フィンランドの大作曲家シベリウスは、交響曲を7曲

作曲しました。どれも秀逸の作品であり、ベートーヴェン

以降の最大の交響曲作曲家と評価する人もいます。

 その中で、私の最もお気に入りの曲がこの七番です。

曲の出だしを聴いただけで、アロマセラピーを受けて

いるような気になります。

 それもそのはずです。この曲からは、北欧の森の木々

が醸し出す香りが届けられるからです。横になって

この曲を聴くと、森の広場でハンモックに横たわって

いるような錯覚に捉われます。


 20分余りの短い曲です。単一楽章でできていること

から、交響詩とも言えると思います。曲想の中に北欧の

厳しい自然の予感はありますが、屈することのない魂が

聴く者に平安を与えてくれます。

 シベリウスには「タビオラ」という交響詩がありますが、

同じ時期に作曲されました。こちらは、荒々しい森の神

タピオを描いたものです。

 それに比べて、この曲は平穏な幸福感に浸ることが

できます。自愛に満ちた晩年を過ごしたシベリウスが、

たどり着いた境地のような気がします。