少し、長い引用ですが、有名な一節です。


 「ある土地に囲いをして『これはおれのものだ』と宣言する

ことを思いつき、それをそのまま信ずるほどおめでたい人々

を見つけた最初の者が、政治社会[国家]の真の創立者で

あった。杭を引き抜きあるいは溝を埋めながら、『こんないか

さま師の言うことなんか聞かないように気をつけろ。果実は

万人のものであり、土地はだれのものでもないことを忘れる

なら、それこそ君たちの身の破滅だぞ!』とその同胞たちに

むかって叫んだ者がかりにあったとしたら、その人は、いかに

多くの悲惨と恐怖とを人類に免れさせてやれたことであろう?」

(ルソー「人間不平等起原論」岩波文庫より)


 実は、長年の不勉強を反省しなければならない私は、まだ、

この古典的な名著を読破していないのです。今日、ようやく、

第二部の冒頭に書かれたこの一節を読んだところです。


 要するに、誰のものでもないはずの地球上のものに、私有

財産という概念を用いたばっかりに、人類は、多くの悲惨と

恐怖を味わうことになったということでしょうか。

 明らかにルソーが誤っているのは、本当に私有財産を認め

ない社会のままであれば、悲惨と恐怖はなかったとしている

ことです。恐らく、結果は正反対で、秩序のない殺戮と略奪が

横行する社会だったと思います。


 それでは、ルソーの思想が間違いなのかというと、どうやら

そうでもなさそうなのです。それは、この後を読まねばわから

ないのでしょうが、どうも、ルソーの逆説があるように思えて

ならないのです。

 ただ、私有財産を巡る争いは、これまでの大きな戦争の因

になっていることも事実です。人間は、争いから逃れられない

のでしょうか?哀しい結末にならないことを祈るばかりです。