アップル社のブランディング | Brand Diorama

アップル社のブランディング

アップルコンピュータは、最もブランド戦略について語るのが楽しい企業だ。
創業のストーリー、製品開発のドラマ、追い出された創業者、ブランドの失墜、創業者の復活とブランドのリニューアルなどなど。
ブランド戦略、マーケティングについてのケーススタディが全て揃っているかの様だ。
ところが、マーケティングコンサル達やブランド戦略のコンサル達は、アップルについて語るのは恥ずかしいと思っているフシがある。
今更アップルについて語るのはいかにも素人くさい、という事なのだろうか。
いや、そうではなく、マーケティングの理屈では説明できない部分を実践するジョブスの手法を説明する事は、自分の首を絞めることになりかねないからであろう。

アップル社を代表する経営者、スティーブ・ジョブスは恐らくアップルブランドに関するブランド戦略の天才である。
彼は、マーケットリサーチから抽出される「顧客が何を望んでいるか」など気にも留めないに違いない。
熱心なアップルのユーザーは、iMacもiPodも、さらには6色のリンゴマークがモノトーンになる事も望んでいなかった。
マーケットインの発想からは、こんな事は不可能に違いない。

市場が望んでいるものを出すのはアップルではない。市場が思いもつかない事をするのがアップルらしい。

そういう事なのだと思う。

そんなジョブスがかつて憧れていた企業は、日本のソニーだった。
市場はあのとき、Walkmanを望んでいただろうか。
否、そんなスタイルなど誰も想像していなかった。
しかし、あの伝説の製品は世界的なヒットとなった。
企画開発の根拠は井深氏の「こんなものがあればお客さんは喜ぶだろう」という発想だけだったのに、である。

マーケティングから製品を作り出すのは、「守り」の姿勢であり、それは旧態依然としたブランドが保身のために行う「夕日のブランディング」である。

挑戦的なブランドであるならば、挑戦の姿勢を貫かなければならない。

アップルは、未だ守りに入る気配はない。
本日発表された「ビデオiPod」は、以前から噂されていた製品であったが、ついにオンラインビデオ配信サービスとともにデビューした。
音楽産業に次いで、映画産業にまで革新を迫っている。
この流れについてこなければどうなるかという、デジタルネットワーク時代の流通を頭の古い映画産業の重役達に突きつけている。

企業のトップがプレゼンが上手いとブランドは成長し続ける。
これだけは言えると思う。

記事参照:http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000047674,20088791,00.htm