正しいフェイクがあるのか?真実は騙すのか?
ひとは、信じたいものを信じていまう。
信じたくないものは信じようとしない。
誰も見たくないものを、真実とは思いたくない。
そしてフェイク(でっち上げ、捏造)は、誰かにとっては都合のよいものだ。
騙されて心地よいものも確かにある。
「群衆」というのはそういうものだろう。私もそのひとりなのだろう。
「国葬」を見たあとに、やっぱりジワジワと「粛清裁判」が見たくなってしまった。前もって公式ガイドブックは購入してあったのでざっと読んでみた。新聞の切り抜き書評も映画館に貼り出されてあったので、写メで撮って読んだりした。それでも「粛清裁判」が何者なのかよくわからなかった。解説文がわかりにくかったのではなく、そんな事があり得るのか!という気持ちがして信じられなかったのである。映画を見終わってまだ不審に思えて仕方がなかったが、もう一度ガイドブックの「粛清裁判」の部分と新聞記事を読んでよくわかった。
要するにスターリンという独裁者の国民支配の為の映画なのだから、都合のよい部分だけが実写で、裁判官や被告は俳優の演技なのかと思い込んでいたが、演技しているのはホンモノの裁判官や被告だった。ホンモノの被告が、フランスと密通しソビエト連邦を転覆させようとスパイ行為などをしたと告白する「産業党」に所属する大学教授やテクノクラートたちで、法廷で罪を自白し裁判官から死刑を宣告される。
しかし実は、本人が強要(脅迫)されて演技をしているのである。演技していないのは、裁判所内を埋めて傍聴し判決に喝采する観衆や、裏切り者を処刑しろと叫んでいる裁判所外のデモ隊だけなのだろう。
ロズニツァ監督への日経新聞のインタビュー記事によると、「裁判は1年をかけて準備され、陳述もシナリオが出来ていた。協力を拒んだ被疑者は公開裁判無しに処刑された。」 被告8人が関与したとされる「産業党」という反政府組織自体もフェイクであったと判明している。被告たちのなかには恩赦された者もいるが裁判官たちの中にさえ後に処刑された者もいる、と公式ガイドブックにある。このような「大粛清」は他にも行われ、いわゆるスターリンの大粛清では78万人が処刑されたとフルシチョフの時代に報告されているそうである(ウィキペディアより)。
私にとってのスターリンのイメージは、昔から日本の左翼もソビエト共産党も自民党も否定する稀代の独裁者である。しかし、レーニンの後継者でもあり私にはこれまでよくわからなかった。しかし近年のロシアではスターリンを再評価するする向きもあるという。もちろんこの映画も、重ねて言うがスターリンを再評価しようという映画ではない。
ところで先日、朝日新聞にちょうど10年前に「ジャスミン革命」と呼ばれたチュニジアの現状が紹介された。チュニジアは、強権政治で圧政に苦しんだ民衆が起ち上がり民主化運動「アラブの春」の唯一の成功例と言われていた。しかし、近年では経済状況も改善せず生活苦から密航者も多く、他国でも政治の腐敗や内戦が起きていると報道されている。民主主義体制が必ずしも成功裏に終わるとは言えない例なのかもしれない。
またコロナ禍中、世界を揺るがすもう一つの出来事「米国大統領選挙」が行われ、現職のトランプ大統領が敗北してバイデン次期大統領の就任が真近い。トランプ大統領はいわゆる民主主義やリベラリズムに反する言動が多く、アメリカの知人で支持する人に会ったことがないが、不思議に期待したくなる所があった。今にして思うと稀代の劇場型政治家、悪く言えば演技者であったのかもしれない。典型的なのが北朝鮮との友好関係だった。どのように理解したらいいのか私には不可解であったが、正しいことも間違ったことも彼自身が大衆の心を演じるフェイクだったのかもしれない。北朝鮮の大衆の人たちから見ると、われわれ西側の政治や社会情勢もフェイクに見えているのかもしれない。
コロナと自粛が始まってから9ヶ月、時間が止まってしまっているかのようである。その間に米国大統領選挙がコロナと人心を二分したという面では、何か共通点があったような気がしてならない。今はツイッターなどを通じて世界的にも信じられないようなフェイクニュースが流されて、不確定性的な情報に全世界の群衆が一斉に振り回される時代なのかもしれない。 (12/25一部修整)
(※2020年6月「東京新聞」より 多数の同様な画像があり、もちろんフェイク画像ではあり得ない。)
















































