生前のジャンボ鶴田が、ある雑誌記事のインタヴューの一節で語っていたことが
強く印象に残っています。
記憶の範囲ですが、ざっとこんな感じだったと思います。
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「どんなに日本人対決が流行ってもね、格闘技路線が台頭してきてもね、
日本人プロレスラーっていうのは、外人選手と名勝負ができないとダメなんですよ。
関節技がどーのとか、今の技がどーの、とかそういうマニアというのは、全体から
したらごく少数なんですよね。
東京の大会場ならいざ知らず、我々はシリーズのほとんどを地方会場で試合しているし、
何よりテレビの前のお茶の間で、毎週プロレスを見ている人というのは、小さい子供から
おじいちゃんまで幅広い。
そういう一般の人達に対して、精神性とかマニアックな技術の試合は面白くないわけです。
分かりやすいのは、やはり、昔から、日本人VS外人という見た目にどちらがどうで、
単純に応援して楽しめる図式なんですね。
今、どんどんプロレス界が細分化されていってしまって独立団体ができていっているけど、
ボクはそれはあまりいいことじゃないと思っています。
ボクらはプロとしてやっているんですから、ちゃんとビジネスとして成立させなくちゃいけない。
精神性の高い〇〇道とされる格闘技はビジネスとしては成立しにくいんです。
例えば、弓道とかっていうのはプロスポーツになっていないでしょ。
逆にアメリカの大リーグやアメフトやバスケットと言うのは、会場で花火を上げたり、
ショーがあったり、エンターテイメントの要素を存分に取り入れてビジネスとして成功
している。
他団体は別として、ボクは日本のプロレスも、まずはプロビジネスなのだから、
そうなっていけるように考えなくちゃいけないんだと思うんです。」
間違っていたらゴメンナサイを前提に、大枠はこんな内容だったんですね。
ジャンボ鶴田選手というのは、アマレスでミュンヘンオリンピック代表としての
経験を通して、全日本プロレスに入団するのですが、入団会見の挨拶で、
「全日本プロレスに就職します。」
という名言(迷言?)も残していて、
強さを求め、闘う男の生き方をイメージさせるプロレス界としては異例の発言で
話題になったりもしていました。
プロレスという非日常の世界と、現実的なビジネスをリンクさせている点で、
上記のような視点は、いかにも「らしい」と思います。
私が強く印象に残ったのは、プロレスの考え方ではなくて、
ビジネスを前提としたマーケティングに対する意識なんですね。
これを読むと、専門的な勉強をしたかどうかは知らないけれど、
(でも後年は大学の非常勤講師までやってたからなぁ・・・・(苦笑)。)
ジャンボ鶴田っていうのは、ターゲットを明確にして、
どうやって次の行動動機に移してもらいたいかを確実に意識していたと
思うのです。
実力もスゴイと言われてた人だけど、こういう視点を持っているとこも
独特でしたね。
このインタヴューを読んだのは、実は最近のことで、
前後の内容から考えると、恐らくは1985年~90年当時だと思います。
今でこそ、マス・メディアの終焉などとも言われていますが、
当時としては、まだ、家に帰ったらまずテレビをつけて、朝起きたら
まずテレビをつけるのが主流だったでしょう。
「お茶の間の、お子様からおじいちゃんまで」という広いターゲット設定は
合っていますよね(笑)。
さらには、その後、様々なセグメント毎に、細分化された独立団体が
生まれては、活動継続ができなくなっていきました。
セグメントを小さくして独自性を出すのはいいが、市場規模そのものが
小さすぎると、ビジネスそのものが成り立たないというのも合っています(笑)。
これは、今の時代では、本当に現実的で、この設定の置き所に、私も何度も
苦しみました(苦笑)。
ジャンボ鶴田さんが亡くなったのは2000年でしたから、
鶴田さんもよもやこんな時代になっているなんて夢にも思っていなかった
だろうけど、今、この時代にどういう見解を持つのかは興味深いところです。
そもそも、「お茶の間」っていう場所、聞かないし、見ないものなぁ・・・・(笑)。
テレビ見ないし・・・・。
TVコマーシャルは一回経験があるだけだから何とも言えないけれど、
新聞折り込みチラシについては、もう本当に効果がみるみる落ちていくのを
目の当たりにしましたから。
大きな環境変化は、全ての前提となってしまって、少々の工夫やアイデアでは
ひっくり返せません。
「ビジネスは環境7割」というのは当たっていると思うのです。
テレビや新聞といったマスメディアは今後も相当苦しいでしょうね。
でもこれは他人事じゃないと思っていて、例えば
「良い番組をつくれば視聴率は上がる」という考えもあるでしょうが、
これは、
「大型店をつくって、良い商品を置きさえすれば売上は上がる」
いまだ信じ込んでいるのと同じような気がするんです。
逆に、
「自分のブログのアクセスを増やしたいなら、毎日書いて、良い記事を書くことが大事。」
というのは合っていると思うんですね。
情報発信と情報収集が、マスから個へと以降している環境だと思うのです。
マスメディアの将来は、私にとっては直接的には遠い他人事なんだけど、
流通・小売業にとっても根本の問題は同じなわけで、
双方の次への一手というのは互いにヒントになると思います。
そういう意味では、テレビは見ないけどテレビ業界の未来構想は着目すべきだし、
新聞は読まないけど新聞業界の次への一手は注目していなければと思うのです。
テレビは見ないけど、ジャンボ鶴田はずっと見続けている。
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