ベートーヴェンの後期の作品は、魂の奥深い部分に

まで届きます。そこでは、純粋な人間の感性が響いて

います。日常から離れた別世界のような気がします。

 その中でも、この曲を聴いていると、生活に疲れた

魂を洗ってくれるような気がします。この曲は、病後の

ベートーヴェンが神への感謝を込めて作曲したと解説

されるのですが、むしろ神の癒しそのものに思えます。


 音楽には、軽妙なものや心を奮い立たせるものが

ありますが、神の存在を思い起こさせるものは多くは

ありません。この曲は、神がベートーヴェンに宿って

創られたとしか思えないのです。

 すべてを忘れて、ただ音楽にだけ身を捧げてください。

そうすれば、自分が生まれる前の世界に誘われている

ような錯覚に襲われます。