これまでに私は、この作品を何度も観ています。そして、その
度に、自分の心から込み上げてくるものを味わいます。それは、
年齢と共に、私の心を深く抉るまでになってきました。
とても大味な作品です。何しろ、三代に亘る一家の大河ドラマ
を一本の映画に凝縮しているのですから。ストーリーが単純で、
通り一遍なのは仕方ありません。まあ、駄作でしょう。
ロマンス、罠、筏での急流下り、酒場、ギャンブル、踊り子、
金鉱、幌馬車とインディアンの襲撃、蒸気船、南北戦争、鉄道
など、西部劇でお馴染みの光景が随所で繰り広げられます。
この映画に、じわっと迫りくる心の機微を期待することはでき
ません。場面転換のスピードに付いて行くだけで精一杯です。
それでも、観ている者の気持ちがストーリーから離れないのは、
さすがに大物監督と名優たちの演技力によるものです。
ジョン・ウェイン、リチャード・ウィドマーク、グレゴリー・ペック、
ジェイムズ・スチュアート、キャロル・ベイカー、ヘンリー・フォンダ
など、主演級の豪華キャストが出演しています。
それが、この映画の「売り」でもありました。1962年のシネラマ
映画ですが、当時としては破格の企画でした。ジョン・フォード、
ヘンリー・ハサウェイなどの著名な4人の監督が、5つの物語を
オムニバス風に纏めた娯楽作品です。
物語を繋いでいるのが、次女を中心にした一家の運命と、彼女
が歌うグリーンスリーブスです。そして、忘れてはならないのが、
アメリカ人の明るさと西部開拓への不屈の魂が、とても太い線で
描かれていることです。
私がこの作品を最初に観たのは、中学生のときでした。自分の
意思で映画館に行くようになってから、まだ間がない頃です。
もう、それから半世紀になります。
自分の人生を、じっくりと考えている時期でした。この茫洋とした
映画を観て、私はアメリカ人が持つ明るさと不屈の魂を学びました。
それは、現在に至るまで私の貴重な財産になっています。だから
こそ、この駄作とも言える作品が、私には忘れられないのです。
[ご参考①] いかにも西部劇らしい音楽です。
http://www.youtube.com/watch?v=H7ZPy-7BzSw
[ご参考②] 私の大好きなグリーンスリーブスです。