Brand Diorama
ブランド戦略、ブランディングなど、企業を悩ますマーケティング手法について考えるブログです。
マネージメントの現場で考えた事、外資系のブランド戦略専門コンサルティング企業で体験した事などを日々書き綴っていきたいと思います。
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放送と通信の融合?

今度は楽天がTBSを買収とか。
村上ファンドも暗躍しているとか。
放送と通信の融合が、またもや脚光を浴びている。
問題は、それを放送している側の人間が、「放送と通信の融合」を理解していなかったり、否定的な立場から論じていたりする事だ。

放送と通信の融合自体は、何も難しい問題ではない。

放送には現状2種類の番組がある。
生放送とそれ以外だ。

生放送は、現在進行しているイベントの情報が主体なので、リアルタイムに観る事に価値がある。
特にスポーツ中継などは、時間を共有する事に意味があるとも言える。
しかし、例えばドラマなどは月曜の夜9時に、テレビの前に座っている必要があるだろうか。
ビデオデッキの普及により、実は放送の時間軸というのは既に意味をなさなくなっている。

放送とは、一つの放送局が時間軸に沿って、不特定多数の人々に番組を送信する事であり、通信とはある人が別の人とコミュニケーションする事だと考えられる。

テレビとパソコンの違いというのは、既に正確ではない。
放送と通信を融合させるデバイスはすでに流通している。
HDDレコーダーがそれだ。

HDDレコーダーの仕組みは、パソコンとそれほど違わない。
CPUがあってハードディスクがあって、OSがある。そしてチューナーをつけてテレビ接続用のビデオボードがあれば、HDDレコーダーの完成だ。
これに、LANボードをつけたら、完全に放送と通信が融合されたようなモノだ。

DVD再生の、機器内部の転送速度は4.5MBPSという話を聞いたことがある。
すると、光ファイバーならDVDの情報を劣化無く送受信できるという事になる。
そうした取り組みも既に行われており、普及すればレンタルビデオも廃業であろう。

という事で、ネットに繋がったHDDレコーダーを中心に何が出来るかを考えるのが、放送と通信の融合の基本である。

ちなみに、こんな記事を見つけた。

TBSとツタヤのCCCが、ネット事業で共同の会社を設立していた。
楽天の三木谷氏とツタヤの増田氏は関係が深く、そう考えるとこれはそう唐突な話ではないのかもしれない。

アップル社のブランディング

アップルコンピュータは、最もブランド戦略について語るのが楽しい企業だ。
創業のストーリー、製品開発のドラマ、追い出された創業者、ブランドの失墜、創業者の復活とブランドのリニューアルなどなど。
ブランド戦略、マーケティングについてのケーススタディが全て揃っているかの様だ。
ところが、マーケティングコンサル達やブランド戦略のコンサル達は、アップルについて語るのは恥ずかしいと思っているフシがある。
今更アップルについて語るのはいかにも素人くさい、という事なのだろうか。
いや、そうではなく、マーケティングの理屈では説明できない部分を実践するジョブスの手法を説明する事は、自分の首を絞めることになりかねないからであろう。

アップル社を代表する経営者、スティーブ・ジョブスは恐らくアップルブランドに関するブランド戦略の天才である。
彼は、マーケットリサーチから抽出される「顧客が何を望んでいるか」など気にも留めないに違いない。
熱心なアップルのユーザーは、iMacもiPodも、さらには6色のリンゴマークがモノトーンになる事も望んでいなかった。
マーケットインの発想からは、こんな事は不可能に違いない。

市場が望んでいるものを出すのはアップルではない。市場が思いもつかない事をするのがアップルらしい。

そういう事なのだと思う。

そんなジョブスがかつて憧れていた企業は、日本のソニーだった。
市場はあのとき、Walkmanを望んでいただろうか。
否、そんなスタイルなど誰も想像していなかった。
しかし、あの伝説の製品は世界的なヒットとなった。
企画開発の根拠は井深氏の「こんなものがあればお客さんは喜ぶだろう」という発想だけだったのに、である。

マーケティングから製品を作り出すのは、「守り」の姿勢であり、それは旧態依然としたブランドが保身のために行う「夕日のブランディング」である。

挑戦的なブランドであるならば、挑戦の姿勢を貫かなければならない。

アップルは、未だ守りに入る気配はない。
本日発表された「ビデオiPod」は、以前から噂されていた製品であったが、ついにオンラインビデオ配信サービスとともにデビューした。
音楽産業に次いで、映画産業にまで革新を迫っている。
この流れについてこなければどうなるかという、デジタルネットワーク時代の流通を頭の古い映画産業の重役達に突きつけている。

企業のトップがプレゼンが上手いとブランドは成長し続ける。
これだけは言えると思う。

記事参照:http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000047674,20088791,00.htm

レクサスブランドの情報量

ブランド戦略、ブランディングという考え方を日本でいち早く取り入れたのは、自動車メーカーだったかもしれない。
トヨタや日産という企業ブランドがあり、カローラやサニーという製品ブランドがあり、それぞれのブランドについてのマネージメントが行われている。製品ブランドを「ペットネーム」と呼んでいた時代から、それぞれのブランド毎のコミュニケーション戦略が練り上げられていた。

新型車一台の生産ラインに投資する金額だけで数百億円も掛かる産業であるので、あらゆるマーケティング手法を用いて顧客に認知してもらうのは当然かもしれない。
そして昨今のブランド戦略の話題として旬なのは、なんといってもレクサスだろう。

レクサスは、トヨタがプレミアム市場を狙って送り出した新たなブランドである。
競合するのはメルセデスやアウディ、BMWなどのドイツ車ブランド。
ポジショニングを見るまでもなく、トヨタとメルセデスでは、ブランドの方向性はまるで違う。
「トヨタ」というブランドでは、1000万円のクルマは売れないが、自動車メーカーとしてはそういった高価格帯の商品はどうしても欲しいのだろう。
まあ、収益率がまるで違うので当然といえば当然だろうが。

今回、トヨタがレクサスを立ち上げるに当たり面白かったのは、ブランドを構築するためにトヨタが取った戦略が「情報量で圧倒する」というものだった。
主要な全国紙、経済紙、雑誌、ワールドビジネスサテライトを始めとするテレビ番組でこれでもかといわんばかりの報道が行われていた。

これは、トヨタが実に用意周到に情報を用意し、それぞれのメディアにリリースしたかを物語っている。
レクサスとは何か。アメリカでの実績はどうか。トヨタは何を狙うのか。どれくらいの店舗を構え、どんな接客をするのか。
レクサスの広告やCMは、他の自動車関連の広告に比べて、圧倒するほど多かったとは思えない。
トヨタは、PRによってブランドを作る方法を見いだした、とも言える。

実は、強いブランド程語るべき内容が多い、という法則がある。
例えば家電品にしても、クルマにしても、時計やスポーツシューズにしても、プレミアムなブランドには、必ずそれについて蘊蓄を語るコアなユーザーがいる。
市場で確固たるポジションを確立しているブランドとは、ユーザーに記憶される情報が多いという事であり、情報量が増えるとブランドの価値も増してゆく。

自動車に例えるなら、「日本グランプリでポルシェに勝ったスカイライン神話」などがその情報にあたる。
プロジェクトXで取り上げられた企業の株価が上がるのも、同じ原理と考えられる。

決め手は情報量

トヨタはこれまで、どちらかというと「安くて良い製品」を「ディーラーのセールスマンのこまやかなサービス」で売ってきた企業であった。
もちろん、マツダの壮大(かつ壮絶)なブランドの実験や、日産の企業ブランド戦略の推移、ホンダのF1をつかったヨーロッパ市場でのシェア拡大などもつぶさに観察してきたに違いない。

そして、「プレミアムブランドに情報量が必要なら、それがユーザーによって醸し出されるのを待つのではなく、始めから用意してしまおう」という戦略に行き着いたのではないかと推測される。

実にトヨタらしい効率的なブランド戦略と言えるが、一つ懸案事項がある。
プレミアムブランドにはプレミアム、つまり「希少性」というのが大切な要素であるが、レクサスはいきなり全国いたる所にディーラーを構えてしまった。
お金があっても買えない、という情報だけは初めから無くなってしまったのだが、市場はそれをどう評価するであろうか。

実に興味深い。

ソニーの失敗

参考記事

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0509/22/news047.html

ソニーがまたもやリストラを行う。一昨年も全世界で2万人のリストラを行ったのだが、業績は一向に戻らなかった。
かつてはホンダと並び日本を代表するブランドともてはやされたものだが、迷走はまだ収まりそうにない。

生活者はソニーブランドに何を期待していたのか、ソニーの経営者がそれを理解していないのが原因だ。

「これが最高の技術です。だからこれしか売りません」という一本筋の通ったエンジニア魂を感じさせるのが、以前のソニーであった。

まず、1990年代までSonyの戦略は失敗が多かった。
β規格やNEWSというワークステーション、Vaio以前のPCなど失敗だらけといってもいい。
それでもSonyは独自開発の技術にこだわり、しかもこれが最高という製品を発表してきた。
性能でいったらVHSよりもβだ、プロが使っているのはSonyだと言われていたのだ。
それは、井深 大、盛田昭夫というカリスマが失敗を恐れさせなかったからだと言えよう。

現在のソニーの迷える姿は、家庭用テレビのラインナップにも見る事ができる。
トリニトロンという優れた映像技術があったからこそ、ソニーはプラズマや液晶の分野で出遅れてしまったのかもしれない。
だからといって、製品ラインアップにプラズマも液晶も揃えてしまうのはソニーらしくないのではないか。
ソニーはこれが最高だと考える。だからこれを売る。
それこそがソニーをここまで成長させた企業姿勢ではなかったのか。
ソニーブランドとは、ユーザーに最高の商品を提供するという信頼の象徴ではなかったのか。
経営者の思想や企業文化からくる姿勢であり、商売上手ではないがプロジェクトXのネタには困らないという職人達の存在だったのではないか。
プラズマと液晶を比べ、(実際に生活者は購入時に比較検討をする)例えばプラズマが優れていると思えばプラズマしか作らない。もしソニーがそういう態度なら、ブランドイメージは変わらないだろう。

標準にならない事への恐怖

ソニーの経営者達は、負けられないプレッシャーと戦っているのだろうと思う。
売れるものを作らなければならない。そのためには標準になる技術を採用しなければならない。

現在のソニーからは、格好いいメッセージを受ける事はできても、ライフスタイルを一変する様なモノを見つける事ができない。
流行を追いかけるマーケティング会社になったソニーには、もはやブランド価値はない。
かつてアップル社のスティーブジョブスが憧れたソニー。
あの頃の姿に戻るためにも、もう一度「生粋のエンジニア」が見せる未来のビジョンが必要だと思う。

CCO コーポレート・コミュニケーション・オプティマイゼーション

CCO コーポレート・コミュニケーション・オプティマイゼーション

とは、今作った造語である。
なんだかこうやって略すると、いかにもマーケティング用語に見えるから便利だ。

コーポレートコミュニケーションとは、企業と株主、顧客、マスコミなどいわゆるステークホルダーとの関係を表す言葉で、IRをはじめ説明責任や企業倫理にまで話が及ぶ。
そういった活動を、今までは広報やPRという役割の人々が行ってきた。
新聞やマスコミ、店舗や店頭が企業と顧客を結ぶ接点だった時代は、それでも良かった。
メディアが多様化してくると、広報の役割も煩雑になった。
言うまでもなく、インターネット技術はコミュニケーションの規模と質を変貌させた。

いまや企業は、2ch.netで自社がどう書かれているかまで気にしなければならなくなった。
ましてや個人のブログまでチェックするとなると大変だろう。
しかし、そこでの評判を無視する訳にはいかない。

前回、ブランドとは評判だと書いたが、現在その評判はこうしたサイトを経由して広がっている。
例えば、kakaku.comやamazon.co.jpのレビュー。
買う方はそれらの情報を参考にして決める。
良いという評価と悪いという評価、どちらが多いか。

どんなにいい商品を作っても、どんなに広告にお金をかけて「格好いいブランドイメージ」を訴求しても、実際に消費者に選ばれなかったら事業としては失敗である。
「いいものを作ればお客様は判ってくれる」というのは間違いではない。
ただし、それがいいものだという情報をお客様に届き、それを信じてくれたなら、の話である。

そこで企業としては、どうにかして情報を届けなければならない。
新製品がでれば、躍起となって広告にお金をかける。展示会も開く。
セミナーを開き営業マンに勉強させる。
Webサイトにも新製品のページを開設する。

だがしかし、ここに大きな問題がある。
この資本主義が進んだ日本では、だれも企業の言う事など信じないのだ。
「ウチの商品は他社さんに比べて...」なんて企業の人間が言ったところで、信用される訳がない。
そりゃ誰だって自社の製品を良いと言うに決まっている。売りたいからだ。

広告が無意味とは言わないが、費用対効果は思った程でない。
広告を作る側だって、ストレートに「自社の製品はこんなに素晴らしい」と言う広告は作りたがらない。
インパクトのあるCMで印象に残せばそれでいいと思っている。

コーポレートコミュニケーションが注目されるのはこのためであろう。
どうすれば消費者に信頼して貰えるのか。
信頼されない企業は、もう生き残る事はできない。

ブランドを確立して強くする事は、つまり信頼される企業になる事と同義である。
有言実行でなければいけない。

では、何を伝えると信頼される企業になりえるのか。それこそが現代のブランド戦略であろう。

これも難しい事ではない。
1. マーケットの中で、そのブランドがどのポジションにあるのか。そして競合と比較して、どのポジションにシフトする事が収益を最大限に引き上げることができるのか。
2. そのポジションに移るには、どういう評判を得るべきか。
3. その評判を得るためには、どういう情報を流通させるべきか。
考える事はこの3点でいい。

やっと表題の話になるが、この「評判を得るための情報」をどうやって流通させるかが「コーポレート・コミュニケーション・オプティマイゼーション」である。
一つの評判を得るために、あらゆるメディア(店員の態度や商品も含む)でのメッセージを考える。
そのためには、メッセージはできるだけシンプルでなければならず、しかも客観的でなければならない。

これについては、もう少し考察していきたい。

ブランド戦略って何?

ブランド戦略という言葉自体、マーケティング用語としては古くなってしまった感もある。
ある有名デザイナーは「ブランディングなんて言葉はもう死語ですよ」と語っていたとか。
果たしてそうだろうか。というのも、やはりブランドを強くする努力をしていた企業と、そうでない企業の差は歴然としてあるからだ。

ではブランドとは何だろうか。
私はそれは「評判」だと考えている。
評判が集約され、社会の中で共通の知識となったもの、それが「強いブランド」と呼ばれるものだ。
そしてブランド戦略とは、市場においてどういう評判を与えられるべきかを考え、その評判を得るための戦略の事を言う。

単純な事だが、簡単な事ではない。

ブランドを強く育てるために、インターネットをいかに利用するべきか、これから考えていきたい。