平均寿命の統計などを見ていると、現代日本は、世界でも

有数の長寿国になりました。急激な高齢化は、社会に様々

な問題を投げかけていますが、平均寿命の伸びは、一般的

には歓迎されることと受け留められています。

 これには、昔の乳幼児の生存率や国民の栄養・衛生状態

加えて、これまでの幾多の研究による医療の充実などが

大きく貢献しているようです。確かに、天然痘や結核など、

多くの死に至っていた病気が、今では克服されています。



 これらの医療の発達は、間違いなく私たちには心強いこと

です。けれども私は、ときには医療に身を任せることを逡巡

することがあります。

 それは、薬によってもたらされる副作用と、得られる健康と

の取引が、必ずしも、人間のためにならないような気がする

からです。薬の副作用や医療ミスで苦しんでいる人たちの

話を聞くと、現代医療への信頼が揺らぎます。

 そのような人たちの間では、外科手術や感染症でなければ、

医療の世話にならない方がいいとの考え方があります。この

考え方は、自然に帰ることとは違います。所謂「いいとこどり」

をしているのかもしれません。



 けれども、これは医療の本質にかかわることです。つまり、

人間の心身が異変を起こすのは、病気なのか自然現象なの

かの区別を付ける必要があるのです。病気なら治療しなけれ

ばなりませんが、自然現象なら受容することも必要です。

 年齢に応じた肉体の衰えに抗うためや、精神的な疲れを

癒すために、副作用のあるものを使用することは避けなけれ

ばなりません。それは、自然に逆らうことになります。

 それなのに、現代医療はすべての異変に立ち向かおうとし

ているように思えます。私が、自然に帰るべきだと考えている

のは、このような行き過ぎた医療なのです。