私は気がついた。

「銃本体の精度を確認しなくては」



やえやまとーるです。


 クラウンガスリボルバーの競技専用(変態)カスタム。


これまで、スピードシューティングに耐える命中精度を検証してきました。


今回、ほぼ納得行く結論にたどり着きましたので記事にします。


(前回までの検証結果:東京マルイのエアリボルバー用カートリッジを使用する事で、ライブカート式のガスリボルバーとしては充分すぎるダブルアクションの精度と安定性を実現)



【銃そのものの命中精度はどうなのか】


クラウンガスリボルバーの命中精度を高めた結果、スピードシューティングに充分耐える性能を手に入れる事が出来たと言えますが、これまでの検証を振り返って、ある事に気がつきました。



これまで一貫して行ってきたのは、スピードシューティングを想定したホルスタードロウとダブルアクション速射の検証です。


しかしながら、これは射手の手ブレ等の影響も含めた実践的な性能の検証であり、銃そのものの精度は検証できていなかったのです。


(命中精度の本格的な検証を実施する前、グルーピングは14センチ程度が限界だった…)


精度を高めていった結果、適当に撃っても5メートル先のターゲットに命中させられるようになりました。それもあって、銃そのものの精度を全く気にしなくなってしまったのです。


ダブルアクション速射でフライヤーが出た場合は、射手の腕の問題なのか銃の精度の問題なのかが不明です。


「銃本体の精度を確認しなくては」


ということで、シングルアクション委託射撃で命中精度を測定してみました。


ダブルアクションの時に結果が良かった東京マルイカートリッジと、ばらつきが見られた純正カートリッジの両方を比較する事としました。


予想としては、当然シングルアクションの結果もダブルアクションの時と似たような物になるはず。


(左:東京マルイカートリッジ、右:クラウン純正カートリッジ)


【シングルアクション委託射撃での検証】

驚いた事に、東京マルイカートリッジとクラウン純正カートリッジとでは、基本的にはどちらも狙った場所によく集まる結果となりました。

なぜかダブルアクションの時と違いシングルアクションは東京マルイのカートリッジと遜色ない結果です。

おそらく命中精度を高める幾つもの調整が功を奏したのでしょう。もちろん命中精度が高い事は嬉しいのですが、なぜ純正カートリッジの命中精度まで安定して中央付近に集まっているのか、原因がわかりません…

測定を何度か繰り返した結果、ある時のクラウン純正カートリッジに注目すべき事象が見られました。

珍しく一発だけ大きく下にターゲットを外す着弾点があったのです。(それが先ほどの画像右の結果でした)

東京マルイのカートリッジでも、たまにフライヤー的な現象はありますが、数センチに収まるレベルです(画像左参照)。

しかし、委託射撃でターゲットそのものを大きく外したのは、この時のクラウン純正カートリッジの一発だけだったので注目しました。

ここで鍵となるのは、シングルアクションとダブルアクションの違いです。

(以前、純正カートリッジを使用したダブルアクション速射。東京マルイに比べて上下左右のバラツキが大きくなる傾向がある)

純正カートリッジのダブルアクションは上下左右にバラツキがある印象でした。

当然、今回のシングルアクション委託射撃の検証でもそうなると思っていたのですが、結果は東京マルイと遜色ないグルーピングの良さでした。

予想を裏切る結果はなぜ起きたのか…

(再掲:今回のシングルアクション委託射撃)


【カートリッジ方式の違いとは?】

既に何度も述べているとおり、ダブルアクションでは弾がばらついた純正カートリッジでも、シングルアクションになるとこの一発を除いてほぼ毎回安定したグルーピングを発揮するようになりました。

「東京マルイのカートリッジと純正カートリッジの違いはなんだろうか」

答えはカートリッジ方式の違いにあると考えます。

(カートリッジ方式による違いをわかりやすく図解してみた)

東京マルイのリボルバーはカートリッジ先端に弾を詰める「先込め方式」を採用しています。一方、クラウンモデルは「後込め方式」であり、両者には特性の違いが顕著に出てきます。

先込め方式に比べて、クラウンの後込め方式は、弾がバレルを通過するまで距離が長く障害物に接触する確率や影響度も高くなります。その障害物の存在こそが、予期せぬフライヤーの発生原理なのです。

具体的には、イラストに示した②、フォーシングコーンとシリンダー間の段差が大きく影響してきます。これは、いわゆるシリンダーギャップであり、まれに段差にひっかかったBB弾がフライヤーとなるのです。(当然、箱出し状態よりも段差をなめらかに加工しているので影響は軽微となります)

【ちなみに】
シリンダーギャップを完璧に防ぐ唯一の発射方式として、現在は絶版の東京マルイ24連発NEWコルトパイソンシリーズが存在します。

これは、ハンマーコックに連動してシリンダーからBB弾をリリースし、バレル内のV型ホップパッキンに直接固定してからガスを放出する方式であり、初速を犠牲にオートガスガンに匹敵する安定性を確保できる画期的な代物でした。

ちなみに、ガスリボルバーとしては比較的精度が高いと言われるタナカのペガサスシステムでさえも、シリンダーからBB弾を発射する方式をとっている以上はシリンダーギャップの問題を完全には解決できません。

シリンダーギャップは現行全てのガスリボルバーにとって泣き所となっています。

多くの場合、所有者のカスタムによってシリンダーギャップが起きる確率や影響力を減らして命中精度を得ているに過ぎません。BB弾がフォーシングコーンを必ず通過する以上は、発生確率をゼロにはできないのです。


【ダブルアクションでなぜ起きやすい?】

さて、話を戻して東京マルイエアリボルバーの先込め式カートリッジは、フォーシングコーン入り口に非常に近い距離から発射が可能です。

そのため後込め式に比べてシリンダーギャップが命中精度に影響する確率を下げる事ができ、確実に遭遇するであろう障害物はホップパッキンとの接触部分に留める事ができるのです。


「ではなぜダブルアクションの方がバラツキが大きくなるのか?」


自分なりに導き出した結論はこれです。

「速射のブレでカートリッジがカタカタと揺れるため」

カタカタはさすがに大げさですが、カートリッジはシリンダーに対して完全にタイトではありません。

ダブルアクションのたびにカートリッジが僅かにズレるため、BB弾がカートリッジの壁に当たって軌道が変わり、フォーシングコーンの段差にひっかかる可能性も上がります。だから連射すると精度が落ちるのです。

(限界まで調整しているので影響は軽微で、基本的にはターゲットに命中します)


【シリンダーギャップ問題、非常に根深い物がある】

 フライヤーの原因をなるべく改善したいところではありますが、カタカタ言わないようカートリッジのはまり具合をタイトにしてしまうと、スピードリロードができなくなってしまい、せっかくの10禁フルサイズカートリッジを使用するメリットが消失してしまう恐れがあります。


次に命中精度や初速を高めるのに効果的なのは、フォーシングコーンとシリンダーの隙間を無くす事だと思いますが…

実は、10禁シリンダーとカートリッジを組み込んだカスタムでそれをやると、フォーシングコーンやガス放出口にカートリッジがひっかかりやすくなり「最悪の場合シリンダーが回らないかプラカートリッジが破損してしまう」現象が起きるのです。

経験上、パイソン以外はすべての機種でカートリッジ破損やシリンダーの回転不良が起きやすくなりますので、フォーシングコーンとガス放出口の削り込みが必要です。

(クラウンのコルトパイソンは内部機構が複雑なので、私は分解整備しやすいS&Wを好みます)

私が使うクラウンモデルのガスリボルバーは、スピードシューティングやサバゲーで使いやすいフルサイズカートリッジを使用するためあえて10禁シリンダーを移植したものです。しかし、その事がシリンダーギャップをタイトにしきれない要因になってしまいます。

(左:18歳以上用ガスリボルバー用カートリッジ、右:10禁エアリボルバー金属カートリッジ。ガスリボルバーは本来空薬莢タイプ)

「カートリッジをガスリボルバーの空薬莢タイプに戻せばいいじゃん」

そう言われてしまいそうですが、できない事情があります。

確かにガスリボルバーの空薬莢タイプのカートリッジのままバレルやシリンダーまわりの調整をすれば、今より高い命中精度を発揮できるのではないかと思います。

しかし、10禁フルサイズカートリッジの使用で受けられる恩恵はあまりに大きく「スピードローダーが使用しやすい」「リロードが早い」等、どれもスピードシューティングやサバゲーで使うために必要不可欠な要素となっています。

なので、純正カートリッジを使用する場合に生じるフライヤーに関しては、ある程度妥協するしか無いという結論となりますが…

解決策として、前回ご紹介した東京マルイカートリッジに白羽の矢が立ったわけです。結局マルイ頼みかと思うと、なんとなく悔しいですが…



【純正カートリッジのメリット】

なんだかこれでは東京マルイカートリッジが最強で、純正カートリッジの存在意義は一切無いように見えてしまいますね。

純正カートリッジには東京マルイカートリッジには無いメリットがあります。

それは初速です。

後端にBB弾がセットされるため、放出ガスのパワーロスが殆ど無い状態で吹き付けられ発射されます。しかもカートリッジ自体がバレルになるためより大きな加速力を得られます。

後込め方式は初速が高いのです。

クラウン純正カートリッジで0.2グラムBB弾を使用すると初速は60~70m/sとなり、有効射程は20メートルに達します。気温次第ですが初速75超も時々あります。

ここまで来ると、命中精度さえあればサバゲーの屋内フィールドのみならず、屋外フィールドでもある程度使える性能です。

一方、先込め方式の東京マルイカートリッジを使用すると初速は40~50まで落ち込みます。これは、発射ガスがBB弾に吹き付けられるまでに圧力損失が大きいためです。

この初速低下は、5メートル程度の近距離射撃ならば影響は少ないのですが、 距離が伸びると命中精度云々どころか弾が届きすらしなくなります。

なのでサバゲーには明らかに純正カートリッジの方が良いと思います。
(※パイソンは東京マルイカートリッジと相性が良く、初速があまり下がりませんのでおすすめです)

ちなみに、命中精度がそれなりに良く、高い初速を出せる事で有名なマルシンガスリボルバーXカートリッジモデルは、東京マルイカートリッジと同じ先込め式カートリッジで精度を高めながら、ガス量の増大で初速を上げています。

ですが、ガス放出量が多いということは内部機関へのダメージも大きいという事であり、マルシンのガスリボルバーは故障が常に隣り合わせです。

一方、クラウンモデルは後込め方式カートリッジによって効率良く高初速が発揮されるため、非常に燃費が良い事が長所です。

M19やM586の破損しやすいビニールパイプさえ交換してしまえば、とても頑丈で故障知らずな内部機関です。

(以上は全て個人の見解です、間違い等あると思いますので鵜呑みにしないで下さい)


マルイカートリッジを使用した初速に関しては、外部ソースでレギュレーターを調整すればもう少し上げられると思います。これについては、気が向いたら今度検証してみたいと思います。

サバゲーで外部ソースは邪魔なので、純正カートリッジを主に使用したいと思います。


【最後に】

ということで、今回は以上です。とても長い記事となりました。お読み下さった皆様、本当にありがとうございます。


先込め・後込め方式の精度の違いは広く一般的に言われている事です。当然の事を今さら紹介しただけの気もしますが…



ですが今回、各所の精度をぎりぎりまで高める事で初めて理論的に、方式の違いによる性能差を検証する事ができたと思います。

マルシンのガスリボルバーはXカートリッジを採用してから命中精度が上がったと評判です。 ということは、想像ですが私が使うクラウンモデルをベースとしたカスタムガンと同じように、バレル周り等を各所調整すれば更に飛躍的に精度を上げられるのかもしれません。


ネット検索すれば、クラウンモデルの命中精度を高めるやり方はよく出てきます。

もしかしたら、ネット上に発表していないだけで実際にもっと細かく検証した人はこれまでにたくさんいるかと思いますし別に私がクラウンモデルカスタムの先駆者であるわけでは無いと思います。


しかしながら、精度向上に関する具体的な記事や写真付きの検証はほとんど出回っていないのは事実です。

今回、この都市伝説とも言うべきクラウンモデルの可能性に迫り、実際に検証できた事を本当に嬉しく思います。

クラウンモデルは、価格も手頃な割に加工を頑張ればライブカートなのにとても良く当たる実用的なリボルバーとなります。

何よりダブルアクション自体の精度は箱出しでもなかなか良いので、一定のところまで命中精度を上げるのは比較的簡単です。

さすがにグルーピングを5センチ以内に持って行くのはかなり苦労しますが、7~8センチ程度ならばどの個体でも可能だと思います。


じゃじゃ馬だけど世界に一丁しかない自分だけが上手く扱える銃 。そんなリボルバーの醍醐味が味わえるのも、クラウンモデルの魅力だと感じました。


ということで、今回はこの辺でさようなら!


(よく考えたらクラウンモデルの人が見たらめっちゃ怒りそうな改造ばかりしてる気が…)