JBTAさんのHPでIBTAの記事の翻訳で紹介されていますが、
 

【小児低悪性脳腫瘍】
米国食品医薬品局(FDA)と英国国立医療技術評価機構(NICE)が小児低悪性度神経膠腫に対するBRAF阻害療法を承認しました。
FDAは、臨床試験の結果であった51%の奏効率に基づき、BRAF遺伝子変異を有する小児低悪性度神経膠腫(pLGG)に対する標的「キナーゼ阻害薬」であるトボラフェニブ(Ojemda)を早期承認してます。この疾患に対して米国で承認された初めての全身療法となります。

同時に、英国のNICEは、BRAFV600変異を有する小児低悪性度神経膠腫患者に対し、同じくキナーゼ阻害剤であるダブラフェニブとトラメチニブの併用療法を最終ガイダンス案で推奨してます。


キナーゼ阻害薬は、がん細胞が増殖する際のシグナル伝達に必要なキナーゼ(酵素)を阻害することで、増殖を抑えるための抗腫瘍作用をあらわす薬です。
日本でも、昨年秋にJBTAさんの働きかけなどもあり、ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法は「標準的な治療が困難なBRAF遺伝子変異を有する進行・再発の固形腫瘍(結腸・直腸癌を除く)」*および「BRAF 遺伝子変異を有する再発又は難治性の有毛細胞白血病」に対して追加承認されています。


このため、現在、小児の脳腫瘍に対しても保険適用可能な薬となっていますが、日本では製薬会社の収益や保険政策などの絡みもあり、希少癌などの抗がん剤では、他に同様の承認薬などがあればその薬を上回る効果があるかなど、同様の承認薬などの承認は少し壁が高くなりがちです。

でも、患者側にしたら、薬の合う合わないなどもありますし選択肢は欲しいわけで、トボラフェニブについても有用であれば、承認の方向へもっていっていただければと思います。

【膠芽腫についての研究】
膠芽腫の患者を対象としたAZD1390と放射線治療を標準治療に加えて36人の患者に対し実施した第1相試験のデータで安全性と有効性の初期指標が示されました。
4月の米国がん学会年次総会2024において、膠芽腫を標的とした治験薬AZD1390の第1相試験の結果が発表されています。
AZD1390については、標準的な強度変調放射線療法(IMRT)と併用され、特に再発膠芽腫患者において、管理可能な安全性プロファイルと有効性の初期指標を示し、治療群のひとつでは全生存期間が12.7カ月ということが示され、6ヶ月~10ヶ月と言われる膠芽腫の平均の生存期間を上回ったことが報告されました。
膠芽腫は原発性悪性脳腫瘍の約50%を占めると言われるグリオーマで、希望ある結果ですが、この治験は単一群非盲検試験といって、医師が治験患者を選んでの試験結果で、効きそうな患者さんや生存期間が長くなりそうな゙患者さんを恣意的に選択をしていることの否定ができない試験であり、今後、本当に従来の治療に加えて意味があるかや、詳しい副作用の治験が必要とされています。
でも期待したいですね。

【vorasidenibについて・・・繰り返し】
こちらは詳細は下記の通りですが、昨年の第3相の大規模治験の結果で、今までにないようなよい結果は出ていましたし、期待して待っていますが、グリオーマ患者さん誰にでも効く万能薬ではありません。

治験の概要は、グリオーマでクレード2に該当する患者で手術以外の治療歴のない16~71歳の331人をコンピュータで無作為ランダムにvorasidenib飲ませる群168人とプラセボ(疑似薬)を飲ませる163人の群に振り分けて治験を実施(試験実施中に病勢進行が認められた場合は、プラセボからvorasidenib服用へのクロスオーバーを可能として安全性も評価)しました。
昨年度末の中間報告では放射線や化学治療を必要としない、無増悪生存期間(次の治療が必要な悪化が認められない期間)の中央値が vorasidenibを飲んでいる人の中央値は27.7 ヵ月であったのに対し、プラセボ疑似薬を飲んだ人の無増悪生存期間の中央値が 11.1 ヵ月で、明確に飲んだほうがよい結果は出ています。
また昨年度末の報告時点でクロスオーバーして vorasidenibを飲むようになった人含め、331人のうち226人の人がvorasidenib継続服用していると報告されています。(vorasidenibは服用時点で有害事象が発生の場合や次の治療が必要となった場合は服用中止)

グリオーマに対する今までの抗がん剤でこのような参加人数の大規模治験で、統計的にこの結果のように顕著な効果を示した抗がん剤はなく、欧米の薬品を承認するFDAやEMAの優先承認申請が、この夏期限に申請されていますので、期待はしています。

 

でも、このvorasidenibの第2相試験では、膠芽腫やG3などの患者さん相手に実施された治験結果では顕著な結果(悪くもないし効果あったケースもありますが)は得られておらず、vorasidenibは、IDHという遺伝子変異を阻害する薬なので、遺伝子変異のある、ゆっくりと進展するタイプの低悪性のグリオーマLGG(Low-grade-glioma)には期待が持てるが、進展が早いタイプの膠芽腫やG3 gliomaには、効果があるエビデンスはありません。

【分子標的薬について】
上記の情報の薬は、いずれも分子標的薬という比較的新しいタイプの抗がん剤です。
脳腫瘍において承認済の分子標的薬としては、アバスチン(ベバシズマブ)が有名です。

アバスチンは、テモダール他の抗がん剤と併用することでよい治療成績が得られています。
腫瘍は増殖するに伴って、がん自身に栄養を供給するために血液を送りこむ血管を新生するので、アバスチンは、血管の新生を抑え、腫瘍に栄養を行き渡らせないようにして、増殖のスピードを低下させます。


分子標的薬は、癌の原因となる遺伝子や血管申請や細胞増殖の原因など標的の分子に的を絞り、腫瘍細胞を攻撃するタイプの抗がん剤です。
脳腫瘍治療において有名なテモゾロミド(テモダール)はアルキル化剤などに分類されますが、アルキル化剤は、人間の細胞の中で無秩序に増殖、転移するような細胞について、胞増殖に必要なDNAであるDNA複製阻害作用やDNAの破壊作用を持たすことで、腫瘍の増殖や再発を妨害する薬であるために、例えば、人間の細胞の中で増殖する髪の毛や爪などに副作用があり、脱毛などが発生したりその他、副作用がきついのですが、分子標的薬は、人間の分子レベルの腫瘍増加原因のみを標的とするので『比較的』従来の抗がん剤よりは副作用が軽減される傾向にあります。


でも、全く副作用がないわけではなく、皮膚や肝機能、毛髪の太さや癖への影響など副作用はあることはありますが、薬価が非常に高額になりがちで高額医療費制度の限度に張り付くようなデメリットもあります。

日本の今実施中の治験について、脳腫瘍やグリオーマなどで調べると、海外に比べて非常に少ないのが残念です。

日本の製薬会社どうか頑張ってですが、海外では複数の治験が進行中です。
もし、日本の製薬会社のほとんどが、新しいタイプの希少癌の薬を開発できる体力がないというのであれば、トボラフェニブなどのように海外で承認された薬の日本におけるできうる限りの早期承認や、例えばDIPGで実施中のCAR-T療法などの海外治験参加のスキームや施策構築などをすすめ、日本人希少癌患者のドラックロスやドラックラグによる不利益の解消を考え、すすめていって欲しく感じます。

参拝ブログ(写真中心)や野球関連などなどは主にインスタにあげてます。

プロフにリンクあります。