千葉県市川市の結婚相談所 Le Soleil ~ル・ソレイユ~の代表カウンセラー本田です

 

 

これは実話を元に作成したフィクションです

 

午後2時頃ーー携帯電話が鳴った。

画面を見ると、70代女性会員様からだった。

おそらく、お見合い終了の連絡だろう。

そう思いながら電話に出た。

 

「もしもし~ お見合い終わったんだけど…」

 

いつもより少し歯切れの悪い声だった。

私は嫌な予感がした。

 

「お疲れ様でした。いかがでしたか?」

 

すると彼女は言った。

 

「相手の男性、珈琲とケーキを頼んでくれたんだけどね。」

少し間が空く。

 

「30分くらいしたら、私を残して帰っちゃったの。」

私は思わず言葉を失った。

お見合いの席で30分。

決して長い時間ではない。

何があったのだろう。

 

「何かありましたか?」

そう尋ねると、彼女は少し照れたように答えた。

 

「実はね、入れ歯を忘れちゃったの。」

なるほど。

理由を聞いて、私は思わず天を仰ぎたくなった。

前日の打ち合わせでは服装や持ち物についても確認していた。

おそらく服装は問題なかったと思う。

ただ、その日に限って最も大切なものを忘れてしまったらしい。

もちろん、それだけが理由だったのかは分からない。

しかし、お見合いの第一印象に大きく影響したことは間違いなかっただろう。

すると彼女は続けた。

 

「でもね、私もあんまりタイプじゃなかったから断っといて。」

 

本心だったのか。

それとも少し傷ついた気持ちを隠そうとしたのか。

その答えは本人にしか分からない。

婚活では誰しも断られることがある。

何歳になっても、その瞬間は決して気持ちの良いものではない。

 

 

「まずはお相手からのお返事を待ちましょう。それから考えても遅くないですよ。」

そうお伝えすると、

 

「分かったわ。」

と短い返事が返ってきた。

 

そして、その日の夕方。

予想していた連絡が届いた。

お相手相談所からの『お断り』だった。

私は会員様へ結果をお伝えした。

すると意外にも落ち込んだ様子はなかった。

むしろ、

 

「そう。」

と、あっさりした反応だった。

長い人生の中では、もっと大きな出来事を経験してきたのかもしれない。

ただ、仲人として一つ感じたことがある。

婚活では条件も大切だ。

年齢も、収入も、住まいも大切だろう。

しかし最後に人の心を動かすのは、ほんの少しの準備と心配りなのかもしれない。

この日のお見合いは実らなかった。

けれど、彼女の婚活はまだ終わらない。

むしろ、本当の意味でのスタートはここからだった。

 

                      第8話へつづく