストラで、三十年以上も前に、
この曲を演奏したことがあります。当時は、この曲について
の知識もなく、明るい第4番の「イタリア」にしてほしいなどと
思ったものでした。
ところが、練習を重ねるうちに、私はこの曲に夢中になった
のです。弾けば弾くほど、どこからか奥深い魂の呻きが聴こ
えて来るのです。まるで、演劇の主人公が、人生に喘いで
いるような、胸の底から絞り出すような声です。
伝統ある、ベルリン音楽界の勢力争いからの逃避行とも
言われるロンドンへの旅で、メンデルスゾーンは、すっかり
イギリスのファンになりました。そして、この後10年もかけて、
イギリスを何度も訪れ、丁寧にこの曲の推敲をしました。
ですから、彼の作品の中でも、とても緻密な作風になって
います。なにしろ、この曲については、メトロノームの調整に
さえ気を配るほどだったのですから。
この作品とシェークスピアとの関連については、まだ私は
確たる自信はないのですが、きっと何らかの関係があるもの
と思っています。奥深い魂の呻きが聴こえるのは、この影響
に違いないと思うからです。
このことに関して、何かヒントが示されている文献があれば
いいのですが、残念なことに、今のところ、私は何も見つける
ことができていません。これは、これからの課題なのです。
[ご参考] クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団です。
最終楽章のコーダのテンポが、とてもゆったりとしています。
作曲者の指示は、[♩.= 104]なのですから、テンポに神経質
だった作曲者の意図には忠実でない演奏です。
http://www.yung.jp/yungdb/op_3.php?id=1552