こんにちは、とーるです。

やえやまカスタム・M586マッチカスタムは、クラウンモデルのガスリボルバーをカスタムベースとして製作したスピード競技専用のエアソフトガンです。

※エアソフトガンはプラスチック弾を使用する殺傷能力を持たない安全な玩具銃です。
 (やえやまカスタム・M586マッチカスタム、スピードシューティングに対する適正は純正と比べて段違い。グリップ等を塗装して多少の高級感を出しているが見た目はほぼ純正そのままを保っている)

これまで散々解説をしてきた本銃ですが、以前まとめた際には無かった最新の知見もございますので、あらためて紹介記事を書きたいと思います。

※解説するのは私が普段競技で実際にメイン使用する機種についてとしますので、必ずしも同型機種の性能を保証するものではありません。


【定番のカスタムを更に発展】
クラウンモデルのエアリボルバーのシリンダーをガスリボルバーに移植する事でフルサイズのカートリッジを使用可能となり効率的なリロードが実現する定番のカスタムを、更にスピードシューティング競技に耐える品質を目指して特化させたのが本カスタムです。
 カスタムの完成には数年の歳月を費やしており、約1年半前に初めて店舗限定のローカルマッチで使用開始、数多くの改修を経て今年に入ってようやく公式競技での実用化を実現。今なお進化を続ける自慢のリボルバーです。


【ダブルアクション速射の安定性】
5m命中精度試験の結果です。着弾が最も多く集まっている太枠の円は精密競技APSのブルズアイで使われる5cmターゲットを再現した物です。

12発中2発を除く全ての弾が5cm円内に命中しており、なおかつ外れた2発も直径8cm以内に留まっている事を考えれば、ライブカート式リボルバーとしては破格の命中精度があると言えるかと思います。

しかし何よりこの銃の真価は命中精度試験の方法にあります。

もしこれがシングルアクションでじっくり狙った結果であれば世の中に似たような性能のリボルバーはごまんとある事でしょう。しかし、実はこの結果は「スピードシューティングさながらのダブルアクション速射」によるものなのです。

この圧倒的な速射安定性がやえやまカスタム最大の武器です。

ダブルアクションの高速連射を行っても手ブレ以外の影響を殆ど受けずに命中精度が低下しないカスタム理論を追求する事に最も多くの時間を費やしました。
この驚異的な安定性は、シリンダーパーツの擦り合わせ加工による回転精度の向上・バレル固定化・バレル先端のテーパー加工・フォーシングコーンの拡張・そして後述の「整流2点パッキン」による弾道安定化によって実現します。


【整流2点パッキンとは】
カメラをバレル出口に置いてホップパッキンの様子を正面から撮影した画像です。

リボルバーのエアソフトガンは、シリンダーとバレル間の隙間、所謂シリンダーギャップの存在により速射時には特に命中精度が安定しなくなる事が知られています。
整流2点パッキンは、宮川ゴムの長掛け2点パッキンを加工使用する事で命中精度を飛躍的に向上させる事に成功した、やえやまカスタムオリジナルの特殊な役割を持つホップ機構です。

(以前はクラウンモデル純正パッキンを加工していましたが、とても繊細な加工が必要で手間がかかるため代替品を模索した結果、宮川ゴム長掛2点パッキンにたどり着きました)

やっている事は切ってはめ込んで突き出し量を調整するだけですが、特筆すべきはそのメカニズムと調整の理論にあります。

このパッキンの目的は飛距離を向上させる事ではなく、2~6m程度の近距離で命中精度を安定させる事にあります。
リボルバー、特にライブカート式リボルバーはシリンダーとフォーシングコーンの間にある隙間「シリンダーギャップ」の存在によって弾道がランダムに散けてしまう現象を起こします。エアソフトガンにおけるプラスチックBB弾は実銃と違って非常に軽いため特に大きな影響を受けます。このことは、パチンコ弾とピンポン弾を投げる事を想像すれば簡単にご理解いただけるかと思います。

たいていのリボルバーエアガンの命中精度が低い理由はこのシリンダーギャップによる影響です。それを防ぐ決め手になったのが整流2点パッキンです。
(実はこの画像はホップがかかって飛距離に影響を及ぼしてしまうパッキンの突き出し量。ここからもう少し僅かに突き出し量を下げると適正な整流2点パッキンとなる。調整自体はかなりデリケートで、何度も試射を繰り返す必要がある)

整流2点パッキンの突き出し量はBB弾の回転が飛距離に影響を及ぼさない程度の最小限に留める必要があります。その調整された絶妙な躓きがシリンダーギャップの弾道変化を修正する効果を発揮します。

突き出し量の調整はかなりデリケートに感じますが、一度調整してしまえば整流2点パッキンの効果が狂った事はいまのところありません。

これにより、整流2点パッキンがリボルバーにおいては単なるノンホップバレルよりも高い安定性が得られる事を見い出しています。

2点型のパッキンを採用する理由は、非常にルーズなクラウンモデル純正アルミインナーバレルを用いた場合でもBB弾がパッキンに当たる確率を上げるためです。サバイバルゲームのような長射程化や安定した縦回転を与えるためではなく、あくまでスピード競技に必要なダブルアクションの近距離命中精度を重視するものです。

回転の強弱の安定性は目的としておらず、BB弾が躓いて弾道が修正されればそれで良いため、APSのような点を狙う精度とは異なりスピード競技の円形ターゲットに安定して命中可能な精度、5mでおおむね5~8㎝に集弾するレベルを目標として最初からある程度の妥協を許容する設計思想となっています。

命中精度の許容値は、後述のトリガーフィーリングと初速の兼ね合いやパッキンの突き出し量などの各種セッティングを、度重なる加工と射撃試験を組み合わせた検証によって最適な範囲として設定したものです。


【圧倒的なトリガーフィーリング】
市販ガスリボルバーのダブルアクショントリガープルは通常2.5~3.0㎏程度、軽くても2.0㎏以上あるのが普通なのですが、やえやまカスタムはそれらを圧倒的に凌駕する約1.3~1.5㎏のトリガープルを実現しています。

速射時の手ブレを大幅に抑制する事はダブルアクション命中精度の向上につながります。


【59%ハンマースプリング】
トリガープル軽減の秘密は特注品の59%ハンマースプリングです。 純正スプリングの59%のバネ硬さは、バネとしての耐久性や素材、柔らかくするための線径を吟味して計算されたもので、柔らかいスプリングの使用による初速低下を最小限に抑える事に成功しています。

ハンマースプリングはバネ製造のプロである有限会社杉浦発条様に製作を依頼しました。

クラウンモデル純正スプリングと同じ寸法で製作されているため、クラウンモデル特有のフィーリングを損なう事無く性能を引き上げる事に成功しました。

具体的には、線径を細くする事でバネを柔らかくしつつ、それに伴う強度不足や放出バルブに対するパンチ力の低下、経年使用の変形を軽減するためにあえて金属材料としては硬いSUSグレードのステンレスを用いて製作されています。

バネとしての硬さと素材の強度のバランスを考慮した至高のオリジナルカスタムパーツです。


【フォーシングコーン気密システム】
クラウンモデルを始めとした市販ガスリボルバーの多くは、前後にピョコピョコ動くインナーバレルをシリンダーに密着させてガスの気密を取ります。

やえやまカスタムでは、命中精度の低下を防ぐ目的およびトリガーフィーリング向上のためインナーバレルを固定化。それにあわせてフォーシングコーンも短く削っています。

この加工を施すと、シリンダー回転が滑らかになる代わりにガスの気密が無くなり初速低下が起きます。それを補うのが独自のフォーシングコーン気密システムです。

これには滑りが良いフッ素樹脂テープが用いられ、トリガーフィーリングを阻害せず気密を取ることができ、インナーバレル固定化による初速低下は最小限に抑えられます。


【ガスルート破損対策】
クラウンモデル純正のガスルートは透明で柔らかいホースが使われています。

やえやまカスタムでは、ポリウレタン製の耐圧6mmホースに変更することで、競技でハードに使い込んでも絶対に破損しない強固なガスルートとしています。

耐圧ホースの欠点として、純正のガスルートより硬い素材なためトリガーフィーリングの悪化やシリンダーの回転不良が起きやすくなるという事が挙げられます。

やえやまカスタムでは、そのようなトラブルを防ぐため細心の注意を払ってガスルートの長さを決めており、更に必要に応じてガス放出口を短く加工します。

この際、初速低下を引き起こさぬよう精密に加工を施す必要があり、カスタムにおいて最も気を遣う作業となります。
また、ガス放出口パーツそのものの破損対策もあわせて行っています。 ABS樹脂製の放出口パーツに耐衝撃接着剤を塗布してから研磨整形しなおす事で強度を高める事に成功しています。

画像左が加工済み、右が純正の放出口パーツなのですが、本来の機能を損なう事無く耐久性と性能を向上させる事ができます。
また、ガスタンク~ガスルートホース~放出口までの3個のパーツは接着剤を一切使用せずはめ込むだけで組み立てる事が可能となっており、メンテナンス性の向上も実現しています。

※2024年9月10日追記

【カートリッジ】
使用するカートリッジは東京マルイのエアリボルバーパイソン用のものです。カートリッジ先端にBB弾を込める方式のため命中精度が安定しやすいため採用しています。

フッ素樹脂テープを用いてガタつきを防止できるカートリッジも使用しています。ただ、このカスタムはクラウンモデルの純正カートリッジでは絶大な命中精度向上の効果を発揮したのですが、東京マルイのカートリッジに関してはそこまで大きな変化はありませんでしたので気休め程度のカスタムです。


【純正の持ち味を生かす事】
ここまで社外品パーツを多く紹介してきましたが、それ以外は殆ど全てが純正品をそのまま、あるいは加工して使用しています。

アルミ製のインナーバレル等、スピード競技の距離であれば特段変更する必要は無く、元の機種の使用感を残したまま精度を向上する事に成功しています。

「むやみやたらに不要なカスタムはしない」
「元の質感をなるべく残す」

これがやえやまカスタムの特徴であり、カスタムの理念となっています。

カスタムの具体的な製造工程に関しましては、簡略化された手順ならびに品質管理の指標が確立されておりますが、それに関しては以下の記事に記載しています。

【性能諸元】
名称:やえやまカスタム・M586マッチカスタム
カスタムベース:クラウンモデルガスリボルバーM19&エアリボルバーM586(4インチ)
全重量:約720g(光学サイト含む)
本体重量:約500g
初速:約52m/s(BB弾0.2g東京マルイ)
トリガープル:約1.3㎏(ダブルアクション)
約0.5㎏(シングルアクション)
グルーピング性能:4.5~7.5㎝(5mダブルアクション速射12発)
パワーソース:サンプロジェクト・ミニレギュレーター2(CO2外部ソース0.5MPa)
カートリッジ:東京マルイエアリボルバー・パイソン用カートリッジ
サイトシステム:ノーベルアームズMK Ⅲ・WIDE、コクサイシャノン等の大口径チューブ型ドットサイトを使用
ホップ仕様:整流2点パッキン(宮川ゴム長掛け2点パッキンを加工使用)


【さいごに】
当面の目標はこのガンでエアガンスピードシューティングの最高峰「ジャパンスティールチャレンジ」に出場する事です。ゆくゆくは良い結果を残したいとも考えています。

そして最終的に、私の活動がきっかけとなって、減少の一途を辿るライブカート式リボルバーの競技者がもっと増えてくれたらなと思っています。

私は私自身の夢をリボルバーに載せているのではなく、リボルバーそのものが私の夢なのです。そして、その夢はまだまだ始まったばかりです。