朝から不祝儀な話で、大変恐縮してしまいます。それでも、
ここに書き記すことが母への手向けになるとの、ごく個人的
な我がままで、少し、一年前のことを思い起こしてみます。
前日、病院から要請されたこともあり、入院してから初めて、
泊まり込むことにしました。医者の考えることと、患者の家族
が思うことには大きな差があるものです。
私には、母の様子に、さしたる変化があるようには思えま
せんでした。昨年の12月26日、入院して九日目のことです。
翌日は、入院して間もなく自分で外してしまった点滴注射針
の替わりに、中心静脈への施術をする予定でした。
仮眠を終えると、母は小康状態でした。それで私は、一旦
家に帰ることにしました。昼に施術があるので、そのあとに
戻り、再度泊まり込むつもりでした。
病院に戻ると、医者から施術が上手くいったので、これから
栄養が行きわたると言われました。ところが、その説明を聞い
ている最中に、看護師が急を告げに来たのです。
「先生、呼吸がおかしいです。」
私は医者と一緒に病室に飛び込みました。母は、見る影も
なく弱り果てており、しばらくすると、呼吸を忘れていました。
「母さん、息をして。」
母は、一度大きく深呼吸をしました。大量の酸素が、老いた
母の体内を駆け巡ってくれたのです。けれども、それが私に命
を与えてくれた母の、弱々しい最期でもありました。
今日は一日、その頃の母を想い出しながら、慌しい年末の
準備をすることにします。